で懲役二百年・スパイ・外資系

「なんとかならないのかよっ!」


 フルーツを身体中で受けながら必死にたすくは叫んだ。


「ならん」

「ならないよー」


 後ろで雑談に花咲かせている自称アイドルたちはこちらを気にしている様子もなくそう答える。


「こうやってるだけでレベルアップするののなの?」

「そうだ。彼が戦うことで夏希なつきのレベルは上がる。それだけ注目度が上がっている証拠だ」


 別に倒さなくてもいいのか。アイドルにとっても物語というのは周りからの評価、想像、そうやって作り上げていく幻想。


「でも、これが配信されているわけじゃないんでしょ?なんで私の注目度に繋がっていくのよ」

「なにも民衆に注目されているわけじゃないよ。世界がそう認識すればいいだけだ。だからこうやって活動しているだけで世界がここに注目するだろう。夏希がアイドルだって勘違いさせてやればいいんだ。スパイみたいなもんだな」


 難しい例えしている気がする。柿が肩に当たって弾けた。


「可愛すぎで懲役二百年って設定。ヤバいね」

「アイドル名鑑か。勉強化だな」


 マジか。本格的にこちらを無視し始めている。ぶどうが身体中に当たって潰れる。


「外資系アイドルといんの?何がしたいのかもうわかんないねー」

「外資系とアイドルがどう繋がるんだ。ちゃんとアイドルできてるのか」


 もうどうにでもなればいい。フルーツは一体どこから出てくるのか。いつまで出てくるのかわからにけれど。耐え続ければいいなら、もうやけだ。


 転職能力を使って戦士へと能力を変える。もう盾を構えて耐え続けよう。フルーツなんてちょっと痛いだけでなんのことはない。相手も暴れまわっているのだけが目的なら難しい攻撃はしてこないだろう。


「ねー。やっぱり天然アイドルってインパクト小さくない?」

「そんなことはないぞ。相手を養殖と罵るその姿は脳裏に焼き付くはずだ」


 なんだその理論は。それは嫌われるというか、怖がられているのではないのか。


 そんな風にして一日目が静かに過ぎていく。

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