七日間戦争

七日間戦争・シャクレ・占い

「ねね。今日なんかいつもよりシャクレてない?」


 黄昏書店で寛いでいると隆司りゅうじくんが不思議そうに見上げてきていた。


 僕はシャクレているのか。そう言われて初めて退屈のあまりシャクレてしまっていたみだいだ。口裂け女以来、ずいぶんと何もない日々が続いている。


「パトロール行ってくればいいじゃない」


 つとむさんもお客さんが来なくて退屈しているのか、ボーっと本を読んでいるだけだ。しかし、ほんとにお客さんが来ない店だ。こんなことで経営が成り立っているのだろうか。そもそも語り部や読み手しか来れないような店だ。売上を出すことに興味はないのかもしれない。


「パトロールって言ったってただでさえ夕方にならないと何も起きないのに。最近平和そのものじゃないですかー」

「いいじゃないか平和が一番。なにもないのが一番。口裂け女に肩を食いちぎられるなんて体験したくないだろう?」


 それはそうなのだけれど、自分の以前の存在を知るためには情報が少しでも必要なのだ。


「闇雲に探し回ってもなにもいいこと無いよ。それこそ占いとか頼ってみたほうがいいんじゃない?」

「占いなんて当りませんよ。何言ってるんですか」

「当たるよ?占い」


 隆司くんがさっきと同じ様に見上げてきていて。続けて否定なんて出来ずに。


「そうだよね。占い当たるよね」


 そうつい、返事をしてしまう。


「当たるよ?占い」


 勉さんが同じ言葉を、少し違うニュアンスで言ってくる。


「はぁ。君の力を考えれば占いだって当たるだろうよ」


 そう言われて初めて気がついた。物語の力で占いができればそれはより強固な力に変わるのか。絶対に当たる占いとか存在するのかもしれない。


「それならその占いで……」

「そんな都合のいい話はないよ。彼らが占うのはもっと抽象的なものだ。例えば、もうすぐ七日間戦争が起きるとか」

「七日間戦争?」


 占いで解決すると思っていたことを否定されたことよりもその言葉が気になって聞き返してしまった。

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