名前のない・大臣・おもらし
「いらっしゃいませ。なんの御用です。最終兵器なんて人はここにはいないのですけど」
「えーっ。おっかしいな。大臣からそう聞いたんですよ。ここに物語に対抗できる最終兵器さんがいるって!」
「あー。それなら彼のことですよ。彼。物語に対抗する最終兵器。その名も
嘘みたいなきれいな流れでこちらに視線が流れたきた。
「あなたが最終兵器さん?なんだかパッとしない顔してますね。なんだか弱そうですし、本当なんですか?」
ずいぶんと失礼なことを言う人だと思う。パッとしないと言われてもそういう設定なのだから仕方がない。文句は作者に言ってほしいものだ。
あれ?作者っているのかと疑問に思い始めると止まらなくなる。物語名のだから当然作者がいて、九重佑という登場人物を作り上げた人がいるはずで、その人から見た今の九重佑はどうなっているんだろう。
「まあ、いいか。とりあえず名前のない物語をなんとかしてほしいんですけど。依頼受けてくれますよね?」
こちらが、悩んている間に彼女の中ではなにかか決定していたらしい。依頼ってそりゃそのためにここにいるのだから受けるけれども、名前のない物語とは一体なんなのだろうか。
「あー。佑くんにはもしかしたら難しいかもしれませんね」
勉さんがなにかを知っているのか難しい顔をしている。
「名前のない物語というのは、確かに存在しているんですが物語自体が曖昧というか、不確定なものに対する総称でね。伝承と言い伝えとか都市伝説とか話し手や時期、地域によって物語が変化するもののことなんだ。そしてこれらは語り部というより物語そのものが現実に影響を及ぼしている事が多い」
なんとなくだけれど理解できる。物語として出版はされていないけど人々の間にだけ伝わる話。幽霊や妖怪などの正体もこれなのだろうか。というかもしかしたらそれらの存在の方が先に存在していたのかもしれない。物語が曖昧じゃなくなったのなんて出版物が確立してからのはずだ。
「それでなんで難しい話に繋がるんです?」
それがわからなかった。名前のない物語だからといって特別なことがあるのだろうか。
「驚かしてくるタイプが多いからね。おもらししちゃうよきっと」
それを聞いて隆司くんがきゃっきゃ。きゃっきゃと笑い始めた。
なんて失礼な親子なのだろうか。
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