げんきいっぱい・大きい声で言っただけ・オフ会
コピーする能力は火を出したり氷を出したりすることじゃない。はたまた剣を出すことでもない。その変化する能力そのもの。
向かってきている戦士に相性がいいのは盗賊。素早い動きで撹乱すればいい。イメージを集中させる。なぜそのゲームを知っているのかは分からないけれど元の人物が遊んだことがあったのだろう。
「えっ。ちょっとなんでその能力使えるのさ。お兄ちゃんも同じの持ってるっていうの!?止めてよ!その物語禁止!」
少年が大きい声で言っただけのその言葉じゃ、当然届くはずもない。そもそもおんなじ物語を使っているわけじゃない。こっちはコピーしているだけだ。明らかにチートな能力だと自分でも思う。
斬りかかってくる戦士の剣を転職して手に入れた短剣でいなすと、そのまま足をひっかけて転倒させる。小柄な少年が勢いでつんのめさせるのは簡単だった。
そのままの勢いで奥にいる魔法使いの方へ駆ける。素早さは一番の職業。
「くっ。くるな!アイススパイク!」
飛んでくる氷の刃を避けるのも容易かった。十分に近づいてから今度は戦士に転職。そのまま斬りかかる。一瞬殺してしまったらどうしようかと思ったけれど、そんなことにはならないのを思い出し思いっきり振り降ろした。
「まなぶー!」
光になって魔法使いの少年に向かって戦士の少年が叫ぶ。
消えてしまったのをみるとこちらが分身で戦士のほうが本体みたいだ。消えるのは物語の力だけで本人は消えないはずだから。
ん。と自分でそこまで考えてから疑問に思う。例えば自分がこんな風にされたらどうなってしまうのだろうか。物語の力である自分が消えれば元の人物に戻れたりしないのだろうか。
そんなに簡単な話だったら
「まなぶー!」
さっきまでげんきいっぱいだった少年は落ち込みが激しく倒れたまま地面を叩きつけいている。
「やっとオフ会で出会えた唯一の親友だったのに。よくもまなぶを!」
少年はまた姿を変化させた。でもその姿は戦士でも魔法使いでも盗賊でも僧侶でもない。それらの職業を極めたものだけが到達できるレア職業。勇者。最強の職業へと変貌していた。
しかし焦ることはない。なぜならこっちは勇者とかよりもおかしな次元の力を持っている。腕を機械仕掛けへと変化させて十分に距離のある少年へ狙いをつける。向かってくるけれどそれは一歩届かない。
「いっけぇぇ!」
こうやって叫んでしまうのはやっぱり設定の影響なのだとそう思った。
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