恋というのは...?

@hihinana12s

恋というのは...

私は友人に勧められたパン屋に来ていた。

カランコロン

そう鳴ると同時に店の中から声が聞こえた。


ーーいらしゃいませ。


そうはっきりとした優しい声で喋る男性。


 私は何気ないこの一言に、一瞬で恋に落ちた。いわゆる一目惚れだ。一目惚れなんて本当にあるんだとその時同時に思った。だって私は今まで恋に落ちたことがなかった...というより全くもって興味がなかったから。でも恋というのも悪くないと思った。だってその日から世界が変わったように楽しいから。


 でもひとつ問題があった。彼と話せる機会が全然ない。本当にない。私が話かけようとするとまるで測ったかのように誰かに話しかけられる。でも一回だけ話したことがあった。それは一番最初にこの店に来た時、そう私が一目惚れした時だ。私が初めての場所で一目惚れなんてものをしてしまったから頭が真っ白になり、挙動不審になってしまったのであまり上手く話せなかった。しかも元々引っ込み思案なために余計に言葉に詰まってしまった。彼は本当にかっこよくて一つ一つの動作が丁寧で綺麗、そして物腰の柔らかい人だった。


  その日からというもの私は毎日朝ご飯を取るようになった。その理由は彼の働くパにほぼ毎日のように足しげく通うようになってパンを毎日一つ買っているから。それとそのパン屋のパンは全部おいしいのでそれも理由の一つになっている。特にここの塩パンが好きでここに来たときは大体それを買ってしまっている。

ある日、会計の時にカバンから財布を出そうとしてハンカチを落としてしまった。その時私は気づかないで会計をして出ていこうとしたときに誰かに肩に手を置かれた。


「あの、これ落とされましたよ。」

え?この人もしかしてあの人?やばいどうしよう!?と内心すごく焦っていた。

「え?大丈夫ですか?」

「あ、すみません。ありがとうございます。」

どうしよう。これ以上話を広げられない。

「いつも来てくださっていますよね!」

「は、はい」

「ありがとうございます。いつも塩パンを買っていますよね?」

「はい、」

「あれ僕も好きなんですよ...あ、すみません、ついパンのことになると...」

こんなしゃべる人だったんだ。以外...

「いつもパン買いに来てくださっているので覚えていていいきかっけだなと思ってしまって。迷惑でしたか...?」

「いえ!全然!」

そういうと彼は安心してくれたようだ。こんな近くで男性と話すことがないのでとても緊張していたが彼がほわほわしていたので緊張も和らいでいた。

「あ、すみません!まだハンカチ返していませんでしたね。」

そういうと彼はハンカチを渡してくれた。

「ではまたのお越しをお待ちしております。」


そして次からそのパン屋に行くと彼とよく話すようになった。彼は小鳥遊優さんというようで私より年上の人で5歳もの年齢の差があった。それでも沢山話すうちにプライベートではたまに会うくらいの友達になった。でも小鳥遊さんには好きな人がいるようだった。この前話したときにそれとなく聞いてみると顔を少し赤く染めて


「いるよ。」


と言った。その時私はもう無理だと悟ってしまった。私は話をするだけのただの友達だと。期待しても何もない。そもそも期待しちゃいけなかったんだ。次の日は土日だったしなにもやる気が起きなかったので家で何もせずにただボーっと過ごした。


それからはパン屋には行かなくなり、何も変わり映えのない日々を送っていた。朝起きて仕事に行って帰って寝る。そんな単純作業を繰り返していた。でも仕事が早く終わった日は自然とパン屋に足が向いてしまう。叶わないと思っても勝手に体が向いてしまう。するとちょうど小鳥遊さんがお店から出てきた。


「あ、お久しぶりです。」


私は久しぶりに小鳥遊さんを見て緊張して固まってしまった。


「最近お店に来ないから寂しかったんですよー」

「小鳥遊さんはどうして私にそんな風に話しかけるんですか?」


そういうと小鳥遊さんは?という顔をしていた。

「好きな人がいるのにそんなうに話しかけられると期待しちゃうじゃないですか!!」

そうすると彼は微笑んで


「それは君が好きだからだよ。」


時間が止まった気がした。

そんな風に言われるとは思っていなかったから。

そもそも相手にされてるとも思っていなかったから。


「君は?」

「私も、好きです。」


「じゃあ両思いだね?」


そういうと彼は優しく触れるだけのキスをした。


恋というのは複雑で心が苦しくなるものなのか。


もうこんな気持ちは味わいたくないな。



この先もこれからもー。

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