第35話 ファッション

「ファッション」と括ってしまうとダサいというか、最近の傾向というのは「ファッションなんて気にしない」というのがカッコいい風潮にあるような気がします。

 ところが、ファッションブランドというものは無くならず、むしろ増えていっている。僕がアパレル販売員をやり始めた28年前と比べても格段とブランドというものは増えている。

 20代若年層が減っている静岡でも、人口は減っているのに店ばかり増えていく。まあ僕もその1店舗で働いているのですが......。


 むかしは流行の服が欲しければ丸井に行けば良かったのが、PARCOができて、ちょっと車を出せばショッピングモール的なものがどんどん増える。今も土地開発で商業施設を建設中のところまである。

 それに店舗がなくてもネットで買えるブランドも多い。


 むかしはダッセえ服装の人が歩いていましたが、今はみんなそれなりにちゃんとしている。ファストブランドでも充分オシャレができる時代。でも、これだけブランドが増えてるのに、なんか似たような服の人多いですよね。個性が無いとまでは言えない。むかしもトレンドで同じような服の人がいたが、そういうトレンドの服って数量限定で凄い高額でなかなか手に入らなくて、むしろそれを着ているのはその高額な服を着ているという見栄みたいなのがありまして。安い服は恥ずかしいみたいな『やんごとなき一族』のような見栄を張っていたのですが。

 もちろん今もハイブランドでなかなか手に入らないものもありますが、中間層ブランドもそこそこ値がはるのにシンプルでファストブランドと見栄えは変わらなかったり。


 じゃあ、そのファストブランドと、そこそこ値段のはるシンプルなブランドとの値段の差はどこから生まれてくるのか。素材が良いのでしょうか。着心地が良いのでしょうか。


 僕は素材とか着心地とか、あまり重視してない。もちろん素材が良いに越したことはないのですが、オーガニックコットンとかインド綿とか言われても、そんなにテンション上がりません。気にするところは、洗っても着崩れしない方がいい、くらいですかね。

 着心地なんかも、あんまり気にしてなかったりする。もちろん着心地、履き心地は良い方が良いですし、接客でも履き心地抜群ですよ、なんて言って勧める。それはお客様が履き心地を求めてるから。あまり気にしない人にはあんまり言わない。もちろん、売りたいからっていって履き心地が良くないものを嘘言ってるわけじゃないですよ。


 僕は素材や着心地よりも、デザインを重要視している。ちょっと変わったデザインが好きだ。同じお金を払うなら、シンプルなものよりもデザインにお金を出したい。たとえ素材が悪くても、ちょっと着にくくても、それにお金を出してしまう。

 もちろんシンプルなデザインも好きだ。そういう気分の日もある。そあいうのはUNIQLOやGUで揃えてしまう。むしろUNIQLOやGUの方が素材が良かったりする。

 この間もへんちょこりんなパンツを買いました。片足はスリムですが、反対側がプリーツでワイドになっているので、右側から見るとスコットランド人のように見えます。そして家族から「お年を考えなさいよ」と冷めた視線を浴びることになります。


 アパレルを長いことやってるとお客様からよく「服ってどういうところを見て選んだらいいですか」と聞かれます。デザインなのか、素材なのか、着心地なのか。人それぞれだったり、同じ人でも色んな見方があると思うので、一概にコレですと言い切れない。


 ふわっと思ったのが、本を選ぶのも同じかな。

 読みやすいものがいい時もあるし、読みにくいけどテーマが気になって頑張って読むこともある。「ああ、アレ読んだよ」と見栄を張るために買って読む本もある。話題だからって飛びつく本もあるし、安パイなベストセラーや〇〇賞受賞作品を読むことだってある。

 そんなのが全部備わってる本もあるのだろうが、多分あまり無いと思う。一生のうちでそんな本に巡りあえるのだろうか。


 書く方でも、そんな本が書けるのだろうか。

 そうやって、日々奮闘中である。

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