第16話 真面目な話

 真面目な話が苦手だ。

 普段からそうだ。仕事でも、店の売上がピンチであったとしても、ふざけたことを言ってしまう。半分はピリピリしていても仕方ないから、スタッフにはピンチの時には肩の力を抜いていつも通り接客してほしい。もちろん気合を入れてガンガン行ってくれよ、という気持ちもあるが、熱くなるのも苦手だ。

 もちろんマネジメントの立場で、熱い気持ちを伝えることもある。ちゃんと熱い気持ちもある。でも、熱く語ってしまった直後、物凄く照れ臭くなる。

 いつもヘラヘラして飄々としている自分でいたい、そう見られたいという気持ちが大きい...のかもしれない。


 小説もそうだ。

 真面目なシーンを書くのは、物凄く照れ臭い。ちょっとカッコつけた仕草だったりとかセリフとか、書いた直後にすぐ消してしまう。ほんの2行のシーンを何度も何度も書き直す。書き直して1日置いて、まあこれくらいなら恥ずかしくないというところまで持っていく。でも数話進んでから、経緯を確認するのにもう1度読み返すと、また恥ずかしくなる。でも、そのシーンはもう公開してしまったし、次の展開に必要だと自分に言い聞かせて諦める。

 ラブシーンなんて、もっての外だ。書けない。下ネタは書けるけど、真面目なラブシーンなんて書けない。だから、そういうシーンが出ないような題材にしなければならない。

 だから、ふざけたシーン満載の、若干コメディタッチの作品が多い。でも、ガチのコメディではない。真面目な気持ちをコメディで隠す。


 本当は、どこかに熱い気持ちがある。心は真面目な題材ができあがる。コメディに隠れた部分に、自分でも気がつかない伝えたいことがある......はず。

 なにが言いたいか分からなくなってきた。半分は本当で、半分は誤魔化している。


 そうやって誤魔化して生きてきた僕が、誤魔化しながら何かを書いている。

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