―24― 親子
「それにしても、このまま換金できないと生活が苦しくなるな」
宿屋の一室で、ぼそりと言葉を吐く。
「なにか厄介ごとに巻き込まれているみたいじゃのう」
「んー、どうやら父親が俺の邪魔をしているみたいなんだよなー」
「父親だと?」
そういえば、フィーニャには俺が実家を勘当されたことは説明してなかったな。
なので、簡潔に説明する。
「なるほどのう、おぬしも随分と辛い目にあったのじゃなぁ」
と、フィーニャが同情の眼差しを向けてきた。
「は? なにが?」
「実家を追放されたのじゃろ。ならば、辛いじゃないか」
「いや、追放されてむしろラッキーだと思っているんだが。好き勝手できるから」
「おぬしはやっぱり普通ではないな……」
なぜかフィーニャに呆れられた。
「それで、このままだとマズいのだろう。どうするつもりなんじゃ?」
「すぐに、どうこうするつもりはないかな。時間が解決してくれればいいんだが」
別に、なにか良い方法が思いつくわけでもない。
今手元にあるお金だけでも食べていくだけなら数ヶ月はなんとかなりそうだし、慌てる必要もないだろう。
◆
「なに? ユレンがまた高レベルモンスターをギルドに持ってきただと?」
メルカデル邸にて、メルカデル伯爵家当主でありユレンの父親でもあるエルンスト・メルカデルは使用人の報告に眉をしかめていた。
「それで、なにか証拠は見つかったのか?」
「それが、まだ……」
「くそっ」
エルンストはそう言って拳で机を叩く。
「いいか、あのユレンは錬金術師なんだぞ! その錬金術師がモンスターを狩れるはずがない。なにか裏があるはずだ!」
「えぇ、おっしゃることはごもっともかと」
「いいか、徹底的にやつのことを調べろ! どこかに証拠があるはずだ!」
「はっ」
使用人は頷くと部屋から出て行った。
それを見て、エルンストは「ふぅ」とため息を吐きながら椅子に座る。
すると、トントンと扉がノックされると同時に、扉が開く。
使用人と入れ替わるように部屋に入ってきたのは息子のイマノルだった。
「お父様、報告があります」
「おぉっ、イマノル。どうした?」
「レベルがまたあがりました」
「そうか、そうか。お前はこの俺の誇りだ」
イマノルが剣聖になってから、ずっと効率的なレベル上げをさせていた。
その方法とは、強い冒険者と組ませてレベルの高いモンスターを狩るというものだ。
パワーレベリングと呼ばせるこの方法は貴族でないと実戦するのが難しい。
というのも、強い冒険者からすれば、わざわざ弱い冒険者と組むメリットが一切ない。
だが、貴族なら高い報酬を出すことで、強い冒険者を納得させることができるというわけだ。
「そういえば、小耳に挟んだんですが、ユレンが隠れてなにかしているようですね」
「ふんっ、あんなゴミくずのことにお前が頭を悩ませる必要はない」
「……そうですか」
「お前は今できることに励め。お前はこの家の次期当主なんだからな」
「わかりました、お父様」
「よしっ」
それから、イマノルは部屋を退出していった。
「ユレンめ。実家を追放してもなおこの俺の手を煩わせるとはな」
そう言って、エルンストはほくそ笑む。
「必ずこの手で悪事を暴いてみせる。呑気にしていられるのも今のうちだぞ、ユレン」
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