―13― 操糸の指輪

 今の俺ではレベル285の大顎ノ恐竜ティラノサウリオを倒すのは正直難しいだろう。

 だから、なにか策を弄する必要がある。

 そして、その策に心当たりはある。


「確かこの辺りだったよな」


 俺がいるのは、昨日大顎ノ恐竜ティラノサウリオと戦った場所だった。

 その場で見つけたのは大顎ノ恐竜ティラノサウリオが食べ残した巨大蜘蛛アラーニャの死骸。

 俺が今回、巨大蜘蛛アラーニャを標的にしたのはある理由があった。

 巨大蜘蛛アラーニャの素材から作れるあるアイテムが今後の戦いにおいて、非常に重宝するからだ。


「あった」


 そう呟いて、俺は地面に落ちていた物を拾う。

 拾ったのは巨大蜘蛛アラーニャの魔石。魔石は硬く噛み砕くのが大変なため、やはり大顎ノ恐竜ティラノサウリオは魔石を食べ残していたか。

 魔石というのはモンスターなら必ず体内に保有している。

 魔石そのものが非常に便利な源として使われており、主に魔導具を動かすためのエネルギー源を担うことが多い。

 そんな魔石だが、『ゲーム』のおかげで非常に便利な使い方があることを知っている。


「保有しているSPは48ポイントか」


 猛毒を持つカエルベネノガエルを30体以上狩ったおかげで、けっこうSPが貯まっている。

 さて、まず手に入れるスキルのうち二つは決まっている。


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 SP4を消費して〈魔力感知LV1〉を獲得しました。

 SP4を消費して〈魔力操作LV1〉を獲得しました。


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 魔術師だったら絶対に持っている二つのスキル。

 錬金術師も魔術師の端くれのようなものだから、比較的少ないSPを払えば獲得できる。

 とはいえ、これらのスキルを使って魔術を扱うつもりはない。

 そもそも魔術を覚えたとしても、レベル1なのが原因でステータスの魔法力の数値が低いせいで、魔術の威力は貧弱になってしまうため使い道はないんだが。

 じゃあなんのために、これらのスキルを獲得したのか?

 それは次に獲得するスキルを見れば、おのずとわかってくるはずだ。


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 SP2を消費して〈魔導具生成LV1〉を獲得しました。


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 錬金術師というのは、金属や宝石を加工して道具を作るのが専門の役職だ。

 ゆえに、魔導具の中枢である魔石の加工も錬金術師が得意な分野の一つだ。

 ただ、モンスターを倒しやすいがゆえに、レベルを上げやすい魔術師のほうが魔導具の生成をこなすことが多いのが現状なんだけど。

 ふむ、失敗は許されないし、もう少しSPを振っておくか。


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 SP28を消費して〈魔導具生成LV4〉にレベルアップさせました。

 SP8を消費して〈魔力操作LV2〉にレベルアップさせました。


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 さて、SPの振り分けはこんなもんでいいだろう。

 次は肝心な魔導具の生成だ。

 材料は巨大蜘蛛アラーニャの魔石、巨大蜘蛛アラーニャが放った粘着性のある糸。

 これらを〈魔力感知LV1〉で術式を解析する。

 といっても、〈魔力感知〉がレベル1なため、詳しくは解析できない。とはいえ、全くオリジナルの術式を構築するわけではないので、これだけわかれば十分だ。

 そして、これらに対して〈魔力操作〉と〈魔導具生成〉を使う。


「ようやっと終わった」


 数十分後、俺はそう言葉を吐いていた。

〈魔力操作〉は非常に繊細な神経を使う。だから、体力を消耗してしまった。

 あとは、この丸い物体に〈加工〉スキルを使って、指輪の形に変形させる。

 そして、その指輪を中指にはめた。


「名前は〈操糸の指輪〉」


 そう言って、俺は指輪をはめた中指を突き出す。

 すると、指輪から蜘蛛の糸が発射する。

 指輪から出た糸は巨大蜘蛛アラーニャが操っていた糸と同じ物。

 巨大蜘蛛アラーニャの魔石をこうして魔導具にすることで、巨大蜘蛛アラーニャの能力の一部をこうして獲得することができるわけだ。

 それから俺は〈操糸の指輪〉を使って、使いこなせるよう特訓をした。

 そして、一通り糸の操作を身につけて満足した俺は、こう呟くのだった。


「さぁ、それじゃあ大顎ノ恐竜ティラノサウリオを探しに行こうか」


 この〈操糸の指輪〉は非常に強力な武器として役に立ってくれるだろう。

 それでも大顎ノ恐竜ティラノサウリオに勝てる可能性は1パーセントもないに違いない。

 だが、それがいいのだ。

 自分より強大な敵に挑んでこそ、楽しめるというものだ。

 だから、俺は今、非常に興奮している。


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