―09― 解毒
翌日、宿舎で一泊した俺は再びモンスターを狩るべく、馬車を利用して森へと向かった。
ちなみに、標的モンスターがこの森にて目撃情報があることは、すでに冒険者ギルドにて確認済みだ。
「さて、今回はどんなふうに楽しめるかなぁ」
これからモンスターと命の削り合いができると思うと楽しみで仕方がない。
さて、まずは事前準備だ。
レベル1の俺が格上モンスターに勝つにはいかに準備するかにかかっている。だから、手は抜けない。
「見つけた」
早速、俺は目的の物を見つけてはそう呟く。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
〈
LV:10
全長30センチほどのカエル型のモンスター。
皮膚に非常に強力な毒を持つことで有名。
△△△△△△△△△△△△△△△
標的モンスターを倒す前に、まずこのモンスターを狩って倒すのに必要な素材を調達する。
今回使うのは
この毒を使って、モンスターを狩る予定だ。
そのためには、まず
遠くから弓矢を使って、確実に急所を狙う。
急所に当たりすれば、レベル1の俺でも苦労することなく倒すことが可能だ。
そうやって、俺は一匹ずつじっくりと
もちろん狩った
そうやって俺は何匹も狩って、大量の毒を集めた。
ただ、腕に自信がある俺でも時にミスすることはある。
「あっ」
急所を外した
「ナイフ」
俺はスキル〈アイテム切り替え〉を使って、〈アイテムボックス〉から瞬時にナイフを取り出す。
そして、接近した
「まいったな」
すでに、感染した腕はしびれて動きが鈍くなる。
このまま放っておいた数時間のうちに自分は死ぬ。
その前に、なんとかする必要があるが……。
俺はすぐさま危険な区域から脱出し、安静にできる場所を探すことにした。
大分、森の奥に入ってしまった。
森の近くにある村なら、毒をなんとかする解毒剤があるかもしれないが、毒に犯された今の状態で、モンスターが生息する森を抜けて村までたどり着くのは至難の業だ。
これなら事前に解毒剤を入手しとくべきだったか。
とはいえ、解毒剤は非常に高価なため入手しようと思ったら、有り金すべてはたいても足りないから、もとより入手は不可能か。
まぁ、いいか。
なにせ、ピンチということはそれだけ楽しめるということだし。
「おっ、いいところに洞穴が」
茂みの中に、洞穴があるのに気がつく。
ひとまずこの洞穴を拠点にして、今後の方針を考えよう。
「なんだ先客がいたのか」
洞穴の中に、一匹のモンスターがいた。
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〈
LV:93
銀色の毛皮を持つ美しい狐型のモンスター。
非常に賢いため、人間の言葉を理解できる。
△△△△△△△△△△△△△△△
無意識のうちに〈鑑定〉して、洞穴にいたモンスターの情報を得る。
鑑定結果に書かれている通り、そのモンスターは銀色に輝く美しい毛皮を持っていた。
だが、そのモンスターの背中に大きな切り傷があり、大量に出血しているのが一目がわかる。
そのせいなのか、俺を看ても襲ってくる気配はなく、ただじっと静観していた。
「この怪我は、恐らく俺がこれから相手するつもりのモンスターによって傷つけられたものだな」
傷口を見れば、どのモンスターによってやられたかある程度把握できる。
そして、モンスター同士が争うことは珍しいことではない。大方、縄張り争いでもしたんだろう。
と、そうだ。
いいことを思いつく。
確か、この
「なぁ、取引をしないか」
そういうわけで、俺はモンスターに話しかけた。
「その傷を治してやる代わり、この毒を治してほしい」
そう言うも、
「この毒を治せといってもお前がなにかをする必要はない。ただ、じっと俺の言うことを聞いてくれるだけで大丈夫だから」
そう語りかけても反応を示さない。
「黙っているってことは肯定と捉えるからな」
そう口にした俺はアイテムボックスからある物を取り出す。
〈上級回復薬〉。
薬草をスキル〈調合〉を使うことで〈回復薬〉を作ることができるわけだが、大量の薬草とレベル4まであげた〈調合〉を用いれば、まれに〈上級回復薬〉が完成することがある。
貴重なアイテムなだけあって、その効果は絶大だ。
その〈上級回復薬〉を惜しみなく
すると、傷口が光放ち始め、癒えていくのがわかる。すぐ、完治はしないがしばらく安静にしとけば、そのうち回復するだろう。
「さて、それじゃあ俺の毒を治す協力も頼むな」
そう語りかけると、
まぁ、まだ傷口が塞がっているわけではないので逃げ出すのも難しいだろう。
早速、作業にとりかかる。
まず、
そのうち、少量の毒を
だからこそ、毒を与えることで血の中に毒の抗体ができるというわけだ。
「少し痛いが我慢してくれよな」
そう言いながら、ガラスと針でできた注射器を
あとは
持ち続けること数時間。
そろそろだと思ったら、今度は
「よしっ、問題なければ、これで解毒剤ができるはず」
そう呟きながら、採血した血にスキル〈調合〉を用いれば、無事〈解毒剤〉の完成だ。
「あとは、この〈解毒剤〉を自分に刺せば治るはず」
注射器にいれた〈解毒剤〉を毒に犯された腕に直接刺す。
刺した直後に変化は訪れないが、待てばそのうち回復するだろう。
「そろそろ太陽も落ちそうだな」
ふと、そのことに気がつく。
夜になれば火でも起こさない限り、なにも見えなくなる。
正直、体力も限界だ。
毒のせいで、いつも以上に体力を消耗してしまっている。
だから、しばらくもしないうちに、俺の意識は落ちていた。
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