―05― 臭う獣

 翌日、宿屋で寝泊まりした俺は朝食を終えると冒険者ギルドに向かった。


「さて、どれを狩ろうかなぁ」


 冒険者ギルドにて、俺はそう呟く。

 見ていたのは、モンスターの討伐依頼書。

 昨日の鎧ノ熊バグベアはあの辺りの森にて目撃情報があることを俺が事前に知っていたから向かったわけだが、本来は冒険者ギルドにて情報を集めてからモンスターの討伐に行くのが当たり前だ。


 最低でも鎧ノ熊バグベアよりは強いモンスター。

 それもレベル50は欲しいな。


「おい、お前新入りか?」


 ふと、話しかけられる。

 そこには無精ひげを生やしたおっさんの冒険者がいた。


「えぇ、まぁ、そうですけど」


 確かに、冒険者としては新人なので、頷く。


「そうか、やっぱりな。見ない顔だと思ったんだよ。ジョブはなんだ?」

「錬金術師です」

「錬金術師だとぁ?」


 おっさんはしかめっ面をする。


「生産職か。悪くことは言わない。そのジョブでは冒険者には向いていない。他の仕事をしたほうがいい」


 世間一般で錬金術師がそういう評価なのは知っている。

 もちろん、そんな忠告を真に受けるつもりはないが。


「わかりました。冒険者を諦めます」


 とはいえ、俺は余計ないざこざは起こしたくないタイプだ。

 テキトーにあしらうことにした。

 なにせ、必要なモンスターはすでに手に入れた。

 ここにはもう用はない。


「そうか。悪かった、変なおせっかいを焼いて」

「いえ、なんとも思っていませんから」


 俺はそう口にして、冒険者ギルドを後にした。





 冒険者ギルドを後にした俺は馬車にのって、移動を始めた。


「ここから歩きでの移動になりますが……」

「いえ、ありがとうございます」


 俺はそう言って馬車から降り立つ。

 降り立ったそこは、プロフンド森林。この森林の奥地に、目的のモンスターがいるとのことだ。


「さて、まずは事前準備だ」


 そう呟きながら、俺は森へと入っていった。





「見つけた……」


 俺は森の茂みに身を隠しながら、街で購入しておいた双眼鏡を手に、そう口を動かす。


 視線の先には、あるモンスターがある。とはいえ、標的のモンスターではない。


 ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


臭う獣ゾリーヨ

 LV:5

 敵が近づくと悪臭を放って逃げようとするイタチに似たモンスター。


 △△△△△△△△△△△△△△△


 このモンスターの素材から作れるアイテムが欲しいのだ。

 だから、探していた。

 臭う獣ゾリーヨは敵に見つかると、悪臭を放ちながら逃げる習性がある。

 だが、それは敵を強敵だと認識した場合だ。

 俺のような、レベル1の冒険者には躊躇なく襲いかかってくる。

 そのことを俺は『ゲーム』で散々試したので、知っている。


 まずは最初の一撃。

〈アイテムボックス〉から弓矢を取り出し、まだこちらに気がついていないのを利用して、確実に狙う。

 ヒュン、と風を切る音がして、矢が当たる。

 俺の攻撃力は低いせいで、恐らくダメージは僅かにしか与えることができない。

 なので、この攻撃は気休めでしかない。


 矢が当たった臭う獣ゾリーヨは敵の存在を認識、キョロキョロと周囲を見回す。

 そして、俺の存在に気がつくと、俺のほうへと向かってきた。


「はぁ……はぁ……」


 ヤバい、興奮してきたのか、呼吸が荒くなってきた。

 モンスターのレベルが8とはいえ、俺はレベル1しかない。

 攻撃を食らったら、ただでは済まない。

 この緊張感がたまらないっ。


 臭う獣ゾリーヨが飛びかかってきたのを俺はかわす。

 このモンスターは最初の攻撃をかわされた場合、間髪入れずに襲いかかってくる傾向にある。

 その際、敵の上部を必ず狙う。

 だから、俺は屈んだ。

 さらに、真上にナイフ突き刺す。

 すると、狙い通り、臭う獣ゾリーヨはちょうどナイフで切り裂かれるように飛びかかってきた。

 さらにトドメとばかりに、俺は〈手投げ爆弾〉を着地点に放り投げる。

 爆発が臭う獣ゾリーヨを襲いかかった。


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 経験値を獲得しました。

 レベル上昇に伴う経験値を獲得しましたが、〈呪いの腕輪〉の影響で、レベル1に固定されました。

  SPを獲得しました。


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 無事、臭う獣ゾリーヨの討伐に成功したようだ。

 さて、今回の目的は臭う獣ゾリーヨの素材で作るアイテムだ。

 なので、解体して、〈肛門袋〉と呼ばれる器官を取り出す。

 この器官とビンを対象に、スキル〈加工〉を発動させる。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽


 加工に成功しました。

〈悪臭液〉を入手しました。


△△△△△△△△△△△△△△△


 ビンに入った液体を入手する。

 この液体がこれからある討伐を討伐するのに、必要なアイテムなわけだ。

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