0.02mm

「おにやさぁ、”アレ”について聞かれた時どうだった?」

「アレ?」

「だから…ゴ厶…」

「…ああ……まあ…正直びっくりしたよ。よしきすげえなって」


いつものような宅飲み。

いい感じに酔いが回ってきて、普段は絶対にしないであろう質問をしてしまった。




”俺めっちゃ恥ずかしいけどなアレ”


おにやは普段「そういう話題」を口にしないし、

「羞恥心なんか知りません」みたいな言動をしている。

なのに、よしなまがいとも簡単に俺の知らないおにやを引き出していて驚いた。

まだ見た事の無い彼の姿を、俺も見たくなったのかもしれない。



「なぁ、”つけて”する ってどういうこと?」

「な、んだよ、興味ある?」

「いや別に?別にないけど

単純に、どんなのかな~って気になって」

「…」

「普通しないじゃん?そんなの」

「……」

「俺はやったことないから全然想像がで」

「やってみる?」

「きなくて……って、はぁ!?何言ってんだよ!」

「ピンが刺さってる。」

「…は?」



信じられない。なんで俺、



「勃ってるけど」

「いや、は!?いや、これは、違う」

「何が?」

「違うから、っおい、お前、近付いてくんな」



近付いてきたと思ったら、おにやは身を乗り出して俺の後ろの机を漁り始めた。



「ほら、これが件の"アレ"だよ」

「あー、うん、わかったから、仕舞えよ」

「この薄さに対して様々な意見があったけど」

「話聞いてる?」

「1番驚いたのは「猿」 おそらくは性獣を指していると思うけど、そう言われたことだ。」

「おい」

「よくわからないけどこの薄さはそういうものなんだろうか。僕って性獣なのかな」


ダメだ、講釈モードに入ってしまった。

こうなるとこいつに何を言っても無駄だ。



「僕がゴム付けてするときは2種類あって、1つはカップホール、失礼、オナホを使うのがある。出したあとの後処理がしやすいからね。」

「おい何触って、やめ、ろよ!」

「(あまり抵抗しないな…で あ れ ば)」


下着ごとズボンを下ろされた。

現れたそれが既に最大まで兆しているのが恥ずかしくて、思わず目を逸らしてしまった。


「あ、はんじょう知ってる?コンドームってゴムを作ったドクターの名前なんだって。」


知るわけねえだろ。

話しながらどさくさに紛れて

くるくるとゴムを装着してきた。

どこか手馴れた手つきなのが生々しくて嫌だ。



「ホントに、何やってんの?なぁ、」

「…そして、もう1つは手だ。これが難しい。力を調節しないとすぐゴムが外れる。」

「うあっ…!…っお前……マジか…」


こいつ、握ってきやがった。

0.02mm越しにおにやの体温が伝わってくる。

同じ男だからだろうか。俺の"良いところ"を的確に刺激してくる。



「ここ、ここなんだよなぁ。この角度だとゴムを外さずに裏筋も責めることができる。そう結論、結論角度ですよこれが」

「あっ、耳元で喋んな、」


耳元で喋られて背中がぞくぞくする。

内容はカスなのに悔しい。

こいつ無駄に声だけはいいからな。



「ゴム付けてるとさ、どうしても滑りが悪いじゃん」

「お前、ほんとにやめろって、あっ…ん」

「余裕があるときはローション使うけどまあ唾液で事足りるというか、へふにひのうはかわんないとゆうか」

「ほんとにバカだなお前、んっ」


ゴム越しとはいえ、人の性器に唾液を垂らすな。

講釈に夢中で聞いていない。

こいつはいつもそうだ。

俺は八割方「聞いてないフリ」だと思ってるけど。



「強く握ったり早く動かしたりするのを続けてると本番でイけなくなるらしいけどはんじょうは大丈夫?」

「うるせぇちょっと、黙れ、あっん…」

「僕は気を付けてあまり早くしないようにしてるけど」


バカ、十分早いわ。

講釈がヒートアップするのに合わせて手の動きが早くなる。



「僕にだって、その、"来たる時"が来るかもしれないし。」

「あっ、ちょっと待って、やばい、い、く、いく、」

「ああ、あと寸止めや我慢も良くないらしいね。」



嘘だろ、こんな早く、



「だから出したかったら出していいんだよ。」

「はっんぁ、おにや、あっ、無理、あっ、あっ


っ~~~~~~~~~♡♡(ビュクッビュルルルル!!!」




「あとは…」

「はぁ……っんは、はぁ……お前……ふざけんなよ…」

「…」

「何してんだよ、こんな…こんなこと…」

「………………」

「………何だよ」

「すまない、泣かせるつもりはなかった」



おにやの顔がゆっくり近付いてきて、

目尻にキスをされた。ふざけるなよ。

変なところで優しくしないでほしい。



唇が離れて、至近距離で見つめられる。

いつもは見えない瞳に射抜かれて、頭がくらくらする。


目を、閉じてしまった。



深い口付け。

入ってきた舌が熱くて、溶けて、ひとつになってしまいそうだ。

舌先、歯列、顎の裏、何度も、執拗に愛撫してくる。

こいつらしいな、と思う余裕もなく

ただひたすらに快感に溺れることしかできない。


調子が狂う。

おにやってこんな、こんなに魅力的だったっけ?









「……おい、お前なに硬くしてんの?」

「え…?……んな馬鹿な!? いやこんなの」

「なんだよ、おめぇだって興奮してんじゃねえか!!」

「いやそもそも」

「あんだけ講釈垂れてよぉ!?」

「いやっそれはその、っあ、はんじょう、そこはっ、」




見せてくれよ、おにや。

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