第48話
――『調査依頼』を受ける事にしたレヴェナントは、ローランから北にある
調査対象の森林地帯に踏み込んでいた
そこは木々が生い茂る深い森の中だった 樹木が密集しているせいで
視界が悪く、地面は苔に覆われていて滑りやすい
樹上には鳥型の魔物が飛び交っており、時折上空を旋回しながら獲物を
物色するように観察してくる
時折上空を旋回しながら獲物を物色するように観察してくる
警戒を怠らず、しかし周囲を注意深く見渡しながらも歩を進めていく
しばらくして、前方の森が開けた
そこから、比喩でもなんでもなく文字通り吐き気がするほどの
血生臭い空気が漂ってくるのを感じ、レヴェナントは眉をひそめる
開けた土地に向かって進むにつれて、血生臭いがより強くなっていく
そこには、確かにいくつかのテントや焚火の跡があった
しかし、生きている者は誰もおらず凄惨な戦闘の後だけが残り、
死体は 貪るように喰い散らかされた形跡が見て取れた
地面に転がっている肉片や骨の残骸が無残にも打ち捨てられている
そこにあったのは、明らかに人間同士の争いではなかった
まず間違いなく、人外の存在との戦闘痕である事が分かる
それを見てもレヴェナントは特に何も思わず、冒険者が死んでいる・・・
そう理解するだけであった
また魔物の死骸も多く残っていた
それも一種類だけではないので、複数の種類の魔物と冒険者
パーティが争ったようだ
しかし、レヴェナントにとってそれはどうでもよかった
今重要なのは―――ただの小鬼種のオークにしては、かなり大きい
死骸がある事だった
身長は190cmくらいあった
全身が傷だらけになっており、特に 頭部や胸元が大きく
損傷している
『それはオークにゃよ』
黒猫が喋る
レヴェナントは無言のまま、食い入るようにオークの死骸に視線を
向ける
「にゃんこさん・・・これがオーク? 『難易度変更』前と姿がまったく
違っているよ?
これどちらかというと、管理人さんが無断で借用したとしか思えない、
登場する
レヴェナントの言う通り、その外見はかなり異様であった
皮膚の色は灰色で頭髪はなく、スキンヘッドの人間そのものだ
眼は白く濁っている
『神様にゃ おそらく『難易度変更』で、外見も変更したにゃね』
黒猫がそう説明する
確かにこんな魔物は今までの『
見たことがなかった
「外見も変更されたオークやその他の魔物達に、『銀』級冒険者
パーティが全滅させられたって事か」
レヴェナントが呟きつつ、近くに落ちていた『銀』の小板を拾う
そこには、名前や性別、年齢など冒険者の情報が記載されていた
『そういう事だにゃね』黒猫が同意する
『我が主』
レヴェナントが何かを言おうとした時、近くに黒ずくめで闇に
溶け込みやすくするための夫された、忍び装束を着込み
白い狐面が 特徴で腰に忍者刀を差した
姿を現した
「ご苦労さん」
レヴェナントがそう言いながら振り返る
『ご命令通りに情報収集をして参りました』
低い声色でそう報告をする
「聞かせてもらおうか」
レヴェナントは、視線を白い狐面が特徴で腰に忍者刀を差した
『まず、森林地帯を進撃している規模は、『総軍』
その中には『上位種』『 変異種』『亜種』『希少種』と称される
魔物を多数確認できました
そして、それらを統括する強力な力を有す『英雄種』と称される
魔物も発見しました』
「そいつは、どえらいことだ」
それを聞いたレヴェナントが、声を落として驚く
『『総軍』の数は目視での推定ですが、ざっと20万から50万といった
ところでしょうか
さらに、その中に存在する数は少ないものの、 特殊な力を有する
個体が確認されております。それらの特徴や能力は、私には
分かりかねますが・・・』
「1万から2万じゃなく20万から50万?!」
その数字の大きさに、レヴェナントは驚愕した
それは、レヴェナントが今までの『
まったくあり得なかった数だった
『『総軍』の数も、『難易度変更』で上限を引き上げたにゃね
数が想定より多くなった理由は、おそらく追加された『英雄種』の存在が
大きいんじゃないかにゃ?』
黒猫がレヴェナントの疑問に答えるように話す
今までの『死に戻り』経験からすると、大体の『総軍』は1万前後の
場合がほとんどであった
また『英雄種』と呼称される魔物も存在しなかった
ほぼ確実に『英雄種』の影響だろうと、予想できた
これから先の展開次第では、状況が一気に修羅場に変化する事も
考えられた
「これは、ちょっとした戦争だな」
レヴェナントが緊張感のある声で呟いた
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