第44話

 しばらくすると、降り注いでいた雨もやみ、闇の帳に包まれた夜天に輝く月だけが映っていた

『第一階層召喚』の『戦徒サーヴァント』のおかげ切り抜けられたにゃ』

 不意に届いた声の主は、黒猫だ

「さすがに一人では倒せないよ にゃんこさん

 しっかし、まぁ『変わり身』を準備しておいて正解だった」

 歪む様に笑いながら、夜空に吹き上がる爆炎を見上げる。

 爆風が収まり始めた頃合いを見て、ゆっくりと視線を『戦徒』

達に向けた

『『冥府の死徒』は退けただけにゃよ

 しばらくすれば――――またにゃ』

 黒猫が喋る


「こっちには優秀な戦徒サーヴァントがいる――これで一安心さ」

 レヴェナントはそう言いつつ『冥府の死徒』に強烈な一撃を放った、旅行用に整えられた身軽な衣服を着こみ、貌は奇妙な石仮面を被っいる戦徒サーヴァント

 目を向けた

 その戦徒サーヴァントが何かをしたわけではないが、何故か心強い

 そして、広野を動き回るための厚手の外套を羽織り、黒革のロングブーツで血避けのためか、口元を袴捲で覆っている戦徒サーヴァントにも視線を向けた

 戦徒サーヴァント達は緊張を解いた様だった


『新たに呼び出した『第一階層 『英霊』戦徒サーヴァントも超一流にゃよ』

 黒猫が喋りつつ、視界に入る戦徒サーヴァント達に軽く手を振った

 戦徒サーヴァントが安堵のため息をつく

 先ほどまで、圧倒的な力を振るっていた戦徒サーヴァントが、今は普通の

 人間にしか見えない

 だが、油断はできない

 なぜならば、戦徒サーヴァントの身体から漏れ出す魔力が、常人とは

異なるからだ



 レヴェナントがローランに戻ったのは、曇天の空はすでに黒に染まり完全に

 暗闇に落ちていた

 外壁の上には数メートルおきに灯りが点灯され、昼間のようなとまではいかないものの充分な明るさを保っており、周囲の様子を伺う事ができる

 レヴェナントの付近には、『英霊』戦徒サーヴァントの代わりに

 10体ほどのスケルトンを引き連れていたが、周囲に敵影はないようだ

 

「やっと帰ってこれた」

 幻想的な風景を作り出しているローランに視線を向けたまま、レヴェナントが呟くように言った

『―――都市警備隊には何も伝えてないにゃよ?

 スケルトンを見て、魔物の襲撃だと誤解され攻撃されても知らないにゃよ』

 黒猫が喋る

「……わかってるよ。

 それにしても、今回の『冥府の死徒』は、今までとは違った

 やはり『高難易度インフェルノ』が影響?」

 レヴェナントが尋ねる


『……おそらく関係はあるにゃ』

 黒猫が小さくため息交じりの声を出した。

「・・・」

 レヴェナントは何とも言えない表情を浮かべつつ無言を貫いたまま、外壁に設けられた荘厳な門まで進んでいく

 門近くの防空塔で警戒していた警備兵が大声で警告を発す どうやら、黒猫の言葉通り、レヴェナントが連れてきたスケルトンたちは、魔物襲撃と

 勘違いされた様だ

『ほれにゃ』

 黒猫が喋った

 警備兵の詰め所からも、屈強な警備兵が飛び出して来て、槍を構えながらこちらに向かってくる

 だが、そんな状況でも特に慌てる様子もない まるで 散歩をしているかの様な

 足取りで歩みを進める


「なんだぁ!?」

 警備兵の1人が叫んだ

「スケルトンだと!? 」

 別の警備兵が呻く様に言う

 その言葉を聞き流し、レヴェナントは苦笑する様な雰囲気を出しつつ、

 いつもの調子で説明をはじめた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る