第41話



 レヴェナントは黒猫にちらりと視線を向けたが、黒猫は気にした風もなかった

 握り締めている虹色のカードに、何か念をこめ虹色のカードを魔法円の中に

 落とした

 カードが魔法円の中の床に落ちるのと同時に、カードは蜃気楼の様に

 空気に溶ける様に消える

 それと同時に魔法円が輝き出した

 強く真っ直な光の帯は暗闇を貫き、魔法陣円の放つ光が凝縮する

 光が何か別のものへと変わろうとした

 そして再び暗闇に光が押しつぶされた


 光が徐々に人の形をしていく

 姿がはっきりと見えるにつれて周囲の大気が確実に研ぎ澄まされていく

 そして大海原さながらの壮大な気配と底知れぬ膨大な魔力や気力を感じ取った

「おお―――――」

 レヴェナントはそう短く呟きながら、茫然として見つめる

 光り輝く魔法陣円から出現したのは―――

 双眸の奥に光を宿した、禍々しくも神々しい髑髏と骸骨を模した甲冑に

 身を覆った『戦徒サーヴァント』だ

 それは一糸乱れぬ動きで跪いた


 その様はまるで古代の王の近衛兵のように凛々しかった

『問おう。貴殿が私のマスターか?』

戦徒サーヴァント』は静かに問いかけた

 その声にはある種の凄みがあり、聞く者の魂まで震わせるような響きがあった

「え?……はい、が貴方のマスターです」

戦徒サーヴァント』は僅かに顔を上げると無言のままじっと見つめた

 レヴェナントはその眼差しを受け止めた

戦徒サーヴァント』の双眸の奥に宿る光からは、一切の感情がなかった

 しかし同時に深い知性と理性を感じる事ができた


『 『髑髏の王』にゃ』

 黒猫が少し驚いた様に喋る

「さすが高難度・・・超一流の『戦徒サーヴァント』を引き当てる事が

 できるとは」

 レヴェナント感心したように言う

戦徒サーヴァント』は再び顔を伏せると、右手を差し出した

 その手をレヴェナントは、思わず両手で握って握手した

 そして、ゆっくりと立ち上がった『戦徒サーヴァント』は、一歩後ろに

 下がると、胸の前で片腕を組み片足を引いて半身に構える

 その姿はまさに騎士が敬意を表わす際の姿勢だ


 髑髏の騎士はそのままの姿勢で静止した 次の瞬間その周囲に無数の黒い影が

 現れる

 それらは実体化すると、髑髏の騎士と同じく胸の前で腕を組み、片足を引いて

 半身に構えた

 それは『戦徒サーヴァント』である髑髏の騎士に従う影達だ

 そして全てが『戦徒サーヴァント』でもある

『忠誠こそ我が名誉』

 髑髏の騎士及び、それに付き従う黒い影が応えた



『レアを引けて満足したかにゃ?』

 黒猫が喋る

「これで満足しないと、何に満足したらいいの?」

 レヴェナントが告げる

『 それは結構にゃ

 満足している所を遮る様で悪いにゃが、夜間になれば『冥府の死徒』と遭遇する

 可能性があるにゃよ』

 黒猫が喋る


 主に夜にしか行動しない厄介な魔物の名を聞いたレヴェナントは冷水を

 浴びせられたように身体を硬直させた

「・・・どうすればいい?」

 レヴェナントが尋ねた

『幸いしないにゃよ

 例え 夜になる前に街へ辿り着けなくて遭遇してもにゃ、それなりの

戦徒サーヴァント』がそろっているにゃ』

 黒猫が喋る

「上手く連携すれば撃退はできるって事か・・・

 分かった。ありがとう、にゃんこさん」

 レヴェナントは静かに答えた














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