第33話

 ――隊列を組み暗い中をしばらく進んでいると、奥の方から

 複数の足音が聞こえてきた

 しんと静まり返っている空間に響く足音が近づくにつれて、レヴェナントは

 緊張と警戒感を高めた

「にゃんこさん」

 そう短くレヴェナントが言うと、大きく息を吐く

 その後、眼に力を込めぐっと唇を引き締めた

『―――くれぐれも油断しない事にゃ』

 黒猫が喋った


 睨みつける様に前方を見ると、暗い奥から複数の人影が現れた

 その人影の正体は、通常より大きめの躯体サイズのゴブリンだ

 何時ものゲタゲタとニヤケた笑みを浮かべてはおらず、鋭い眼光でレヴェナントや

戦徒サーヴァント』を睨みつけている

 数は40匹ほどの中規模だ

 だが質がまるで違った

 難易度変更の影響なのか、

 レヴェナントは様子を見て動揺したのを隠す様に睨みつけ、歯を食いしばる



 一匹のゴブリンが奇怪な言葉を発すると、周囲のゴブリン達が武器を抜き、

 臨戦状態に移行した

「殲滅しろ」

 張り詰めた空気の中、 レヴェナントは短く命じた



 その命令と共に、まず飛び出したのは陣羽織を羽織り、腰に刀を

 二本差した『戦徒サーヴァント』だ

 右手で腰に差す一振りの刀の柄を掴み姿勢を低くすると同時に、身体が

 ぶれるほど加速した

 4匹ほどのゴブリンが、『戦徒サーヴァント』の脚、胴、頭に狙いを定め、

 小剣を振るった

 そのどれもがも錆びも無く、真新しい

 当たれば無事では済むまいが、ゴブリンの反撃を鮮やかにかわした


戦徒サーヴァント』の斬撃はそれよりも速くそして凄まじく、

 剣圧と共に連撃が全てのゴブリンに振るわれた

戦徒サーヴァント』の姿を眼で追ったゴブリン達だったが、

 すでにその時には、身体を斜めから切断されていた直後だった

 切り裂かれたゴブリン達は絶叫すら発する事はなかった

 恐らく、一体何が起こったのかもわからないまま絶命した事だろう


 徒党を組み武装したゴブリン達は、斬り口から緑色の液体を

 噴出して床に転がる

 醜悪な貌は死と恐怖に染まり、どろどろっとした緑色の液体が床に広がった

 一方、陣羽織を羽織った『戦徒サーヴァント』は、無傷で

 何事も無かった様に鞘から抜いた刀を元の鞘に戻していた

 明らかに『戦徒サーヴァント』が圧倒だった

 立ち塞がったゴブリンの徒党は、息する暇もなく一瞬で蹂躙された


「一瞬だったけど、かは『戦徒サーヴァント』に

 攻撃を仕掛けようとしていたよ

 なかったけど、さすが『インフェルノ高難易度

 レヴェナントは短く言う

「討伐証拠を集めて、奥に行くにゃ』

 黒猫が喋る

 レヴェナントはふうっと息を一つ吐くと、床に転がるゴブリンから耳を

 斬り取ると、耳を『冒険者ギルド』から手渡された麻袋に詰め込んでいく







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