150 コーラ好きの男
「えっ、これで終わり?」
重大発表の
淡々とその事実を告げた
シンと静まり返ったデスクルームに
「これってライブですよね? 誰が見てるんですか?」
「背後に居たのはアルガスの人間じゃない。驚いてる様子もなかったけど、桃也さんが英語で話してたって事は、ある程度外にも流してるんだと思うよ」
「外国……って事?」
「恐らくね」と困惑顔で答える
『大晦日の
──『I am the culprit』
その音がずっと耳に残って、京子は席を立った。
「私、長官の所に行ってくる」
「俺も行きます」
「ありがとう」と
☆
アルガス長官・
机上のパソコンも閉じたままで、さっきの放送を見ていた様子もない。
「
ソファに座った誠の正面に滑り込むと、綾斗がその横に腰を下ろす。
「長官はご覧になっていなかったんですか?」
「何だか僕の方が緊張してしまってね。それに英語は苦手なんだよ」
自分と同じことを言う誠に、京子は一瞬パッと笑顔を見せた。
綾斗は似た二人に「そうなんですか」と苦笑いする。
「『大晦日の白雪』の話をする事は知っていたんですか?」
「秘密って言うのは隠し通せるものじゃないんだよ。その人間が大きくなればなる程ね。知られるよりも先に話そうかと提案したのは僕だ。アルガスを背負う彼が、一人で抱え込む時期はとうに過ぎてるんだよ」
誠は脚の上で手を組み、「そうは思わないかい?」と微笑んだ。どうやら彼の策略らしい。
「現に今までだって公にしたつもりはないのに、君たちはもう知っているだろう?」
「それは……」
「桃也くんはちゃんと話せていたかい?」
「はい」
京子が初めて『大晦日の白雪』の事実を知ったのは、
「あれは誰が見れる放送だったんですか?」
「関係各所にって建前だけど、クローズドではないよ。だから、いずれマスコミの耳にも入るだろう。後で僕も会見を開かせてもらうつもりだ」
「日本語でね」と誠は笑む。
昨日松本の話をした時は少なからず動揺しているように見えたが、今日の彼はいつも通りだ。彼もまた、桃也の会見が終わってホッとしているのかもしれない。
「騒がれるだろうけど、憶測で話が広がるよりはよっぽど良いからね。桃也くんには運が付いてるよ。『大晦日の白雪』で怪我人は出たけど、後にも先にも亡くなったのは強盗犯の一人だ。まだ若い頃、彼は被害者一人一人に事情を話して頭を下げてるんだよ。彼を最後まで非難する人なんて居なかったんだ」
「そんな事があったんですか。キーダーの私たちも知らないなんて」
『大晦日の白雪』が起きた翌日に桃也に会って、そこから3年以上顔を合わせる事はなかった。京子の知らないその間に、彼にも色々あったんだと思う。
「
「……うまく行きますかね」
「アルガスはホルスとの戦闘を控えているからね。今こそノーマルの私じゃなく彼の出番だと思っているよ」
ホルスとの戦いと言う言葉が誠の口から出た瞬間、現実なんだと緊張が走る。
そうなるだろうと
「君たちには辛い思いをさせる事になるかもしれない。けど、私は私の仕事をさせて貰うよ?」
「──分かりました」
京子は綾斗と目を見合わせ「はい」と返事して部屋を出た。
「これからどうなるんだろう」
「戦いが避けられないなら全力で行くしかないですよ。とりあえず京子さんは、毎日ちゃんと食べて、ちゃんと寝る事」
「それ、今言う事?」
「一番大事だから言ってるんだよ。心配だから」
「……分かった。綾斗もね?」
「うん」
誰も居ない廊下だと思って、彼と見つめ合う。
けれど他の気配があることに気付いた。
「お二人さん、お久しゅう」
突然の登場にハッとして振り向くと、そこに珍しい人物が立っている。
男は飲みかけの
「お久しぶりです」
キーダーの制服を着る彼とは何度か会っているが、もう数年前の記憶でしかない。
京子は
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