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「私、キーダーですよ?」
どうにも引かないナンパ男を
「知ってるよ。だから声掛けたんだもん」
前に
「だから声掛けた、って。怖くないんですか?」
「全然。強いし可愛いなんて最高じゃん? それが本物かどうかはギャンブルみたいなものだったけど、タイプの子が失恋して落ち込んでたらチャンスって思わなきゃ。優しくしてあげたら俺のものになるかもしれないでしょ?」
「なりません!」
「怖い顔しないでよ、冗談だからさ。で、君の彼が遠くに居るってのは分かったけど、そんな辛い顔させる相手ならやめた方がいいんじゃない?」
「…………」
「初めて会った俺じゃ説得力ないんだろうけどさ。遠くの親戚より近くの他人って言うじゃん? 恋人だって同じだよ。したいときにできないなんて寂しいでしょ」
「そ、そんなこと、言わないで下さい」
「またまたぁ。俺の言葉、グッと来たんじゃない?」
「来てません!」
言い返してみたものの、彼は楽しそうに会話を弾ませるばかりだ。
あまり身長差のない彼の視線は、避けようと思っても正面からグイグイと入り込んでくる。
「なら俺と楽しいことする?」
「しません。放っておいて下さい」
「じゃあ、また会えたらもう少し深い話をしようよ」
こんな場所で偶然会って、またなんて事があるのだろうか。
万が一の偶然──彰人と再会した時も、偶然ではなかった。
「私、行きますから」
「ちょっと待って。ここで待ってて貰える?」
背を向けようとした京子にそう言い置いて、男は側の自動販売機へ走った。
このまま逃げてしまう事も出来たが、言われた通りに留まると、すぐに彼は戻って来る。
「今日、夕方から冷えるって言うから持ってって」
缶コーヒーを差し出されて、京子は「えっ」と目を見開いた。
「警戒しなくていいよ。俺、
「……京子」
忍は京子の手に熱い缶コーヒーを押し付けて、満面の笑顔を寄せて来る。
「またね、京子」
京子に逃げる隙も与えず、忍はそっと耳元で囁いて去ってしまった。
☆
そんな二人のやり取りを、数十メートル先で目撃していたのが
アイドルグループ・ジャスティが今日から東京駅をジャックするという事で、ハイテンションの
ヲタ活の
「ちょっ」
目を疑う光景に思わず声を出すと、柱に貼りつくえりぴょんのポスターにデジカメを向けていた譲が「なになに?」と修司を振り向く。
あちこちの柱や壁に新曲の衣装を着たジャスティのメンバーたちが溢れていて、もう何枚写真を撮ったのか分からない程だ。他にも似たような男子が多くいるせいで、いつも浮きっぱなしの譲がその場に溶け込んでいる。
「いや。あれ、京子さんだよなと思って」
「あ、ほんとだ。声掛ける?」
「駄目だ」
向こうに行こうとする譲の腕を慌てて掴んだ。
彼女に会っても、掛ける言葉が見つからない。
今京子は一人でいるが、数秒前まで見知らぬ男と一緒に居たのだ。
恋人の
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