Episode4 京子【01選択】

プロローグ

 その闇が燻ぶり出したのは、もう何十年も前の事だ。


 アルガス解放の少し前、外の世界に自由を求めた男が居た。

 彼は自らの意思で檻を抜け銀環ぎんかんを外したが、理想とかけ離れた現実に苦悩し、一人の女を助けて死んでいった。


 もう一人は、生きる理由を探していた。

 男は外の世界を彷徨い、唐突に彼と出会う。


 そんな二人に関わった彼は、正義を唱えて三人目のキーダーへ手を差し伸べた。


「ねぇ、俺と手を組まない? こんな不条理な世の中を変えられるのは、痛みを知った人間だけだろう?」


 絶望の淵に居た少年は、男の暗い瞳から逃れることができなかった。むしろその言葉が唯一の救いに聞こえたのだ。


 だから、迷わずに手を取った。

 望まぬ未来を引き起こす歯車の一つになるとも知らずに──



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る