64 キーダーになります
食堂に
マサの部屋を
扉の向こうで電子音が
開かれた扉の奥に現れた桃也が、
修司もまた桃也の姿に眉をひそめた。
いつも
「桃也さん今夜待機だったんですよね? どこかに行くなら、俺も連れてって下さい」
「お前は正式なキーダーじゃないだろ? 巻き込むわけにはいかねぇよ」
他人の要望など
「一人で京子さんを助けに行くんですか?」
「それだけが理由じゃねぇよ」
「今日のアルガスは静かすぎます。どこで何が起きてるんですか? 律さんが……ホルスが関係してるんですか?」
桃也はすぐに口を開こうとはしなかった。
「彰人さんの部屋を見つけました。あの人もキーダーなんですか?」
その名前を出すと、桃也は「気付いたのか」と顔を強張らせる。
「彰人さんのお父さんも、昔キーダーだったんですよね?
桃也は困惑と諦めの混じったような顔で、その話を零す。
「結婚して相手の姓に入ったらしい。アイツの親父──遠山浩一郎は、今
このところ衝撃的な話が多すぎて、事実に対する驚愕の度合いは減ってしまったが、それでも十分に驚いた。修司は混乱する頭を必死に整理する。
「だから彰人さんは、自分の事を悪人だって言ったのか……けど、トールは力が使えないんですよね? 彰人さんが一人で戦ったんですか?」
「彰人の力は
「禁忌って、そんな……銀環を外した能力者って事は、キーダーからバスクになったってことですか?」
アルガスの常識で言えば、銀環を付けた能力者が選べる道は、キーダーか、全てを
アルガス解放でトールになった颯太が力を
桃也は
けれど父親への
二年前、テレビに映し出されたアルガス襲撃の光景は、今もはっきりと覚えている。ほんの僅かの時間だったが、建物を包む光や、落ちていく
「けど、それは終わった話だ。アイツはもうキーダーで、きちんと仕事してる。ホルスの安藤と
桃也や
律の所に彰人が居たのは、それが彼の仕事だからだ。そこに突然現れた修司など『ホルスの女に
「
「はぁ?」
彰人は人伝いに聞いたと言っていた。桃也は
「そんな情報どっから拾ってくんだよ。お前をアルガスにって保護を求めたのはアイツだからな?」
ホルスが迎えに来たあの日、どうして綾斗と美弦があそこに居たのか不思議だった。
「彰人を
「恨めないですよ、俺には……。ここに来れて良かったと思ってます。けど俺はまだ宙ぶらりんで、ここの事も今日の事も何も知りません。もし俺が今ここでキーダーを選んだら、一緒に連れて行ってくれますか? この力を持って生まれてきて、ずっと迷ってたけど。真実を隠されることが一番辛いってことが分かりました。だから……」
悲痛に込み上げる涙を
「だから俺は、キーダーになります」
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