63 彼に良く似た男
食堂に
マダムと目が合って、修司は
足早に地下へ下りると、細い廊下の奥に
「お疲れ様です」と
「思わぬヤツが来るもんだな」
「今日は
「ほぉ。いつもはフリフリエプロンのお姉さんだけど、お前が来るのは嬉しいもんだな」
普段と変わらぬ表情にホッとしつつ、修司は夕飯のトレーをテーブルの中央に乗せた。
颯太の希望かマダムの計らいかは分からないが、ほうじ茶の他に炭酸水が添えられている。
修司はここを
地下であるが
「普通の部屋なんだね」
「ここは地下牢じゃねぇよ。解放前の俺が居た頃も、監獄なんて言われちゃいたが鉄格子が
颯太は「いただきます」と手を合わる。よほど空腹だったのか、みるみるうちに半分までなくなり、「そういえば」と手を休めた。
「上が人手不足になる程忙しいって、何があった?」
「詳細は聞いてないけど、キーダーは俺ともう一人以外みんな出てるらしいよ」
「そうなのか?」と眉をひそめて、颯太は腕を組んだ。
「悪い予感しかしねぇな。キーダーが束で動くなんてのは、なかなかない事だぜ?」
「ねぇ伯父さん。この間の夜駅で会った時、俺と一緒だった男の人が居ただろ? あの人が実はキーダーらしいんだよね。
「あぁ、綺麗な兄ちゃんか? じゃあ、あの女のトコに居たのは
そうだ。彰人はあの日の行動を「仕事だから」と
「でも、
「そうなんだけど、銀環ってこの形だけじゃないらしいんだ」
颯太も彰人の手首はチェックしていたようだ。
修司は自分の銀環を見せて、桃也の言っていたことを説明する。
「何だそりゃ。藤田さんの
「藤田さんって、前に伯父さんが話してた人だよね?」
颯太が過去の話をした時、技術部の天才だと言っていた人だ。
「そうだ。アルガスの技術部は昔から変なのが多いって専らの噂だ。現役の奴等もそうなんだろうよ」
そしてぐるりと首を
「あの顔、まさか……」
颯太の記憶がアルガス解放まで
掘り起こされた颯太の過去が告げられて、修司は勢いのままに立ち上がった。
「ごめん伯父さん、俺、行ってくるから」
駆け出す修司を「おい」と颯太が引き留める。
「ちょっと待て。お前今日、学校の進学説明会だったろ。行けなくて悪かったな」
突然の謝罪に、修司は「気にしないで」と首を振った。
「そう思ってもらえるだけで大分嬉しいから。それと――」
普段見せない面食らった表情の颯太に、修司は急ぐ気持ちを抑えて向き合った。
「俺、キーダーになってもいいかな?」
反対される覚悟はしていたが、颯太は
「お前、何か楽しそうじゃねぇか。けど、俺より先には絶対に死ぬなよ? それが条件だからな」
颯太は「約束だぞ」と笑って、銀環の付いた
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