15 東京に隕石が落ちようとした日に
「隕石が落ちて来た日の事って、伯父さんは覚えてる?」
アルガス解放に至る経緯については、平野にも誰にも聞いたことがなかった。
キーダーの
「そうだなぁ」と
「俺がお前くらいだった頃の話だぜ? そこまで詳しくは覚えてねぇけどよ。テレビがどこのチャンネルも一斉に緊急放送に切り替わったんだ。周りが騒がしくなって警報が鳴って、避難しろって言われても、俺は最後までブラウン管の前から離れなかった。こんな感じの青空に赤い光が白い尾を放ちながら流れて行って、その先に見たことある風景が映ってよ」
言われるままに想像して手の汗を握り締めた修司に、颯太はふっと短く笑う。
「東京タワーが見えた時、もう駄目だと思ったのはハッキリ覚えてる。けど、そん時の映像をテレビで見た
「反対派?」
「出る杭は打たれるっていうだろ? 難癖付ける奴は小さい粗も見逃すまいと必死こくんだ。
「
「半分は俺の
「大舎卿は、人類の盾になったんだね。それって今のキーダーの理念を築いたってことだよね」
キーダーは人類の盾である――何かあったらきっとキーダーが助けてくれると、今の世の中誰もがそう思っているだろう。
「隕石が落ちて来なかったら、能力を持った人は今どうなってたんだろう」
「昔のままか、若しくはキーダーが内部で反乱起こしてたかもな。キーダーが国の
うんうんと納得しながら、颯太は「だから」と修司へまっすぐに視線を向けた。
「お前もチャンスは逃すなよ? 運命の分岐点ってのは突然やってくるもんだからな」
修司の肩をポンと叩くと、颯太は「なぁ」と重い溜息をついた。
「お前の力を隠したこと、
急に何言うんだと眉を上げつつ、修司は横に首を振る。
「俺は母さんが好きだったから、母さんの息子として
「俺に気なんて遣うなよ。でも、そう言って貰えると、俺も婆さんも……千春も喜ぶな」
「そんなの遣ってないよ。本当に、ありがとう」
急に照れ臭くなって、修司は
颯太は笑いながら「ありがとよ」と言って、鼻歌交じりに部屋へと戻って行く。
両親を亡くした修司にとって、颯太の存在はとてつもなく大きかった。
気を遣わないというのは本心で、けれど全てではない。
女性好きの彼が今まで独身なのは、自分がいるせいだと未だに感じている。
そんなことを本人に言った所で、彼は笑い飛ばすだけだろうが。
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