スラッシュ/キーダー(能力者)田母神京子の選択
栗栖蛍
Episode1 京子
1 十五歳最後の夜に
5年前──
大晦日の帰省中、
記録的な大雪が首都圏に舞い降りたその日、東京の中心で大きな爆発が起こったという。
客車の電光掲示板に流れるニュースも携帯電話もその緊急事態を伝えてはいるが、詳細は
「爆発って……」
その言葉を怖いと思うのは、まだ十五歳の京子だけでなく、他の乗客も同じだった。
『爆発』という見出しだけで、人々の不安を
窓の外に見える雪は次第に勢いを増し、夜の街がいつもより明るく見えた。
爆発と雪のせいでダイヤが乱れ、東京駅は普段より混雑していた。
人の波を縫うように進み、指示された出口で迎えの車に乗り込む。目指すのは事件の起きた住宅街だ。
「急いで、お願い!」
その言葉も
赤色灯を回した何台もの緊急車両とすれ違い、ようやく運転手が車を停めると、フロントガラスの向こうに真っ白い風景が広がる。
状況がまるで読めない。
ここは東京の
真っ平らの地面に降る雪が、白を深く積み重ねていく。
京子は
「人だ……」
雪とともに絶望が舞い降りる。
京子は袖口に隠れた
生々しい能力者の気配を感じる──被害の元凶が人間だという事実を予想していなかったわけじゃない。ただここに来るまで、ずっとそうでなければいいと思っていた。
「私は、何もできなかった……」
怖いと思う反面、不謹慎ながらも心のどこかでワクワクしていたのも嘘じゃない。
京子がキーダーになって、初めて起きた事件だったからだ。生まれ持ったこの特別な
なのに事は既に終わっていて、京子ができることなど何も残ってはいなかった。
焼けた匂いが、キンと冷えた雪に薄れていく。
もうそこに人の姿は
☆
半径八十メートルの風景を一瞬で消し去った光は、二十五年前の隕石落下を
死者四人、負傷者八名を出す大惨事となったこの事件は、インタビューを受けた青年が「白い雪が全てを隠そうとしているようだ」と呟いた事から、『
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