社会に出る人達へ

東郷 珠

第1話 面接は合コンである

 面接官の問いかけに答える。それが面接だと認識している方は多い事でしょう。

 もし、そんな考えをお持ちであれば、ポイッと捨ててしまいましょう。


 面接とは出会いの場です。面接官が応募者を判別する様に、応募者も面接官を通じて、応募した会社が自分に合うか否かを、判断する必要が有ります。

 何も、面接官が偉いのでは有りません。面接官だけが選ぶのでも有りません。当然ながら、応募者にも会社を選ぶ事は出来ます。


 さて、未だ意味がわからない方も、いらっしゃるでしょう。具体的な説明に入りたい所ですが、その前に合コンの風景を、思い出して下さい。合コンの経験が無い方は、想像して下さい。

 想像出来ましたか? では、少し例を交えて、説明していきましょう。


 まず、合コンに行く際は、何に気をつけますか? 身だしなみではないですか? 

 お気に入りの服を着て、若しくは取っておきの一着を身に着けて、女性なら念入りに化粧をし、男性なら髭を剃り髪を整える。

 これは、何の為にするのですか? 相手に好印象を持って欲しいからでしょう。

 合コンに来た相手が、ズボラな服装ならまだしも、泥だらけ、汗まみれ等、不潔な印象だったら、どうしますか? 帰りたくなりませんか?


 面接も同様です。相手に好印象を持たれるのが、最初のステップです。言い換えれば、重要なのは第一印象です。

 わかりますか? 扉を開けた瞬間に、鼻毛を抜いているおじさんが現れたらどうでしょう? 嫌な気持ちになりますよね?

 少し極端ですか? では面接官が、端から高圧的な態度ならどうでしょう? やはり、嫌な気持ちになりますね。


 面接官は会社の顔として、応募者の前に座っています。ここに重要なポイントが隠されています。

 応募者であろうが何だろうが、応募先の顧客になり得るのです。悪印象を与えるのは、言語道断です。そんな会社に就職しても、良い事は無いと思います。

 だって、横柄な面接官の態度を許す会社は、余り雰囲気が良くないだろうと、感じても仕方が無いのです。


 また、面接会場に入った際は、最初に細かく観察して下さい。もしかして緊張のせいで、それどころでは無いですか? いいえ、周囲を観察する心のゆとりを持って下さい。

 

 例えば、お店に入った瞬間に、あなたは何を見ますか? あなたが思い浮かべたものが、ヒントになります。


 先程の例と少し重複しますが、面接官が会話をしやすい雰囲気を作っていれば、人材の育成に力を入れていると予想が出来ます。

 会社の応接室等で受ける面接なら、より多くのヒントが得られるでしょう。

 応対する事務員さんの態度、入り口から応接室迄に何が置かれているか、応接室の清潔さ等、注意深く観察すれば、様々な事がわかるでしょう。

 

 そんなヒントを逃さず、働きたいと思えるか否かの、判断材料にして下さい。


 次に、合コンに現れた異性が、タイプだったらどうします? いきなり性行為を想起しますか? だとしたら溜まってますね。どこかで発散して下さい。


 少し話が逸れましたので、元に戻しましょう。

 タイプである。出来れば付き合いたい。じゃあ、告白しよう。こんなプロセスを簡略したやり取りをしていては、仮に付き合ったとしても、直ぐに別れるでしょう。

 まぁ、偶然にも上手く行く可能性は有ります。しかし、別れる原因になるのは相手の悪い所を知って、それが許せなかった場合でしょう。


 それでは、上手く行くコツは何だと思いますか? それは相手を知ること。それには、質問をしなければなりません。

 どんな趣味ですか? どんな事に興味を持ってますか? どんなタイプが好きですか? 普段どんな事をしてますか? 

 質問の仕方は、違うかもしれません。ですが、近しい内容を聞くのではありませんか?

 

 重要なのは、相手に興味を持つ事です。


 付き合ってからでも、知る事は出来る。恋愛ならば、それも良いでしょう。しかし、就職は違います。

 取り敢えず就職は決まったけれど、会社の事を何も知らない。それで辛い思いをするのは応募者です。

 だから、予め知っておきましょう。面接は、いい機会なのです。


 冒頭に書いた事を思い出して下さい。質問に答えるだけの面接は、面接官が応募者を知るだけです。

 それだけでは、面接官が応募者が適切か否かしか判断されません。


 あななたはどんな理由で、その会社を応募したんですか? 条件ですか? それだけですか? 多くの募集から、その会社を選んだ理由は、他に無いのですか?

 もし条件以外に何も無いなら、その会社で働いている所を想像して下さい。

 ここでポジティブな想像をした方は、想像通りに働ける環境なのかを、質問してみましょう。ネガティブな想像をした方は、不安を取り除ける様な質問をしましょう。


 いいですか? もう一度言います。


 面接は出会いの場所です。面接官が応募者を判断する様に、応募者も会社を、判断出来る場所なのです。


 働く際に何が不安ですか? どんな環境だったら働きやすいですか? 

 当然の事ですが、全て望み通りとはいきません。妥協せざるを得ない状況は、必ず訪れるでしょう。

 しかし、どこまでなら妥協が出来るのか。応募した会社を何も知らないのに、判断が出来るでしょうか?


 だから、気になった事は、どんどんと質問して、相手を知って下さい。それが、より良い就職に結びつくでしょう。

 

 日本では、転職回数が多い方が忌避される傾向に有ります。アメリカでは、転職をキャリアアップと見做される傾向に有ります。


 但し、何でもかんでもキャリアと見做されると思いますか? 一日だけの職歴が数十有ったら、それをキャリアだと判断されるでしょうか? 

 必要な技能を身に着ける為、いわゆるビジョンに基づいた転職で無ければ、説得力に欠けると思いませんか?


 結局は、築き上げた信頼には勝てません。その信頼を勝ち取る為に、先ずは面接から見直しては如何でしょうか?


 ご覧頂いた皆様に、幸せが訪れます様に。

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