第4話 世界は「超高齢化社会」を目指す

「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり

  一度生をうけ、滅せぬもののあるべきか」


戦国の勇、織田信長が好んだ幸若舞の敦盛だが、昔の平均寿命は短かった。

もっとも、「人間五十年」が寿命の事を指している訳ではないが、安土桃山時代の平均寿命は約35歳だったようだ。


現在日本は世界有数の長寿国になっているが、その平均寿命は83歳。

なぜ昔、日本の平均寿命が短かったのか。

その原因の多くは、出産の苦難に不慮の事故や病による急逝などだ。


ではここで、幸せな近未来を平均寿命に焦点を当てて見てみよう。


平均寿命の短かった過去、女性は大変な思いをし子供を産み育てていた。

流産に死産や早産、昔は子供が無事産まれてくるだけで大変な事であり、出産に産後の肥立ちを考えると、母胎に掛かるリスクも高いものだった。


また、無事生まれたとしても江戸時代の乳幼児の死亡率は15%。

明治までは「7歳までは神の内」とも言われ、大人になれる割合は6~7割程度であり、江戸時代以前であれば成人(二十歳)になれるのは、せいぜい半分程度だったそうだ。

そんな生活状態だった上に、当時の繰り返される戦乱を考慮に入れると、安土桃山時代の平均寿命35歳もうなずける。


さてここで質問だ、日本の全人口の内、成人まで育つのが半数である社会。

事故や病気、戦争などで不慮の死をまぬがれ得ない社会は、はたして幸せといえるだろうか。

当然ではあるが、こんな社会は幸せとは言えない。


たぶん、現代に生きる人の大半は、「誰もが平和で健康に育ち、より多くの人が天寿を全うする世界」、こちらを良い社会だと言うだろう。


しかし、それは本当の事なのだろうか、ただ漠然とそう勘違いしているだけなのではないか。

最大多数の最大幸福を目指す世界、平均寿命だけをみてもその矛盾が浮き彫りになる。


「平和で幸せな世界、その真実の姿とは、全てが超高齢化した社会の事を指す。」


皆が皆、天寿を全うするような社会になれば、世界各国がすべて高齢化の道をたどるのは自明の理である。


だって、天寿が来るまでだれも死なないのだから、働き盛りの若い世代が老人を支える人口分布の三角形など出来よう筈がない。

皆が理想だと思う世界の人口分布、その形は、せいぜい限りなく細長く延びた長方形と言ったところだろう。


現在の日本の人口分布は、団塊の世代が異様に多いいびつな形をいているので、今後の大変さは目に余るものがあるが・・・・・・


ここで「設計の予言者」が示す近未来を、平均年齢から検証してみよう。


なんでも将来の平均寿命、2048年頃には120歳に至る人もチラホラ現れ、100歳を越える人もざらになるとの事だ。


確かに天寿を全うする人が増える社会、不幸が少ない事は間違いない。

しかし今のままのシステムでは、超高齢化社会を支える事も、疲弊して行く国を止める事も出来はしない。


現在主流となっている資本主義社会も、市場主義経済も根本から見直して行かないと、最大多数の最大幸福。

裏を返して言い換えると、「人生百年を謳歌する人が溢れる、幸福な超超高齢化社会」など、ただの矛盾でしかなくなる。


しかし、解決が難しいとは言え、高齢者を邪魔者扱いする「令和の乳母捨て山 制度」、なんて事を考えるのは持っての他だ。


さて、この矛盾をどう解決して行くのか。


これについて「設計の予言者」が描く未来図を参考に、少々お時間を頂いて、話をつむいで行こう。


ただし、本当にそんな社会が訪れるとしたら、人生経験豊富な高齢者は日に日に増えて行く。

その高齢者が何を生き甲斐に生活して行くのか。


生き甲斐の候補を考えた時、元手も掛からず、知識や教養も深まり、誰もが手軽に楽しめる「物書きの世界」は、生活の必需品となって行く事だろう。


この様に、超高齢化社会になればなるほど、言葉をつむぐ者は飛躍的に増えて行く可能性がある。


もしそうであるならば、我々はたった今その先頭集団を走っている事になる。

すなわち我々物書きは、ロジャース曲線が示す、イノベーターやオピニオンリーダーになれる、そう考えてもあながち間違いではない。

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