第7話 共犯者。
手を握りしめて宣言する
「そんな事…できるわけ……、だって、それだとストーリーが変わっちゃうんじゃ……本末転倒じゃない?」
「出来る、出来ないじゃない、やるのっ!!」
ツバサの否定的な言葉に被せるようにミライは叫ぶ。
「 勝手に呼ばれて世界の強制力に無理やり動かされるんだもん!!だったら自分から動く!!ただ流されて行くなんて私は嫌だよ。知っていて、出来る事が有ってそれを見てみぬふりなんて絶対に、嫌だよ……、だって私には原作知識が有って誰が何処で死ぬのかわかってるんだよ?放って置けないよ……。」
「園田さん…」
「きっと大変だよ、いくら皆を助けるためでも、その為に嘘をつく事もあるだろうし。もしかしたら誰かに恨まれることもあるかも知れない。決まってるかも知れない誰かの運命を私達の勝手で思い通りにしようなんて、きっとそれは良くない事だと思う。でも、それでも。私は助けたいし、ストーリーとは違う最高のハッピーエンドを目指したい。だから」
「園田さん…」
「私の共犯者になってください。」
真っ直ぐツバサの目を見て告げる。ツバサの黒い瞳には真剣なミライの顔が映っている。
「……園田さんが園田さんで良かったなぁ」
ツバサは困ったように微笑む。それから頷いた。
「うん、やろう。ふふ、共犯者かぁ、ふふ」
小さく笑うツバサの顔は何処か晴れやかだった。それを見てミライもなんだか嬉しくなる。
◇◇◇◇◇◇
今私達は、カラオケボックス程の個室に居る。軍学校には勉強会をしたりする為の個室があり、申請すれば生徒は自由に借りることが出来る。ここならば人目につかないので心置きなくこれからの作戦会議が出来るのだ。机の上にはジュースとお菓子を広げている、ノートとペンも勿論用意している。準備はバッチリだ。
「よし、では第一回ハッピーエンド大作戦会議を始めます!!!!!」
「えぇ?何その名前……。」
ツバサはドン引きした目でこちらを見てくる。
「なによー?じゃあ何か案出してよ。批判するならさぞ素晴らしい名前を付けてくれるんだよね?」
「え、いや、別にそのままでもいいけど」
モゴモゴと口を動かし落ち着かない様子のツバサに怪訝な目を向ける。
「もう少しこっち来たら?」
横に長いソファーの一番端で居心地悪そうにしているから声を掛けるとツバサは顔を真っ赤にした。
「え、う、うん」
ちょっぴり移動したけどほとんど変わってない。
「?そこじゃ遠すぎない?」
なんとかもう少し近くに来て貰えたが、なんだか挙動不審だ。もじもじと頬を染めてこちらを伺うツバサにミライは察する。
「……ウブすぎない?イチローさん時代も足したら、結構歳とってますよね?」
「ぅぅ、ごめんね気持ち悪いよね、でも僕女の子と個室で二人きりとか初めてだし……」
頬を染めるツバサに思わずため息がでる。
「そんなことではこれからハーレムを作ってもらうのに、困るよー」
ミライの零した言葉に何とか落ち着こうとジュースを飲んでいたツバサは吹き出した。
「ブー!!げほげほ!?ぅえ?今なんてぇ?!」
「ちょ、汚い………」
「あ、ごめん」
「こほん、では説明するね。…………平気?」
ツバサの零したジュースを拭いてから、けほけほと咽ていたツバサが落ち着いたので話を戻す。
「まず、このハッピーエンド大作戦には【ツバサハーレム】が絶対に必要なのです!!!!」
「はいっ!!!!園田さん!!質問!!!」
勢いよく手を挙げるツバサに指を差す。
「なにかな、ツバサ君?」
「何故か聞いても?」
「ふむ、ではこちらを見てくれたまえ………」
わざとらしく作った口調でノートを指差す。
「女の子の名前?だね………」
そこには5人の女の子の名前が書いてある。名前、それからその横に説明文と言う感じだ。
『ヒロイン1【リリン】猫耳メイド。幼少期に盗賊に奴隷として囚われていたのを、
「何これ?」
ツバサはその一つに目を通して、胡散臭そうな目でミライを見た。
「心当たり無い感じ?リリンってツバサ君のメイドじゃないの?」
「いや、無いよ?何これ?誰?それに幼少期に盗賊から助けたとか書いてあるけど、子供がそんな事できるはずないよね?!」
「うーん、やっぱりちょこちょこ変わっている感じなのかなぁー」
本来であれば、ツバサが6歳の時に森で遊んでいたらたまたま連れ去られるリリンを発見してそして盗賊から助け出す。勿論、子供のツバサが盗賊に勝てるわけは無くなんとか隠れて連れ出そうとするのだがバレて殺されそうになる。だが、そこに通りかかった老剣士が間一髪二人を助け出してくれるのだ。そしてリリンは助けてくれようとした
「耳付きはわかるよね?」
「え、うん。それはわかるよ、一応16年間この世界で育ってきてるわけだし最初はびっくりしたけどね。」
「そうだよね、そういう意味ではこの世界の事はツバサ君の方が詳しいかもね。」
「うーん、まあそうなるかなぁ」
「あ、ところでツバサ君って老剣士に弟子入りとかしてないの?」
「いや、無い無い、僕本当そういう野蛮な事には全く関わりないし。剣術なんて全くできないよ!!!!!」
ブンブンと振られる首にミライはさらなる疑問を口にする。
「一応、その老剣士イベントってツバサ君のおじいさんの差し金なんだけど、なんかそう言う心当たり無い?本来なら復讐の為にツバサ君に戦闘訓練受けさせている筈なんだけど………」
「あーなんか昨日そんな話してたよね」
「うん、と言うかツバサ君のおじいさんってどんな感じ?」
「んー、あのさ。その、お祖父様の話って本当なんだよね?正直ちょっと、園田さんの言うお祖父様と僕のお祖父様ではかなり、齟齬があるというか………、正直別人の話に聞こえる。確かに僕には両親は居ないけどさ。でもそれも強盗に襲われて亡くなったって聞かされてて………」
「あーごめんね、昨日家族の話無神経にしちゃったもんね。そのおじいさん、どう違う感じなの?」
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