お力の詞


新造しんぞのころからこうだった

物思いにふけるたちだった

悪いことだと言いますか

馴染に目もくれぬ不届者と

格子を隔てた殿方の

何をたよりとできますか

湯巻に凍てつく素足さえ

我が身と思えば安堵する

腕の紫斑まだらにびくつけど

衣衣きぬぎぬの眠りははや覚める

手練手管てれんてくだを知ったとて

何にかはせむ彼方では

あなたのことを待ちわびて

ささる刃もいとおしく

すはここまでと割く君の

血汐とおぼれるわがいのち

ああ見返り柳の青青と

ついぞ枯れることはなく

ドブの黒きも見納めと

目を細めてはわれ果てぬ


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