浮草

さゑ

美登利の詞

ああいやだね

わたしはおとなになってしまった

あなたも知らぬおとなのおんなになった

名も知らぬひとをうけいれた


まだいくつなんて野暮なこと

有り得ぬことは無駄なこと

わたしは変わったのじゃないよ

わたしはわたしのまま

墨染の水の浮草に

揺らぐ柳のしたたかさは邪魔なだけ

手放すことは慣れっこだ


格子の先に手を這わす

あなたがいるかもしれないと

触れたのは冷ややかな白濁


水仙の葉先からもれる露の脆さよ

時の雫は弾け散った

これは安堵のため息か

それとも一縷の恋しさか

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