第13話 お祖父さん……

 ね……眠い……。


 ……昨夜ゆうべは緊張からか、あまり良く眠れなかった。


 今日は、いよいよ『ICLS』講習会当日! この数週間、深田先輩にレクチャーして貰った手技を試される日がやってきた。


 台所だいどこに降りると、母が既に朝食の準備をしてくれていた!


「わあっ! たまごサンドだぁ!」


 ……昨日、就寝前に「明日は日曜だし、朝早いから、お母さんは寝てて〜。 コンビニかどこかで食べるから大丈夫〜」って言ったのに……。


 母が……


「実はね……真優まゆが産まれる少し前、川越のお祖父さんが自転車で交通事故に遭っちゃったの! ……その時、通りがかった女の人が近くの学校の先生で、直ぐに『心臓マッサージ』をしてくれて命拾いした事があったのよ」


 え〜っ!? それは初耳!


「……消防署の人たちが定期的に学校に来て『救命講習』を開いてくれてたから、すぐに対処できたんですって」


 人口呼吸とか心臓マッサージって学校で習った記憶があったけど、確かに、消防官や婦人消防官が来てくれたのを思い出した。


「……この前、真優が救命講習に行く……って言った時、嬉しくて、思わずお祖父さんに手を合わせちゃった」


 母方の川越のお祖父さん……私が中学の頃に亡くなっちゃったけど、今でも思い出すのは優しい笑顔だ。


 ……もし、その事故でお祖父さんが死んじゃってたら、私は会えなかったかも知れないのね。


 母が私の前に、特に盛りの良いたまごサンドを置きながら……


「……講習会当日の朝は、真優の大好物で応援してあげよう……って、ずっと思ってたの」……と言って目を細めた。


 ……その顔は、どことなく川越のお祖父さんの面影があった。


 ……思わず涙が零れそうになったけど、ちょっと照れくさいので笑顔で誤魔化しながら、たまごサンドにかぶりついた。


 最高に美味しい!


「お母さんのたまごサンドは、やっぱり世界一! ありがと〜!」と、心からのお礼を言った。


「……ミルクティー飲むでしょ? アイス? ホット?」


「ホット〜!」


 ……母のお陰で、睡眠不足の疲れも吹き飛んだ!


 よーし! 『ICLS』本番! 頑張るぞ!


 ……見ててね! 天国のお祖父さん!

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