第3話 初めての生理学的検査・改
『ピンポーン』……とチャイムが鳴った。
……技師長が「今度こそ、初
あ〜、今度は多分、本当の、初めての
「では、行って参ります!」……と検査室を出ようとしたら、技師長が……
「堅い、堅いなあ! リラックス!
……はっ! またやっちゃった! 軽い笑顔、笑顔!
検査室を出て伝票ボックスから伝票を取る。
「はい、ワタナベさんですね! こちらへどうぞ〜」
初めての
心電図の電極は、吸盤式になっているので、毛が濃いと隙間から空気が入って、
……実は、先日、練習させて頂いた事務長は、お胸の毛が濃く、特に心臓の真上の皮膚を剛毛(←失礼)が覆っており、許させるなら、いっその事、剃ってしまいたかったが、そうはいかない。
シール式の電極もあるが、高価な上に粘着力が強いので、剥がす時に毛が抜けてしまう! 多分痛いだろう……。 結局、タオルで押さえて、やっとの思いで記録した。
……そんな訳で、胸毛嫌いになってしまったんだ。
患者様に、ベッドに仰向けに寝てもらい、衣服を胸まで上げて頂く。
その
胸部の電極には、全世界共通の色が定められていて、患者様の右側から、赤、黃、緑、茶、黒、紫……と、胸の決められた場所(第4肋間胸骨右縁が『赤』のように……)に、吸盤を付けていく。
閑話になるが、この色と順番には『語呂合わせ』がある。 人それぞれ……だけど、私は『
さて、スタート! 『スタートスイッチ』を押す。
……が!
付けて無かった!
しまった! 両手両足の電極を付けてない!
……本当なら
その後は、右手首に『肢誘導電極・赤』左手首に『同・黃』左足首に『同・緑』を、順不同で装着し、胸部に移る……のが正しい付け方だ。
余談だが、心電図を簡単に説明すると、『肢誘導』で心臓の『縦方向』の異常、『胸部誘導』で心臓の『前方』と『左横方向』の異常を記録する。
因みに心臓の裏側……患者様の内部……の異常を発見する為には、『食道電極』と言う、喉から電極を入れる事もあるが、通常はそこまでの検査は行わない。 心電図で大凡の《おおよそ》異常部位は判るので、より詳しくは、超音波検査やレントゲン、MRI等で精査する事になる。
……さて、全ての電極は付いた。 スタートスイッチを押す。
良かった! ちゃんと記録出来ている!
『肢誘導』で6種類、『胸部誘導』で6種類……合わせて12種類の
緊張で、変な切り方をしないように、慎重に記録紙を切り取り、患者様のファイルに入れて「これを、外来にお持ちになって、結果をお聴きになって下さい」とお伝えした。
……! ……ふと見ると、カーテンの裏に技師長が居て、無音で手を叩いてくれていた。
良かった! 装着順を間違えたのはバレてないぜ!(←悪人) ……と思っていたが、実はしっかり見られていた……。 初めてだからお
昔、何処かで知った『天網恢恢疎にして漏らさず』という言葉が脳裏を
……すみません……今後は気を付けます……。
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