第5話 国家試験

 昼休みが終わり、午後の勤務が始まった。


 外来と、放射線レントゲン科、理学療法リハビリ室、営繕……などに挨拶を済ませ、検査室に戻って来た。


「知ってると思うけど、無資格者は『生理検査』は、まだやれないから、国試の結果が出るまでは、職員ボランティアで練習ね」……と技師長が言った。


 ……国家試験……か……自己採点では、大丈夫だと思うんだけど……。


  

 臨床検査技師の国家試験も他の国家試験と同様、6割以上で合格となる。


 国家試験の翌日、受験した学生が全員集まり、自己採点をした。


 入学式で出会ってからの大親友『近江おうみ 美緒みお』は、8割以上正解(!)していたのを、私は見逃さなかった。


 美緒は、大好きだったお祖父じい様を癌で亡くし、相当な決意を持って『早期発見』が出来る職業である臨床検査技師を目指していた。 ……既に、大病院を受験して合格し、就職も決まっている。


 私は『漫画家』になる夢を諦め切れず、親から「手に職を付ければ30歳までは好きにして良い」と言われ、偶然知った『臨床検査技師』を目指した。 ……出発点から美緒とは心掛けが違っていたんだ。


 ちゃんと臨床検査技師になれたら『デザイナー学院』に通う事も考慮に入れ、一年生の時はレンタルDVD店でアルバイトをしていた。


 ……こんな私だったが、みんなの真剣な姿勢に感化され、授業やレポートに追われ、呑気な気分で居られなくなり、アルバイトは辞めざるを得なかった。


 そして、2年生に進級してからは、心を入れ替え、遅れを取り戻す為、文字通り、夜も寝ずに勉強やレポートを、真剣にやった。


 授業では毎回、採血し合って貧血になりかけたり、尿ハルンに変な反応が出て、エナジードリンクを飲んでしまったのがバレたり……と泣き笑いもあったっけ……。


 私は単語帳を使って覚えるタイプだったので、単語帳があっと言う間にまん丸く繋がった。



 臨床検査技師の国家試験の教科は……


 ・公衆衛生学

 ・関係法規

 ・医学概論

 ・医用工学概論

 ・情報科学概論

 ・検査機器総論

 ・医動物学

 ・病理組織細胞学

 ・検査管理総論

 ・臨床医学総論

 ・臨床検査医学総論

 ・臨床検査総論

 ・臨床生理学

 ・臨床化学

 ・臨床血液学

 ・臨床微生物学

 ・臨床免疫学

 ・放射性同位元素検査技術学


 ……原則として、この全てを理解出来ないと受からない。 ……5択問題なのだが、巧い事、当てずっぽうでは当たらないような作りになっている。


 ぶっちゃけると、私は臨床化学と、微生物学に含まれる薬物は、始めから捨てて、他に掛けていた。←これ内緒!


 ……この判断が吉と出るか凶と出るか……合否発表は、一ヶ月後だ。


 どうか……受かってますように……!

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