はい! 『はるか』です! 新米臨床検査技師の奮闘記
コンロード
第1章『解剖実習』
第1話 病理解剖
私が、
臨床検査技師の養成カリキュラムでは、3年間の校内学習、その
……学校でも『実習』があるが、これは学生同士が尿や血液を採取し合って検査を学ぶので、採血に失敗して腕が青くなろうが、検査の手順を間違えて結果が出なかろうが『ごめんなさい』で済む……が『病院実習』となると話が違う。
何せ、相手は『本当の患者様』だ。 怒らせでもしようものなら、それこそ責任問題になる。
更に実習科目には『解剖実習』がある。
学校では『マウス』や『モルモット』の解剖だが、病院実習では、当然『人体』の解剖見学の実習を行う。
解剖の種類は『病理解剖』と『法医解剖』があり、臨床検査技師が行えるのは、これら『解剖を行う執刀医』の『補助行為』だ。
『法医解剖』は変死された
一方、『病理解剖』は、亡くなられた患者様の『死因』や『治療効果』を調べるのに必要な行為であるが、『ご遺族の承諾』が無いと違法になる。
『人体解剖の見学』は、その日に亡くなられた患者様で行う上に、ご遺族の『剖検許可』が必要となるので予定する事が出来ない。 ある日突然、先輩に告げられ、そのまま、見学実習……を
その日、病院実習を行っていた私と、同じ班の『川崎』君……
(実は、もうひとり、同じ班のメンバーがいたのですが……この件は、前作『臨床検査技師の「はるか」です。』の『第9章
……は、唐突に『これから病理解剖がある』と伝えられ、地階にある『解剖室』でご遺体の到着を待つ事になった。
……正直に打ち明けると、資格を取得する為……とは言え、出来れば立ち合いたくは無かった。 教科書ですら、本当は見たく無い程なのに……。
解剖室は、想像していたより設備が少なかった。
洗面台と大きなステンレス製の台……後はキッチン
……考えてみれば当たり前だ。 ……『解剖』される患者様は、既に『亡くなって』いる。 ……執刀者の衛生的な問題を考慮しなければ、消毒の必要すら無いし、酸素吸入や
無言で、そんな事を考えていたら、ドアがノックされた。
私と川崎君が直立し、返事をすると、先輩の技師さんが入室し……
「……娘さんが泣き付いて離れなくて、
解剖予定の患者様は『くも膜下出血』で救急搬送され、奥様と中学生の娘さんがいらしたそうだ。
……今朝、いつも通リに出社され、お仕事中に急に症状が現れ……そのまま……だったらしい……。
今朝、私はいつも通リ母と共に、父と兄に手を振って送り出してから家を出た。
もし、私が同じ立場……父か兄に『もしも』の事があったら……恐らく冷静では居られないだろう。
……加えて『これから解剖する』……と言われて、すぐに納得できる訳が無い!
……そう思うと……胸が痛かった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます