第4話 子どもと世界との仲介者

R.シュタイナーは、よく「権威」という言葉を使いました。「教師は子どもの権威とならなくてはならない」というのです。


ドイツ語に詳しくないので原文でのニュアンスは分かりませんが、日本語のもつ堅苦しい意味ではなく、「子どもに自然と尊敬される存在であるべきだ」ということではないかと思います。小学生のころに自分が尊敬できる相手から学んでいくことが、とても重要だと言っているのでしょう。


ところで、子どもたちが学校で何を学ぶのかと聞かれたら、皆さんはどんなイメージをもちますか。算数や国語などの教科や人間関係についてなどでしょうか。


確かにそれも間違いではないのですが、それはカテゴリーに分けられた部分でしかありません。もっと大きな視点から表現すると、教師の仕事というのは、子どもたちに生きていく上で必要な社会や世界のことを教えていくということなのです。実際に大人の社会で必要となる事柄を、咀嚼したり翻訳したりして教えていくということです。


そのためには、教師は社会や世界との仲介者にならなければなりません。子どもたちから、「この先生の元で学べば、未知なる世界が分かるようになる」と思ってもらう必要があるということです。それが、シュタイナーのいう「権威」なのだろうと思います。


「子どものころに見上げ、尊敬し、権威にすっかり包み込まれることを学んだ者は、後年になって愛情を注ぎ、同胞たちに幸せをもたらすことができる」ということも、シュタイナーは述べています。


多くの課題を抱える学校に対し、学校だけが教育の場ではないと主張する声を耳にします。もちろん、その通りだと思いますし、私自身も学校が万能だとは考えていません。しかし、子どもにとっては親だけではなく、プロとしての教師が必要なのだと考えさせられます。


私が小学1年生のころに担任した子どもの保護者が、「あのときはお世話になりました。先生のおかげで今があります」と、こちらが恥ずかしくなるような思いを伝えてくれることがあります。それがたとえお世辞であったとしても、小学校の教師は、子どもの一生を左右するのだということを忘れずにいてください。

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