第四話
三人を取り囲んでいる
それが――開戦の合図。
眼前に敵、それも複数という戦況。本来ならば、敵が襲って来るという恐怖から必然的に慌てながら、ストリングにノックを引っ掛けるのだが。
エルフはゆっくりと感触を確かめながら、ノックをストリングに引っ掛かる。
堂々とした姿。
モンスターが見逃すワケもない。スキも、スキだらけ。
二匹のモンスターが、刃がところどころ欠けた
モンスターのことなど頭にないと言わんばかりに、二射目の準備しているエルフっ娘であった。
通せんぼ。
エルフと二匹のモンスターとの間に、短いがサラサラとした金の糸が。長く鈍い黒い棒状の底を右肩に押しあてながら、左手は黒い棒状にある装置を前に押し出すように握り、穴の先端が二匹のモンスターを捉えた瞬間、
襲いかかったモンスターたちの肉体に、細かい、細かい、ナニ? がめり込んだ傷跡から血液を流しながら、痛みから悲鳴をあげ、のたうち回る。
最低最悪の通せんぼ、だった、襲ったモンスターにとって。
この戦況で、ショットガンは最大の効果を発揮していた。
まず、複数の敵に対して同時攻撃が可能という、一対多の戦術を可能としていること。次がもっとも重要な部分――殺さない、で、相手の動きを止め、敵の戦意を長時間失わせていることにあった。
悲鳴というのは敵を殺すよりも、戦意を失わせるには一番、効果的である。
エルフの一射目で頭蓋骨を貫いた一撃は必殺であった。死んだことすら知らずに、射られたモンスターは呆気なく死んだ。周囲に居たモンスターたちに、電気信号並みの速度で恐怖が電波したのは間違いなかった。が、それは一時的に怖気づかせただけ、死者は語らない。
そうなると次にする行動は自ずと決まってくる――敵討ちへと。
人間心理だろうが、動物心理だろうが、それがモンスター心理だろうが、仲間が殺されて怒りを抑えることができる生物の数は少ない。単独行動主義ならありえるが、こと、集団行動主義には無理であった。
武器を持って闘うという、それなりの知能があれば尚更のことである。
結果。
ショットガンの餌食になった。二匹が生殺しの見せしめの刑に。
傷を負って苦しんでいる仲間を目の前にして、突っ込んでくるほどの蛮勇はめったにいない。自分もあの状態になりなくない、痛み、訴える姿。あんな光景を見せられたら、敵の戦意を削ぎ落とすには、充分過ぎた。
棒立ちになっているモンスターの一匹に、エルフの矢が頭蓋骨を、また、居抜き後頭部から地面に倒れた。逃げるか攻撃するか迷いが生じると、発砲音とほぼ同時に無数の鉛玉が肉体に容赦なく食い込んでいく。
「装填」
エルフの的確な弓での狙撃をショットガンで援護射撃していた少女が、突然、エルフに指示すると。
「おっしゃー、まってたぜ! 斬り刻んでやんよぉー、グレムリンどもぉー!」
後方で正確にモンスターの眉間を射抜いていた冷静な狙撃手から、目は据わり口角がニヤリと笑う
そして、
上限に分離したコンポジット・ボウの上部と下部の先端に埋め込まれている
「ギィァァァァーーーーー!!!!!」
と、鉛玉を打ち込まれたグレムリンたちとは、異なった痛々しい悲鳴が……。
指示をした少女は、タクティカルベストの右側にぶら下げているホルダーを開くと。一列に四個、少女の手のひらサイズの筒が、一部メッキされた部分、上を向くようにして規則正しく整列させられていた。開いた外側に三列、内側に三列、上中下と段になるように収納されていた。
メッキ部分を指先で確認しながらホルダーから筒を取り出し、ローディングポートから二回滑らしながら
「装填完了!」
「ワタシに当てんなよ、パスカ!」
「アンフィこそ、射線を意識しなさいよ! 散弾なんだから」
「パスカ。お前の腕は、その程度か?」
「脳筋エルフ。私の腕、知りたいの」
二人の少女が、皮肉交じりのやり取りとりをしながら、過激な戦闘している一方――――二人とは対照的でありながらも、異質で過激な戦闘が行われていた。
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