神神の微笑。幻談都市

八五三(はちごさん)

第零話

 歩いていた、一人の少年がダボダボパーカーを着て。

 そして、

 頭のうえでフサフサした二つの物体が、少年の歩行に合わせてピョコピョコと動いていた。

 それは、

 少年のしているヘッドホンの上部に装着されている――イノシシの子ども、“うり坊”の愛らしい耳、だった。

 これを製作した人物は遊び心に溢れ、今でも子ども心を忘れず持ち続けている純真無垢な大人。

 なお、

 工業意匠デザイナーとしての誇りからカラーリングは、くすんだ黒や茶色のシマシマ模様仕様。

 特徴てんこ盛りヘッドホンから漏れる壮大で旋律な曲、

 『ヴォルフガングアマデウス.モーツァルト作曲――レクイエム 二短調 K.626』。

 だが、

 繰り返し、繰り返し、リピートされ聴こえてくるのは――――『怒りの日ディエス・イレ』。

 だけだった。

 そんな、

 変わった少年が居る場所は、もっと変わっていた。

 そこは、

 毎日が怪談の大安売りで、有名な幻談げんたん都市。

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