周りから見た私

@Otian_n

隣人の坂田さん

 朝、愛犬の散歩ついでにゴミ捨てに行くと知り合いの高校生に会った。

「おはようございます」

「あら、おはよう雪ちゃん」

 小さい頃から見てきた、近所に住む雪ちゃん。ここ数年は、少し塞ぎがちで、少し怯えた表情をしていたなぁ。

「少し前から、高校生になったのかしら?ふふっ、とても似合っていて可愛いわ」

「ありがとう。坂田おばさんに、そう言ってもらえると少し自信がつく」

 私は、彼女を褒めてその返答に心の中で感動と驚きをおぼえた。

 彼女が、中学生に上がったときは心の底から褒めに褒めちぎったのだが、少し暗く微笑んでありがとう、と返すばかりだった。少し人を疑うように。

「おばさんは今日も、メイちゃんの散歩?」

「うん、そうよ。久しぶりに触るかい?」

 彼女は少し目を見開き、微笑みを浮かべ首をたてにふった。メイちゃんに触るのいつぶりだろうなぁ、と呟きながら。

「お〜、よしよし、メイちゃんも大きくなったねぇ」

 それは、あなたも同じよと私も笑いながら返す。まだ、喋ることもままならない頃の雪ちゃんを思い出して少し目尻が熱くなる。

「その、制服…近くの神崎高校にしたのね。」

「うん、そうだよ。徒歩圏内だし、制服も可愛いし。」

 こちらに向かって、奈々ちゃんもいるし、と付け足しながら笑う。

 本当に変わったわね。いいや、昔のように戻ったというべきなのかしら。

「奈々ちゃんもいるなら高校は楽しくなりそうね」

 彼女は、大きく頷き嬉しそうにしている。

 奈々ちゃんは、幼稚園来の彼女の幼馴染。昔から彼女の側にいつもいる。何かから、彼女を守るように。そんな二人が、微笑ましかったなぁ、と思い出す。

「最近は、奈々ちゃん見かけなかったわね」

「中学は、奈々ちゃんの家の方だったからね〜」

 メイから手を離し、「よし!」と言いながら満足そうに彼女が立ち上がる。

 もうそろそろ、奈々ちゃんが来る時間らしい。荷物を取りに一度家に戻るそうだ。

 彼女に、短く別れの言葉を告げお互い自分の向かう方向へ歩き出す。

 メイが先導して、いつもの散歩のルートを進む。

 ふと、思い出す。小学生の頃、彼女はとても強い子で、不思議な子だったなぁと。

 あれは、私が狭い道を通ろうとしていた時、数人の青年が道を塞いでいた。少し遠回りすればいいかと私が振り返ると。彼女が立っており、青年の方に歩いていき、少し強面のお兄さんにも臆せず、

「道の邪魔だからどいてほしい」

 幸い、青年達は強面なだけの優しい人たちで頭を下げ道を空けてくれた。

 私は、彼らに感謝を述べつつ、一緒に通った彼女に、

「ありがとう、雪ちゃん。でも、なんであんなことしたの?怖い人たちだったら、どうしたの?」

 ほんの少しきつく聞こえてしまうような声音で聞いた、

「だって、お兄さんたちとても優しい人だもん」

「話したことはあるのかい?」

 ううん。と彼女は、否定する。

「でも、優しい人だよ」

「なんで、そんなこと分かるんだい?」

「んふふ、ないしょっ!」

 私は首を傾げ。彼女は笑った。

「まぁ、今度から気をつけなさい」

「はぁーい」

 彼女は、笑いながら答える。

 なぜ、彼達が優しい人だと分かったのかそれは私の知るところでは無い。

 そのあとは、彼女の学校の話を聞きながら、一緒に帰った。

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