幻想短編集

はる

月と機関車

 ラピスラズリの原石がひとつ、タイプライタァの隣に転がっていました。

 車掌さんはまだ年若く、車窓の外に広がる薄青い薄の原を感傷的な気持ちで眺めながら、石を弄んでおりました。

 美しいセキセイインコが一羽、彼の肩に留まり、羽を震わせました。

 彼が懐からルビィを取り出し、ラピスラズリに近づけ、小さくぶっつけると、それらはりんと可愛らしい音をたてました。

 月が出ています。堅い、舐めるとハッカのお味がしそうな下弦の月です。

 車窓さんは月に二つの石をはめ込み、業務に戻りました。カタカタと機関車が揺れる音だけが響いています。

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