第30話 サマキ洞窟

 翌日、俺たちはサマキ洞窟に向かった。


 サマキの町から数分歩いた所に洞窟はあった。

 中に入る。薄暗いため、魔法を使って光を灯す。


 目的はサマキキノコの収穫。


 サマキキノコは、低級魔力ポーションの材料になるため、結構需要が高い。

 不思議と魔物が多くいる危険な場所にしか生えないので、よく冒険者ギルドの依頼が出されるようだ。


「キノコはどこにあるにゃん?」


 レーニャがキョロキョロと、洞窟内を見回しながら尋ねてきた。


「奥の方にあるらしいから、この辺にはないよ」

「そうだったのにゃー」


 レーニャは探すのをやめる。


 とそこで、魔物が出てきた。


 コボルド、犬の姿の魔物だ。強さはゴブリンとほぼ互角。つまり雑魚だ。

 3体出てきた。飛びかかって来たので、俺は剣を抜きあっさりと斬り殺す。


 この依頼のランクはD。

 あまり難しい依頼ではない。

 まあ、コボルドはこの洞窟では最弱の敵だろうけど、1番強い奴でも、それほど強いのは出てこないだろうな。


 コボルドの死体を吸収。

 三体で、


 MP6上昇、攻撃力6上昇、速さ6上昇、スキルポイント6獲得。


 HPと防御力は相変わらず上がらない。

 今度は依頼と関係なしに、一回そこそこの難易度の場所に行って、強い魔物を倒してみて、強い魔物なら上がるかどうか試してみたいな。


 俺たちは奥に進む。思ったより魔物は少なく、最初の三体以降、倒した魔物はスライム2体だけだ。


「だいぶ奥まで来たのう。そろそろキノコがあるかもしれん」


 メクがそう言って来た。


「そうだな。こっからは探しながら歩くか」


 俺たちは周りを注視しながら歩く。


 すると、俺は何かが埋まっているのを発見する。

 キノコか? いや、違う……箱みたいな……


 掘り起こしてみると、


「これ、宝箱か?」


 宝の入ってそうな箱が掘り起こされた。


「ぬ? 確かに宝箱のように見えるが、ミミックの可能性もあるのう。慎重に開けるのじゃ」

「分かった」

「何が入ってるのかにゃー」


 俺は箱を開けようとする。

 鍵がかかっているな。


「鍵がかかってるなら本物かものう。力尽くで開けられるか?」

「試してみる」


 俺は力を込めて宝箱を開けようとする。


 俺は力を込めて開けると、ガシャン! と壊れたような音がして、宝箱が開いた。


 中には赤い色の宝石みたいなのが入っていた。


「これなんだろ? 高いのかな?」

「スキル石じゃな。なんのスキルかは見ただけでは分からぬが」

「スキル石って?」

「スキル石を持って、スキル習得と念じれば、習得に必要なスキルポイントがある場合、スキルを獲得できるのじゃ。石によって獲得出来るスキルは違っておる。こうやって宝箱から発掘したり、魔物を倒す事で稀に入手出来るのじゃ。もっとも弱い魔物からは入手できんがの。有用なスキルを習得できるスキル石は高値で取引されておる。もっとも、そういうスキルは自分で習得すべきだとわしは思うがのう」


 本来、スキル習得はこの石を使って行うみたいだ。


 前から聞きたかった疑問が晴れたな。


「せっかくだし売らずに習得してみるか。俺は死体吸収があるからスキルの習得は割と簡単にできるし、メクかレーニャが習得してよ」

「わしはこの体でスキル習得などできん。レーニャが習得するのじゃ。お主、持っているスキルほとんどなかったじゃろ」

「いいのにゃー?」

「うん、レーニャが強くなるのは、俺としても心強いしな」

「分かったにゃー、ありがとにゃー」


 俺はスキル石をレーニャに渡す。


 レーニャはスキル石を持って、しばらくの間、目を瞑る。

 そして、石がパッ! と眩しく光ったと思ったら、石はいつの間にか消えていた。

 スキルを習得したら消えるのだろうか?


「ちゃんと習得できたか?」

「にゃん! ふぃじかるあっぷ? とかってスキルだった」

「【肉体強化フィジカル・アップ】か。なかなか良いスキルじゃな。お主の戦闘スタイルとも、あっておるし。宝箱を見つけられて運が良かったの」

「あの占い師の言うこと聞いてよかったな」


 あの占い師は結構信用できる占い師だったかもしれない。

 まあ、そうなると、それはそれで、俺の右手の刻印に対する不安が高まるが……


「さて、きのこ探し再開しよう」


 俺たちはきのこ探しを再開した。


「あったにゃー」


 レーニャがサマキキノコを見つけて、収穫し持って来た。

 結構簡単に見つかったな。


 サマキキノコとよく似た猛毒のキノコがあるらしいから、鑑定しておく。

 結果、確かにサマキキノコだった。


 それから、収穫を続ける。


 たまに猛毒のキノコがまじってはいたが、生えている量が多かったので、結構簡単に集まった。

 依頼の量は30本で、その数はすぐ集まったのだが、思ったより早く集まったので、それ以上収穫することにした。


 全部で50本収穫。

 30本は依頼で渡して、あとは普通に売ろう。


「集め終わったし、帰るか」

「うにゃー」

「そうじゃな」


 俺たちは洞窟の出口に向かって歩き出し、出口付近まで来た。


 その時、


「!」


 出口付近に何かがいる。


 見たことのない……恐らく魔物だ。


 二足歩行をしており、人型。

 色は全身が赤黒い。

 潜在的な恐怖を煽るような顔、鋭い爪の生えた手、そして、背中には大きな羽が生えている。


 まるで悪魔のような外見をした魔物が、洞窟の入り口を塞ぐように佇んでいた。

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