その“アイ”は何を視る

あいむ

猫の“アイ”

「はぁ~~~~~~~~…疲れた…。」

暗い部屋のドアが開き、電気がパチリとつく。

帰りが遅かったが、今日も酷くお疲れのようだ。

「ハルちゃ~~~~~~~~~~~ん!飼い主は疲れたよ~~~~~~~~!!」

そう言って、帰り着くなりソファで寛ぐボクのお腹にご主人は顔を埋める。

そして、ボクのお腹をスーハ―スーハ―と何度も吸う。

ご主人のことは好きだけど、毎日これではさすがに鬱陶しい。

ボクはたまらず嫌そうに鳴いて逃げようとした。

「はあ…私のこと大好きなくせに、嫌そうに逃げるハルちゃんも可愛くて大好きだよ…。」

嫌がっているのに嬉しそうなご主人は、正直気持ち悪い。

「よし、お腹も空いたしご飯にしよう。ハルちゃんもお腹空いたよね~。」

ご主人はいつも自分のご飯よりもまず、ボクのご飯を用意してくれる。

どんなに疲れていても、そうしてくれるご主人の優しいところが好きだ。

「はい、お待たせ。ご飯どうぞ。」

ご飯を置いたらすぐ自分のご飯を用意してもいいのに、いつもボクが食べ始めたのを確認してから自分のを用意する。

とても優しい飼い主だ。

だからこそ、頑張りすぎてないかなって心配になるときがある。

最近は帰りが遅いし、毎日お酒も飲んでるから特に心配だ。

「まったく…そろそろ本当に人手不足どうにかしてくれないかなぁ…。どこも看護師不足なのはわかってるけど、こう毎日残業だとやってられないよね~。ね~?ハルちゃん?」

ご飯を食べながらそう言うご主人に、ボクは無理しないでと声を掛けることしかできない。

「はあ…今日も可愛い…。」

ボクの言葉は通じていないのかもしれないけど、ボクを見て幸せそうなご主人を見ると少し安心する。

「さてさて、明日も早いことだし、さっさと風呂に入って寝ようかなぁ。」

そういうとご主人は、自分とボクの食べた後の皿を手早く片付け、お風呂へと向かう。

「あ、そういえば明日信用金庫に寄らなきゃ。遅番だし仕事前に行けるかなぁ…。起きられれば行けるかなぁ…。」

いいことを聞いた!

ボクはしっかりと聞いたことを覚えて、翌朝いつもの起床時間にご主人の上に飛び乗って起した。





「白猫」と「看護師」と「金庫」の猫視点

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