「空き缶」と「汗」と「部活」

茹だるような暑さだった。

さっき飲み干したばかりの空き缶のように酷く汗をかいていた。

「あちぃー…」

吐き出すようにつぶやく。

グラウンドで部活をする連中をベンチに座って遠めに見ながら暑さにうなだれていた。

「この暑さの中、よく部活なんてやってられるなぁ…。」

誰に言うでもなくつぶやく。

帰宅部の私には部活なんて無縁な話だ。

「なーにやってんの?」

通りがかった皐月が声を掛けてきた。

「…暑さにうなだれてた。」

「なにそれ。」

皐月は吹き出したように笑う。

「いやぁ、だって暑いんだもん。ジュース一本程度じゃ全然涼めない。」

皐月は私が片手に持っている空き缶を見て「ああね。」と頷いた。

「そういう皐月は何してんの?」

「ん?部活だよ?」

「部活って…美術部じゃん。」

「そ。スケッチ取りに来たの。」

そう言われて皐月がスケッチ道具を一式持っていることに気付く。

「うげぇ。こんな暑い中わざわざ外にスケッチに出なくてもいいのに。」

「うげぇってあんた…仮にも女の子なんだからさ…」

皐月は呆れたように言った。

「女の子でもうげぇくらい言うよ。てか、中の方が冷房あるし絶対涼しいじゃん。」

「…たまにはスケッチ取りに出るのも勉強になるのよ。」

そう言いつつもチラリと運動部が部活している方を見る。

「ははーん…。さては目当ては部活中の杉野だな。」

「え!?ちちち、違うわよ!」

皐月の反応を見て思っていたことを口に出してしまっていたことに気付く。

明らかに動揺している様子からやはりそうらしい。

「へ~。ふ~ん。そ~なんだ~。」

茶化すように言うと皐月はますます赤らめた。

「もう!私のことはいいから、暑いならさっさと帰りなさいよ!」

「はいはーい。そうだ。暑いしジュース奢ってあげるよ。」

そう言いながら近くの自動販売機の方へと向かう。

「え~?別にいいよ。」

「いいからいいから!」

自動販売機まで着くと、お金を入れて「どれがいい?」と皐月に尋ねた。

皐月はお茶を選んでボタンを押した。

ガコンッと下からお茶が出てくる。

それを取ると皐月に手渡した。

冷えていたお茶は手に取って間もなく汗をまとわせ始めた。

「あんまり杉野に夢中になって熱中症にならないようにね!」

「も~!そんなんじゃないから!!」

また茶化すと皐月は顔を真っ赤にして否定した。本当にわかりやすい。

その声を聞きながら少し駆け足で去る。

「じゃあね~。」

振り向きざまにそう告げると、皐月は笑顔で手を振ってくれた。

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