第30話只の八神健です……

 熱い……午後の太陽に照らされて買い物袋をぶら下げながら歩いてアパートに向かっていた、首からぶら下げたタオルで汗を拭う。帰ったらまたシャワー浴びなきゃ、今日何度目だシャワー? それに疲労感も酷い……まぁ……それはね幸せな疲労感だけれども、アパートにつくと更に汗が吹き出して来た。玄関を開けるとトチが出迎えてくれた。

「お前だけか? って事はまだ寝てるんだな……」

 買ってきた物を冷蔵庫に入れると、さっさと素麺を茹でるその間にみょうがを切り海苔をハサミで切っておく、茹で上がり冷水に浸すと3人を起こしに行く。

「はい! 3人とも起きてくださーい!」

「ふぇ!」

「うぅん」

「はっ!」

「たっ健! あっ私……」

「よく寝てたね、素麺茹でたから皆で食べよう! ほら起きた起きた!」

 テーブルに皆で座ると素麺を4人で食べ始めるとヒエが聞いてきた。

「結局さ健は、神気があるから巻き込まれたのね?」

「そうなるね」

「でも昨日の地震は……そう言うレベルじゃないよね師匠?」

「まぁ……地脈と霊脈の交差点のど真ん中に神気を叩き込んだだけだよ」

「「はぁ!?」」

「そんな事したの健!!」

「それじゃあ地震起きて当たり前よ!」

「しょうがないじゃん……やれって大女神様が……」

「やれって……大女神様……」

 そこから新潟駅周辺に起きた出来事を1から説明する事になった……


「それで叩き込んだと?」

「うん」

「馬鹿じゃないの! あんたは……あんたは! 五泉を救ったでしょう? もう良いのよ!」

「そうよ、健は充分に戦った……それなのに……」

「あのさ……ノエって女神知ってるか?」

「ノエ? ヤエ知ってる?」

「人間界で言えば後輩ね、私達から見たらね本当に覚えてないのヒエ? 結構可愛がってたじゃない?」

「そうなの? 何か特徴とか……」

「あ〜やけに真っ赤な傘さしてたな」

「あっ! 思い出した! あの子ね!」

「そっかぁ天界から配属されていたのね、幼女神だったのに」

「見た目は中学生ぐらいになってたよ、そして鬼になってた」

 ビクッ!! 今の俺の言葉でヒエと茉希ちゃんに流れ弾が当たったようだ。この二人1度は『呪い』と化したんだっけ……

「でも解決済み出しね」

「それよりも健……私から提案があるの」

「なに?」

 素麺も食べ終わり、食後の麦茶を飲んでいるときだった。

「新潟の会社を辞めて欲しいの!」

「ブッふぅ!」

「ちょっとあんた何すんのよ!」

 盛大に麦茶を吹き出しヒエに少しブッかけた。

「ごめん! でもさ何で?」

「健の事は信じてる、でも……周りを信用できない! 力は封印されたけど……」

「俺をまた利用する輩が居ると? でもさ力の大半は封印されたんだ、もう大丈夫だよ」

「じゃあ健が新潟まで行けないようにすればいいのね? それなら私が……」

「どうしてそうなるの!?」

「私分かったの! 健が居ないとどうしようもなく不安で正気でいられない!」

「心配しすぎ! 師匠に対して依存し過ぎだよ!」

「でもヤエの言う事もわかるわ……あんたは私達に黙って戦っていた、目の届く範囲に居てくれた方が安心出来る」

 目が怖い、二人共本気だ……でもさ五泉市の就職先って限られてるんだよなぁ、変に工場勤めは向かないし……

「健の収入が減ったところで4人で働いているんだから大丈夫! だからお願い……近くに居て……」

「わかったよ求人サイトを調べてみる、無ければ今まで通り新潟で働くよ良いね?」

「ちゃんと調べてね! あっ! 京子に……」

「それは勘弁してくれないかなぁ……取り敢えず考えておくから!」

「うっふふふ……そうは行かないわよ……善は急げよ、さあ立って! 市役所へ行くわよ!」

「それも良いかもね?」

「じゃあアタシ電話しとくね!」

「ちょっとまってくれ!?」

「私達に隠し事してたアンタが悪いのよ!」

「いや今日熱いしもう出たくないし……」

「キョーコはオッケーだってさ!」

「じゃあタクシー呼ぶわ」

「ヤエ!?」

「お願いねヤエ、私達もう汗かきたく無いから」


そして……


「ここは職安じゃないんですよ? 八神さん」

「はい……分かってます……でも」

 市役所の小さな座敷で、お腹が大きくなった塚田さんに、これまでの経緯を説明した後に言われた。

「お願い京子! さっきも説明したけど健は、ほっとくとやらかすのよ」

「やらかすって地震の事ですか?」

「そうよ、それに……もし……また……死ぬような事まで」

「あっ……そうですね、でも……もう力は封印されて只の人間何ですよね?」

 塚田さんは何か考え込んでいる様だ、どうかとんでもない事を言わない事を祈っていると

「まぁ非公式ではありますが、この市を救った恩人ですしね……」

「いや、そう言うコネみたいなので……」

「お願いキョーコ! 師匠を!」

「まぁ心当たりを……少し当たって見ます、もしかすると……期待しないで下さいよ?」

「まっまぁ……お願いします」

「やったね! 少し前進だよヤエ!」

 どうしても、塚田さんやコイツらには逆らえない……弱いオトコナンデス俺は……

「それにしても塚田さん随分と目立つ様になりましたね」

「はい! なにせ双子ですから」

「そうだったんですか! おめでとうございます!」

「ねぇちょっとだけ触らせて!」

「私も!」

「ついでにアタシも!」

「少し胎動を感じるんです私にしか分からない位に……」

「それでも良いの! 新しい命が産まれている、それだけでも感じてみたい」

 塚田さんは3人に優しく微笑むと。

「八神さんは出て行ってくださいね?」

 俺に対しては顔が笑ってないんだよなぁ塚田さん……まっ良いけど

「じゃあごゆっくりどーぞ、俺はロビーで待ってるから」

「わかった!」


 ロビーで缶コーヒーを飲んでいると、これからについて考える。仕事の事、彼女達との関係……それに封印された力、これで俺はめでたく? 普通に暮らす事ができる、あとどれだけ人として生きていけるのか……暫くすると恍惚とした表情で3人が帰ってきた、何があったのやら……

「満足したかい?」

「何だかホッコリした……幸せそうで……」

「そりゃ良かった、帰ろっか?」

「帰りは私の仕事場によって行って良いかな? 迷惑かけちゃったし……」

「アタシとヒエも行くよ、もちろん行くよね師匠?」

「もちろん! 原因はある意味俺だからね」

「歩き?」

「歩いて行こうか4人でさ」

「熱いの嫌だ〜」

「ヒエ様の為に帰ったらアイス買ってあるから」

「う〜っ、わかったわよ」

「じゃあ行きましょう!」

 さっさと行ってちゃんと挨拶しなきゃな!

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