419.異世界のファミリーレストラン


「いらっしゃいませー。二名様でよろしいでしょうかー」


 軽快な店内BGMに覆い被さるように、女性店員の大きな挨拶が通っていく。


 本当に何気ないけれど、心に突き刺さる一声だった。

 二つの世界で食べ物関係のアルバイトを経験したからこそ、ちょっとしたイントネーションの違いが感慨深い。緩やかな郷愁に包まれつつ、久しぶりの応答をしていく。


「はい。二人で、あそこの席でお願いします」

「二名様、ご案内致しますー」


 人目につきにくい場所を要望すると、チェーン店特有の事務的な流れ作業が始まった。

 その定型文からは『異世界』の日常ではなく、『元の世界』の日常が強く感じられて嬉しい。


 席まで案内する店員さんの背中を、僕は頬を緩めて見つめていた。自分で自分を怪しいやつだと思ったが、それ以上に挙動不審な少女が僕の隣にいる。


「な、なんぞこれぇ……」


 クウネルは入店と同時に、目を見開いていた。

 まず空調による店内の暖かさに立ち止まった。

 鳴り響くBGMの奇抜さに耳をそばだて、内装の異質さを見回しながら歩き出す。


 僕にとっては何気ない店でも、彼女にとっては一つ一つが新しくて鮮やかなのだろう。

 圧倒的な『新鮮さ』に、打ちのめされていた。


 とてとてと歩くクウネルは、いまにも転びそうで心配だったが、なんとか四人用テーブル席まで辿りつく。

 そして、店員さんは「ご注文がお決まりになりましたら、そちらの呼び出しボタンを押してください」という定型文を残してから、静かに去っていく。


 僕たちは向かい合う形で、薄いベージュの綺麗なシートが張られた席に着いた。

 テーブルに二つあるメニューを取って、片方をクウネルに手渡す。


「はい、メニュー。何でも選んでいいよ」


 ここは僕の奢りだからと、少し得意げに伝えてみる。

 ただ、クウネルはタダ食いできることより、手渡されたメニューの内容に愕然としていた。

 その多様な品目と彩り豊かな写真は、彼女にとって一呼吸必要な大事件だった。


「え……? これを、いまから食べられるんです?」

「こういうのは大抵、多めに見えるように撮ってあるけど、ほぼ同じのが来るよ。そんなに値段もしないから安心して」

「そんなに値段もしない……のに、どれも美味しそうです。いや、美味しそうなことよりも、こんなに種類が……」

「慢性的に毒で悩んでるそっちと違って、こっちは農耕しやすいんだ。おかげで、必然と食のレベルは高まってて、このレベルのものを気軽に食べれるんだよ」

「なるほど……。なる……、ほど?」


 その端的過ぎる説明にクウネルは震えて、頷く。

 時代の進み具合や日本の風土について僕が説明を省いたせいで、明らかに納得し切れていない様子だった。


 一向に料理を選んでくれる気配がない。

 なので、仕方なく、異世界冒険譚の最終奥義を伝授する。


「クウネル、異世界移動の先輩からの助言だ。とりあえず、全てのものの頭に「『異世界』の」って付けておいたら、なんとなく納得できる。……ほんと、色々と楽になるからおすすめ」


 冗談ではなく、この心の整理ができなければ、『異世界』での生活は難しいだろう。


「は、はい……。い、『異世界』の……! これがっ、『異世界』のっ、レストラン!!」


 その僕のおすすめを、素直にクウネルは受け入れる。

 自分に「『異世界』なんだからそういうもの! そういうものやでぇ!」と言い聞かせ続けることで、頭で渦巻く『混乱』を徐々に収めていく。


「そう。『異世界』のレストランなんだから、こういうものなんだよ。このくらいが普通なんだ。正直、一つずつ疑ってちゃ、日が暮れる」

「『異世界』のレストランすっげぇーーー! まじすんごい! じゃあ、あてはこれとこれとこれと――」


 僕の意図を読んだクウネルは、一旦考えるのを止めて、食事を堪能すると決めてくれたようだ。


 この最終奥義は色々と問題を残す。

 だが、迷い込んだ最初はこうして楽しむのがいいだろう。なにより、僕が彼女の笑顔を見ていたかった。


 クウネルは目についた気になるものを、次々「これっ、これっ」と指差していく。

 子供のように興奮し切った彼女は、中々に騒がしい。

 ただ、周囲を見れば、家族で来店しているお客さんをちらほら見かける。

 中には、元気な子供が、クウネルと同じくらいの声をあげているので、僕たちが目立つことはなかった。


 ファミレスを選んだのは偶々だったが、もしかしたら『異世界』で最初のお店として最適解だったのかもしれない。


「――あと、これとこれとこれ! 会長っ、本当に全部頼んでもいいんで!?」

「全部いいよ。一応、今日はご褒美って話だからね。あとで取り立てとかもしない」

「あざーーーーっす!! いーーやったあああーーーー!!」


 後輩らしいお礼を口にして、クウネルは「流石、会長。太っ腹やでぇ」と胡麻すりを忘れずにしていく。


 これだけ喜ばれると、自然と僕も嬉しくなってくる。

 早くクウネルに異世界文化の料理を食べさせてやりたいと思い、インターフォンに手を伸ばす。そのとき、彼女は一つ言い足す。


「……ただ、会長。ご褒美は、あてだけじゃなくて会長もですよ?」


 これまでの子供のようなテンションと打って変わり、まるで母親のように穏やかな声だった。

 その急変に少し戸惑いながらも、問い返す。


「僕も?」

「会長も久しぶりなんでしょう? こちらの食事が」

「え、ああ……。うん、そうだね。その通りだ」


 あれだけ興奮しておきながら、クウネルは僕の頬の緩みをしっかりと確認していたようだ。どんな状況でも油断なく情報収集しているのは、彼女の豊富な人生経験からくる処世術の一つだろう。


 クウネルは僕も内心浮かれていることを完全に見抜いて、一緒に食事を堪能することを提案していく。


「他でもない会長が、会長自身に・・・・・、ちゃんとご褒美をあげてください。そうしてくれないと、あてがゆっくり楽しめませんからー」

「そっか。なら、そうさせて貰おうかな。それじゃあ、様子見で……」


 単品で気軽に摘めるフライドポテトを目で選び、僕はドリンクバーを二人分頼むことを決める。


 はっきり言って、いま自分が欲しい『元の世界』の一品は、炭酸飲料だった。

 サイダーあたりが、無性に飲みたくて堪らない。

 これを最初の自分へのご褒美と決めて、呼び出しボタンを押す。


「ぬ、ぬぉう!?」


 店内に響く機械音を聞いて、びくりとクウネルは肩を跳ねさせた。

 事前知識がなく、魔力的な予兆も一切なかったため、この音を予期できなかったようだ。


 その猫のような仕草が、見ていて微笑ましい。

 しかし、すぐにクウネルは冷静となって、注意深く周囲を見回し始めた。

 間もなく、店員さんが注文を取りにやって来て、僕が次々と品目を伝え終わったところで「そういうことかー。すっげぇ」と、深く何度も頷いていた。


 …………。

 ……本当にクウネルは頭が回る。


 だからこそ、この『元の世界』の脅威を迅速に理解できる。

 ただ、僕からしたら、そっちの『魔石線ライン』のほうが、このインターフォンの何倍も驚きである。


 これは、どちらが優れているという話ではなくて、一長一短の話だろう。

 魔法の世界にしか出来ないことがあれば、科学の世界にしか出来ないこともある。

 という当たり前のことを再確認しつつ、クウネルとドリンクバーに飲み物を取りに行っている内に、頼んだ料理が運ばれてくる。


「――お待たせしましたー」


 並ぶのは、何の変哲もないファミレスのメニュー。

 ハンバーグ、ステーキ、カレー、グラタン、サラダ、ラーメン、パスタ、ポテト、パフェなどなど。その中から、まずクウネルはパフェを選び取った。


「これ! まず、これいきます!」


 その選択に、ちょっと女の子らしさを感じる。

 そして、僕は彼女の異世界料理初挑戦を見守りつつ、何気なくフライドポテトを摘まんで、口に含み――瞬間、不意打ちで衝撃を受ける。


「――――っ」


 じゅわりと。

 懐かしい味が広がった。

 熱々のフライドポテトは塩気が強く、油っこい。

 『元の世界』ならではの製法と味だ。ずっと『異世界』の薄味生活を続けていた僕にとって、それは刺激的だった。

 かりっと揚がった外側の衣を歯で砕くと、ほくほくのお芋が崩れていく。舌に乗った瞬間に、脳まで「美味しい」という単純過ぎる信号が届き、噛んで転がす度に深い旨みを感じる。喉を通り、胃に落ちていくまで、ずっと至福だった。


 すぐに用意していたジュースに手を伸ばした。

 サイダーが口内に広がった塩気と油っぽさを纏めて絡み取り、炭酸を弾けさせながら喉を通っていく。こちらの『元の世界』ならではの濃い甘みも含めて、これもまた非常に刺激的だ。飲み乾すと同時に深い溜息が、強制的に出る。


 美味しい。

 ただただ単純に、美味しい。


 ――久しぶり・・・・というだけで、こうもフライドポテトとジュースが『新鮮』なのは、少しだけ驚きだった。


 『セルドラ攻略』に新たな兆しを感じた。

 単純に目新しい異世界料理を食べさせるだけではなく、彼の郷土料理を僕が『過去視』で再現できれば、彼の人生の彩りはさらに増えていくことだろう。


「こ、これがぁ、『異世界』のパフェェエエ……。ああ、甘くて……、甘くてぇ美味しいぃい……! 本当にすごく甘い……! ……ちょっと甘すぎひん?」


 僕と同じく、クウネルも口の中にパフェの生クリームを含み、存分に味わっていた。

 一番楽しみにしていた口に含んだ瞬間を見逃してしまったが、それでも十分に見ていて和む光景だった。


 ただ、気になることに、クウネルは途中で少しずつ眉を顰めて、首を傾げていた。


「甘過ぎる? ……向こうと比べて、砂糖の質が違うのかな? いや、そもそも種類が似ているようで、別物か」


 甘くて美味しいと言ってくれたものの、そこまで気に入ってはくれなかったようだ。

 基本的に味の濃さが、二つの世界では違うのだろう。


「んー、もぐもぐ……。よしっ、次! どうぞ、会長!!」


 クウネルは半分ほど食べたところで、パフェを僕のほうに、すいっと寄越した。

 色々な種類の料理を食べたいのだろうが、その容赦のないパスに少し呆れる。

 なによりも――


「言いにくいけど……、間接キスってわかる?」

「え、わかりますけど……。そういうのを気にする年ですか? あてが不衛生で嫌だと仰るのなら、共有はやめますが……」


 最低限の礼儀が必要と思ったが、彼女は気にしないようだった。

 というより、異世界の文化・風習的に、食事の共有に対するハードルが低いのだろう。

 なので、いま問題があるのは、僕だけだ。


「いや、気にはしてないよ。気にしてなんて、全く」

「ま、まじで気にしてるっ!? ここまで来て、そういうのを気にする会長のメンタルが、あては怖いでぇ……!! 力と経験に比べて、会長の生き方と価値観って、アンバランス過ぎません?」

「いやいや、こういうのが駄目な人は、ずっと駄目なものでしょ。……もちろん、僕は大丈夫だけど」


 本気でクウネルが怖がっていたので、ちょっと強がって、スプーンでパフェの残りを口にしていった。

 彼女が甘すぎると評価したクリームで舌鼓を打つ。


「あ、甘い。そうだ、こんな甘さだった……」


 柔らかなミルクの味わいと共に、クリームが口内で溶けていく。


 それは味覚の器官全体を包むように広がって、じっくりと浸透していった。

 舌の芯まで届く甘みが、全身から力みを奪う。いまにもスプーンを落としそうになるほどだ。クリームを呑み込んで、一息つくと、鼻の奥まで甘い匂いが通り抜けた。

 眩むような幸福感。

 僕にとっては、丁度いい甘さだった。


 しかし、本当に驚きだ。

 この身体が『元の世界』の料理を摂取したのが千年ぶりとはいえ、まだ体感的には数年程度だ。

 正直、ここまでの感動は、予期していなかった。


 懐かしさと甘さを、味わいに味わったあと、僕は二口を求めて、スプーンを動かそうとする。

 今度はクリームだけじゃなくて、果実やフレークと一緒だ。

 だが、その前にクウネルが、二品目の感想を叫ぶ。


「む、むむっ!? こっちは、口に合いますね! 当たりです! ……すっごい! なんかすっごい!」


 クウネルがチョコレートケーキを頬張り、大絶賛していた。


「へえ、ちょっと意外だ。向こうにチョコはなかったからね。気分が悪くなるかもしれないって、正直思ってた」

「このふわふわで甘いのに、木の実のような風味……? 風味が、とても安心できます。こっちはナッツ系の料理が多いからでしょうかねー」

「もしかしたら、カカオと同じ木の実が、異世界を探せばあったのかな?」


 余裕があれば見つけ出して、向こうでチョコ文化を広めるのも楽しいかもしれない。

 そう思案していると、クウネルは二口でケーキを食べ切り、僕の何倍も大きな一息をつく。


「っふうー! おいっしーーー!」


 彼女も鼻腔を満たす匂いに、幸せを感じているようだ。

 その緩みきった顔から窺える。


 そして、先にデザートを平らげたクウネルは、三品目の料理である汁物スープに手を伸ばす。

 その順番に性格が出ていると思いながら、様子を見守る。


「む? 逆に……、この本場のお味噌汁。これは、ちょっときついですね」


 器用にお椀を持ち、クウネルは味噌汁を啜る(千年前の僕が広めたので、クウネルは箸も使える)。けれど、一口だけで終わってしまっていた。


「え、お味噌汁が駄目なの? すごく暖かくて、落ち着く味なのに」

「濃いです。つんと来ます。なんだか……、不安になります」

「そんな馬鹿な」


 パフェを放置して、僕は味噌汁に手を出す。


 そして、口に広がっていくのは、日本人として慣れ親しんだ最高の味。

 パフェのあとというハンデもあり、食べ合わせが悪いと思ったが、そんな常識を覆す絶対的な安定感が、その汁物スープにはあった。


「あぁ……、すごい落ち着く。アイドのおかげで味噌汁は広まっていたけど、やっぱり日本の味噌がいいね。ちょっとした違いが、身体に沁みる……」


 クウネルの評価点は悪くとも、僕にとって味噌汁は最高点数だった。

 味噌汁が悪いのではなく、好みが違うだけとわかり、安心する。


 その間、クウネルは四品目のステーキに取り掛かっていた。

 鋭い歯でお肉を噛み千切り、行儀悪くも食べつつ喋る。


「んーむむー? 肉の質は、さほど変わりませんが、調味料がいい感じですね! いや、調理法の問題でしょうか? ええっと、このお肉は……そういえば、食用可能なモンスター肉は、こちらに全くないってことですよね?」


 クウネルはメニューを広げて、読みながらお肉を堪能する。

 その集中力の散漫具合から、余りステーキの点数は高くないようだ。


「ないね。けど、代わりに鳥・豚・魚とか、色々と食べられるよ。ほら」


 肉の種類が悪いのかと思い、メニューに描かれた写真を指差していく。


「あ、これ。全部肉の種類が違うんやね。流通が優秀ゆえかあ。じゃあ――」


 全て同じ種類の肉かと思っていたようだ。

 勘違いを正したクウネルは、向こうの『異世界』では種類が少ない豚肉の追加注文を求める。

 そして、また店員を呼ぶために、呼び出しボタンを僕が押そうとして――


「会長! それ、押させてください!!」


 気持ちはわかる。

 向こうにいる家族客の子供が、全く同じ主張をしているのが、僕の耳には届いている。


 初めての経験とあれば、その要望は仕方ないことだ。

 僕がやり方を教えると、嬉々としてクウネルは「ぽちっとな」と口にしつつ、力強く押した。


「へっへっへー」


 そして、にやけ顔と共に、身体を左右に振って、遠くからやってくる店員を待ち、到着と同時に「これくださいなー!」と満面の笑顔で注文した。

 その姿を店員さんは微笑ましそうに見て、了承して、立ち去っていく。


「よし! 新しい肉を待ってる間に、いまあるお肉系を全部確かめるぞぉ!」


 テーブルの上にあるハンバーグや照り焼きなどに手を出していっては、低評価の料理が僕まで回ってくる(クウネルは食べる前に、きちんと切り分けるようにしてくれていた。しかし、それでも食事の共有は……少し恥ずかしい。そういう性分なのだ)。


 もう食べかけのパフェは後回しだ。

 甘いのは少し苦手というのもあるが、単純にデザートは最後がいい。

 本格的に食べるつもりはなかったが、食欲旺盛なクウネルの姿に釣られて、いま、今日一日の食事を摂ることを心に決める。


「来たー!!」


 自分で呼び出しボタンを押して、自分で注文をして、自分で受け取るというのが、クウネルは嬉しいのだろう。

 大喜びで料理を受け取り、比例して彼女を眺める店員さんの和みも最高潮まで達していく。


 ティーダの仮面の力も合わさって、いまのクウネルの姿は完璧に子供そのものだった。

 その仕草も含めて、彼女が百歳を超えるお婆ちゃんだとは、誰にもわからないだろう。


 事実、いま僕もクウネルが老獪な為政者であることを失念しかけている。

 それほどまでに、彼女が多様な食事を美味しそうに、ばくばくと食べていく姿は可愛らしかった。


 一緒に食事をするのに、これほど嬉しくて安らげる相手はいないと確信――させられている・・・・・・・


 間違いなく、これがクウネル・クロニクル・シュルス・レギア・イングリッドという吸血種の一番の武器だ。

 一度、似た武器でラグネのやつに攻撃された経験があるので、彼女の狙いもわかる。


 わかる、けれど……。

 いまだけは、その武器にあえて身を晒し、この時間を楽しもうと思う。


 ――この『元の世界』の料理一つ一つには、思い出が詰まっている。


 かつての引き篭もり時代。僕はレトルトのカレーやラーメンを好んで食べていた。

 当時、ジャンクフードに嵌っていたのを、目の前の実物を見ていると思い出す。


 陽滝は食が細くて、いつもサラダばっかり食べていた気がする。

 いや、あれは演技か。食べようと思えば、いくらでも食べられただろう。

 きっと、その余裕と必要がなかっただけだ。


 比べて、両親は大食漢で、高そうなステーキばかり食べていたのが印象的だった。

 あの高級マンションで生活していたときは、豪華絢爛な食事が毎日並んでいたものだ。


 ただ、いま両親は刑務所にいるだろうから、かなり質素な食事になっているはずだ。

 変なプライドで食べるのを嫌がってないかと、少し心配になる。

 ああ、本当に懐かしい。

 早く両親と会って――



「――会わないほうが・・・・・・・いいです・・・・



 途中、対面のクウネルが、刃物のような一言を刺した。

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