201.新パーティー


 六十層の守護者ガーディアンの登場により大混乱に陥った僕だったが、一晩かけてなんとか冷静を取り戻すことはできた。

 そして、次の迷宮探索に向けて身体を休め、次の日の朝――

 

「おはようございます、渦波様」

「――っ!?」


 目を開けると、鼻と鼻が触れ合うほどの距離にノスフィーがいた。

 その近すぎる距離に悲鳴をあげかけたが、何とかそれを呑み込む。少しでも動けば唇と唇が触れ合いそうだったからだ。


「……お、おはよう、ノスフィー」


 震える声で挨拶を返すと、それをノスフィーは笑顔で受け止め、そのままの距離で答える。


「僭越ながら朝食の用意をさせて頂きました」


 眼球だけを動かすことで、自室のテーブルに朝食が並んでいるのを見つける。どうやら、僕のためにノスフィーが用意してくれたようだ。


「ありがとう。いま起きるから、そこをどいてくれないかな……?」

「ああ、これは失礼致しました」


 その言葉も笑顔で受け止め、ノスフィーは僕から離れていく。

 ようやく身を起こすことができ、朝食の内容がはっきりとわかる。丁寧に切り分けられたパン、赤と緑の野菜で彩られた暖かいスープ、蒸した鶏肉を和えたサラダ、木製のコップになみなみと注がれた果実水。

 間違いなくロード一人では作れそうにない豪華な食事だ。


 驚きで言葉を失う。

 驚いたのはその料理の豪華さにではなく、僕が寝ている間にこれだけの料理を並べたという隠密性の高さだ。これでも人一倍神経は過敏なほうだ。異世界に来てから、寝ていながらも常に注意は払っている。


 だというのに、その僕のすぐ傍で朝食のフルコースを揃え、その上で鼻と鼻がつく距離まで近寄られた。

 おそらく、寝ている僕を労わって、起こさないように用意してくれたのだろうが、その行為から感じるのは恐怖しかない。


「渦波様、お気に召しませんでしたか……?」


 僕の機嫌を窺うノスフィー――彼女の底知れない実力に寒気を覚える。

 彼女もまた、ロードクラスの実力者であるのは間違いなかった。


「い、いや、すごく豪華で驚いただけだよ。ありがとう、ノスフィー」

「はあ、安心しました。よかったです。お口に合えばいいのですが……。では、こちらへ座ってくださいませ」


 ノスフィーは僕を中央のテーブルに誘う。その妙に断りづらい迫力に負けて、言われるがままに座る。そして、そのボクの対面にノスフィーは座り、無駄のない動きでスプーンでスープをすくって僕のほうへと差し出した。


「ではどうぞ、渦波様」

「…………」


 ど、どうしろと……。

 このまま、そのスプーンをあーんと咥えろと言うのだろうか。

 別に悪いことをしているわけではないはずなのに、何かしらの罪悪が溜まっていく錯覚がした。こういうことに目端の利くスキルたちは、どれも「まじでやめとけ」と注意を喚起している。

 幾度となく助けてくれたスキルたちを信じて、逃げの一手を打つ。


「ちょ、朝食の前にライナーを起こさないと……! あとせっかくだからロードも呼ぼうか……!? やっぱり、食事はみんなで食べるほうが美味しいからね……!」

「……そうですね。ええ、せっかくですからね」


 言葉は同意してるものの、ノスフィーが不満を抱いているのは間違いなかった。宙に持ち上げていたスプーンをスープの皿へと戻し、少しだけ笑顔を歪ませた。


「じゃ、じゃあ、ノスフィーはロード呼んできてよ。僕はそこのライナー起こしてるから」

「はい、すぐに呼んできますね」


 ノスフィーが僕の部屋から出て行く。 

 それを確認したあと、すぐに部屋の隅にあるベッドに近づく。そこには目を瞑ったライナーが寝転がっていた。

 その頭を容赦なく両手で掴みにかかる。


「ライナー、なんで起きない……!?」


 しかし、僕の両手はライナーの両手によって阻まれてしまう。


「――お、起きれるか!」


 やっぱり、こいつ狸寝入りしてやがった……!

 目を覚ましたライナーは、僕と同じくらい必死に反論する。


「いまの空気に入れるか……! ああいうのは駄目だっ、苦手だっ! 雑用とか殺し合いになったら呼んでくれ! それなら喜んで犠牲になるから!」


 先ほどの甘ったるいようで実は胃に悪い空気は、ライナーの苦手分野だったようだ。

 だがそれは僕も同じだ。だからこそ、殺し合いなんて楽なときよりも、いまみたいなときに助けが欲しい。


「仲間だろ! 困っているときこそ助け合いだろ!?」

「僕だって、そのつもりだったけどさ……。あの子だけは駄目だっ。二人の邪魔をしたら酷い目に遭うような気がした! なんか怖いんだよ、あいつ! ちっこい見た目だけど、中身はドSな感じがする……! 正直、関わりたくない……!!」


 僕の両腕を押し返しながら、ライナーは正直に自分の内情を吐露した。

 その気持ちはわかる。その評価には僕も同意だ。

 しかし、同意だからこそ、ライナーに何とかして欲しい……!


「いや、そんなことないだろ……? ノスフィー、どこからどう見ても滅茶苦茶優しそうな女の子だろ……? だから、もっとおまえもノスフィーと話せっ――僕の代わりに!」

「キリストっ、《ディメンション》で自分の顔を見てみろ! 滅茶苦茶優しい女の子の話をしてる顔じゃないぞ!」


 ふと自分の顔を《ディメンション》で見る。

 とても懐かしい表情が張りついていた。

 かつて、リヴィングレジェンド号という閉鎖空間で仲間たちと旅していたときと同じ表情だ。


「は、ははっ……。こ、これが僕の普通だし……」


 震え声で、これが自分の平常デフォルトであったことを主張する。

 思えば、ここ数日は胃に優しい毎日だった。

 本来の自分を忘却できるほど、本当に安らかな日々だった……。


「普通? その汗一杯の顔がか?」

「ああ。ここ数日忘れられていたけど、僕の異世界生活はこれが普通だったんだ。日常だったんだよ、ライナー……」

「……そ、そうか。それが日常なら、キリスト一人でも大丈夫だよな。よし、ノスフィーの相手はキリストに任せた」

「大丈夫じゃないから言ってるんだろ……! 頼むから、僕とノスフィーの間に入って緩衝材になってくれ……!」

「緩衝材!? それ、僕潰されてないか!?」

「……正直、安全の保証はできない」

「くぅっ――!!」


 ライナーもまた、懐かしい表情に戻ってきた。

 地上でよく見せていた余裕のない表情――つまり、いつもの顔だ。

 そして、冷や汗を流しながらライナーは決断する。


 ――魔法使用の決断を。


「……や、やっぱり嫌だ! 色男の痴情のもつれに巻き込まれて死ぬとかっ、流石の僕でも嫌だ! 騎士っぽくない! ――《ワインド》ォオ!!」

「逃がすかぁ!! ――魔法《ディフォルト》ォオオ!!」


 譲れない戦いが始まる。

 ライナーは風の力を上手く使って、僕の拘束から抜け出し、部屋の窓へと逃げようとする。しかし、その一手は読み切っている。すぐに次元圧縮の魔法で距離をずらして、逃げるライナーを引き寄せる。そして、また彼の両腕を掴んで筋力の競い合いに戻す。


 『表示』で互いの筋力の数値は把握済みだ。

 単純な押し合いならば僕のほうが有利。

 ああ、このままライナーを道づれにしてやることに何の迷いもない――!


「やらせるか! ――《イクスワインド》!」

「はっ、やはりそうきたか! 僕に一対一の魔法戦で勝てると思うなよ、ライナァアアー!!」


 捕まれた腕を風の魔力で爆発させようとするライナー。だが、その自爆戦法は何度も経験している。《ディメンション》で魔法のタイミングを掴んでいる僕は《イクスワインド》の風が発生するタイミングだけ手を離し――すぐに掴み直す。


「くっ、まじか――! 女泣かせのクズのくせに無駄に強い!!」

「お、女泣かせとか言うなァ! 泣かせた記憶なんてないから! 覚えがないから!!」

「その発言がクズっぽい! ウォーカー家のお嬢様とか泣かしてたのを僕は知ってるぞ!」

「あれはスノウが悪いんだって! それにスノウは泣かしたかもしれないけど、ノスフィーは泣かしてないし! ――たぶんだけど!!」

「責任転嫁に話のすり替え――! 流石、キリストだな!!」


 ライナーが心の底で抱いていた僕の評価に、正直心が折れそうになる。

 しかし、心を強く持ってライナーを逃がさない。


 逃がせば、また胃に穴の空く生活に一人戻ってしまう。それだけは嫌だ。

 もう二度と同じ失敗は繰り返さない。

 船旅生活のときに何度も思ったことだ。

 同性の友達は絶対にいる……! いるんだ……!!


「逃がすかぁ、ライナーァアア――!!」

「僕は逃げる! 逃げるぞ! キリストォオ――!!」


 僕とライナーは、互いに20レベルを超えた存在だ。

 地上ならば『英雄』どころか『化け物』と畏れられる領域に至っているだろう。


 ゆえに、狭い部屋の中の小競り合いとはいえ、激戦に発展する。

 目で追えない速度の掴み技と、高等な体術によるいなしの応酬。超高速の魔法構築が繰り出されれば、超把握による魔法看破のもとに最適な対処がなされる。

 神業が神速で飛び交う。


 情けないことに、この戦いが世界最高レベルであるのは間違いなかった。

 その事実から、妙な空しさと悲しさを感じる。


 だが同時に、妙な安心も感じる。思わぬところでライナーの自己犠牲精神が緩和されている。けど、こんなことでライナーの成長は感じたくはなかった。

 もっとかっこいい場面――例えば、迷宮探索で強敵と戦ってピンチのときとかがよかった。


 そして、風の騎士と次元の魔法使いの戦いが佳境に入りかけたところで、

 

「いやぁー、はっはー! お呼ばれされたよー! お呼ばれされたから、仕方なく来たよー! わらわだよー!!」


 バンッと扉が開かれ、ロードが部屋に入ってくる。

 第三者の介入により、世界最高レベルの戦いは一時中断される。僕とライナーは取っ組み合いのまま、ぴたりと制止した。


「ロードを連れてきました。というより、わたくしたちを待っていたのか、すぐそこの庭に居ました」


 続いてノスフィーが帰ってくる。


「ん、んー? あれ? ライナー、どこ行くの?」


 いまにも窓から出ようとしていたライナーにロードが問いかける。


「いや……、元夫婦って話らしいし、空気を読んで僕は席を外そうかなって……」


 ライナーは逃げるための言い訳を始める。しかし、そうはさせまいと、彼の両腕を握り締めながら追い詰めにかかる。


「遠慮するな、ライナー……! 僕はおまえと朝食を食べたいんだ、誰よりもおまえとな……!」

「いいや、キリストこそ無駄な気遣いはするな……! こっちは一人で十分だっ、一人で……!」

「そう言うな……! 僕たちは仲間だろ、仲間ぁ……!」


 過去最大の握力を発揮して、逃げようとするライナーの腕を絶対に離さない僕だった。

 そこにロードの素朴な意見が入る。


「んー……、ライナーも一緒に食べようよ? わらわが来ちゃったせいで、もう元夫婦だけって無理だしね」

「くっ」


 咄嗟の言い訳を潰されてしまい、ライナーは渋々と力を抜く。

 気が変わらない内に、僕はライナーを中央のテーブルに誘う。

 それを見たロードも笑顔でテーブルについた。


「うん! それじゃあ、みんなで食べよっかー!」


 こうして、守護者ガーディアン二人を交えた朝食が始まる。

 量のほうの心配は全くいらなかった。僕がおかわりしても対応できるように、元から四人前近くあったらしい。

 テーブルへ豪華な朝食が並べられ、各々が口に食べ物を運び出す。


「渦波様、お味のほうはどうですか?」 


 流石にライナーやロードの前で「あーん」はやめたものの、肌と肌が密着する距離で味の感想を聞いてくるノスフィーだった。なぜかロードは生暖かい目で見守り、ライナーは冷や汗をかいている。


 正直、ノスフィーの料理は美味しい。ヴァルトの酒場で出ていたプロの料理と遜色はない。だが、懐かしさを感じなければ、僕好みの男向けの料理ではない。

 マリアの用意する料理と同じ傾向で、健康志向が強すぎる。

 

「驚いたよ。すごく美味しい……けど、ライナーの料理みたいなやつのほうが僕は好みかな……?」


 目をそらしているライナーを巻き込む形で感想を述べる。

 それを聞いたノスフィーは、向かいに座っているライナーをじろりと見て呟いた。


「へえ?」


 ライナーの冷や汗が加速していく。

 目線は合っていないけれど、ライナーが「おい、やめろ」と訴えかけているのがわかる。

 悪いが、やめる気はない。ライナーにも協力してもらわないと、この元夫婦という妙な空気をぶち壊せない。


 そんな僕の逃げ腰を見かねたのか、ロードが話に入ってくる。


「うんっ、すっごい美味しいよ、ノスフィー! やっぱり、いいお嫁さんだったんだね!」

「ええ、そうあろうと頑張っていましたからね。料理には自信があります」

「で、こんなにいいお嫁さんを捨てたと噂の旦那さん。もっと何か言うことはないのかなぁ?」


 おい、やめろ。

 ロードはにっこりと笑って、元夫婦の話を掘り出してくる。

 どうやら彼女は夫婦生活の再開を推奨しているようだ。だが、こっちとしては全く身に覚えのない話なので華麗に回避するしかない。


「あ、ああ、この美味しさならいいお嫁さんだったのは間違いないかな? さ、さあてっ、それよりも! 今日も迷宮攻略を続けようと思うんだけど、ライナーも行けるよな!?」


 強引な話題の転換にライナーは呆れ顔をこちらに向ける。

 話を振るなと言いたげだったが、迷宮攻略の話を無視することはできないのか、渋々と答えてくる。


「……そりゃ、キリストが行くなら僕も行くよ」

「よし。なら、また二人で探索だな」


 このまま、今日は迷宮の中に逃げ込もうと思い、その方向で話を推し進めていく。


「むむぅ、また迷宮探索ぅー? ほんと帰る気満々だね……。昨日なんて、いつの間にか六十層まで行ってたし……」


 そこに割り込んでくるのは、やはりロードだった。

 意欲的に地上を目指す僕たちを見て、不機嫌そうに頬を膨らませる。


 だが、出発前に予想していたほどの不安は感じない。

 いままでの守護者ガーディアンたちが命懸けで抗っていたときのような切迫感はない。

 まるで子供が駄々をこねるかのように、ずっと居てよと叫んでいるくらいにしか感じられない。


「そろそろぶっちゃけるけど、そう簡単に地上へは行かせないよ! もっともっとゆっくりしてってよ!」


 トトンッと、とても優しく軽くテーブルを叩く。その優しい怒り方からは、可愛らしさすら感じる。

 何というか……、とても毒が薄い……。

 これでは友達同士が悪ふざけで邪魔してる程度だ。

 むしろ、隣にいるノスフィーの微笑のほうが濃い毒を感じる。


 僕は見誤っていたのだろうか

 いままで出会ってきた少女たちと違い、そこまでロードは追い詰められていないのかもしれない。彼女から感じた危うさは、全て気にしすぎだった可能性がある。


 ライナーと目線で確認し合ったあと、僕たちの進歩状況と方針を偽りなく伝えることにする。


「最初にも言ったけど、僕たちは急いでるんだって。魔法と装備が揃って風竜を倒せるようになったし、ギリギリだけど迷宮に必要な食料も手に入った。正直、迷宮に行かない理由がない」

「えっ、もう食料溜まったの?」

「ああ、片道数日分くらいだけどな」

「むむぅ」


 地上帰還の協力者であるレイナンドさんから大目に給金を貰ったおかげか、十分な食料が『持ち物』の中にある。代わりにアイドを連れてくると約束してしまったが、それに見合う金額だろう。


 もはや、ここヴィアイシアで行える準備は全て終わったと言っていい。


「なるほど。迷宮へ行かれるのですね、渦波様。ならば、わたくしも連れて行ってくださいませんか? 必ずお役に立ちます」


 ロードとは逆で、ノスフィーは協力的だった。

 六十層の守護者ガーディアンの性格によって迷宮攻略の手順が変わるとは思っていたが、これは理想的な展開だ。ただ、同時に都合が良すぎることも否めない。

 即答はせず、ノスフィーの微笑の裏にあるものを探る。

 僕の代わりに即答したのはロードだった。


「え、え? なんでノスフィーまで行くの!? 行く理由なんてないじゃん! というかノスフィーは反則すぎるから、没収! ノスフィーはわらわと遊ぶように!」

「……ええ、そうです。私に迷宮から出て地上へ戻る理由なんてありません。ここはあなたと旧交を温めるのもよいかもしれません。けれど――」


 ノスフィーは、ただでさえ近かった身体をさらに僕へと寄せる。


「依然として、わたくしの全ては渦波様のためにあります。なにより伴侶として夫を支える義務……とまでは言いませんが、ただ単純に渦波様のお役に立ちたいと思っています」


 吐息が耳にかかる。

 恐る恐ると僕は同行のお礼を言う。


「あ、ありがとう」

「いいえ」


 全ては当然だと言うように微笑むノスフィーだが、伴侶という言葉で脅すのはやめて欲しい。


「え、待って。じゃあ、またわらわはここに一人ぼっち? 三人とも迷宮?」


 きょろきょろと回りを見ながら、ロードは確認する。

 三者三様に頷き返すと、少し涙目になって叫び出す。


「じゃ、じゃあ、わらわもついてく! 手伝う!」


 留守番を嫌がる子供のように、迷宮探索の同行を訴える。


「え、本当におまえも来るのか?」

「行くもん。もう決めた……! 昨日はライナーいなくて、すっごい寂しかったし!」

「邪魔しないだろうな……」

「しないしない、絶対しない。たぶん、絶対!」


 ロードは目をそらしながら手を横に振る。

 全く信用できない「絶対」だった。


 しかし、これでパーティーは四人。

 それも守護者ガーディアンが二人。迷宮探索の戦力として考えるなら、過去最高だと言えるレベルとバランスだろう。


「では、渦波様、ロード、ヘルヴィルシャイン、そしてわたくしのパーティーですか。しかし、この面子ですと……ふふっ、ふふふっ、少々懐かしいものを感じますね……」

「僕は裏切りの予感がするんだけど……」


 ロードあたりが探索の邪魔をしそうだ。

 あと、口にはしないがノスフィーも怪しいものだ。


「裏切らない裏切らないっ。たぶん、絶対!」


 なら「たぶん」をつけるなよ……。

 しかし、この四人で上手く協力することができたら、多くの問題が解決するのも確かだ。


「まあ、手伝うなとは言わないよ。……それじゃあ、朝食を食べたらすぐに行こうか。早ければ早いほうがいい」


 全員がノスフィーの用意した朝食を食べ終えたところで、出発を宣言する。こうして、僕たちは新しいパーティーで迷宮に挑戦することになる。

 今日で地下生活は五日目――三度目の迷宮攻略だ。


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