172.『僕』の最後の戦い
「――カナミさん、行きましょう」
朝日が昇ると同時に、マリアは出発を急かす。
回復したMPを使って両軍の動きを把握したところ、たった一夜にして戦況が一変していた。その動きを聞いたマリアは奇襲を即決した。
北も南も軍を大きく動かしていた。それに合わせて、パリンクロンも動いているのを確認する。周囲の制止を振り切って、天幕から出てきていた。重傷から回復したばかりの身体を無理に動かしているため、付き添っていた兵たちは慌てている。
将の責務を果たすためと嘯き、パリンクロンは最前線へ出ようとしている。
あと少しで戦争は始まり、やつは乱戦に巻き込まれることだろう。パリンクロンは襲うならば、いましかない。そんな状況となっていた。
昨日も思ったことだが、余りに状況が良すぎる。『中心』で僕たちを迎え撃つため、あえてパリンクロンは危険を犯しているように見える。
だが、足踏みはできない。たとえ、その通りだったとしても、僕は行くしかなかった。
僕たちは廃村に馬車を捨て、パリンクロンのいるほうへと歩き出す。
ここから先は兵が密集している。移動の速さよりも、いかに隠れて移動できるかのほうが重要だ。
休息をとったおかげで、僕もマリアも快調だ。MPも十分にある。手のひらを何度も開け閉めして身体の力を確認したが、戦闘に支障はなさそうだった。
ただ、一つだけ不備があるとすればスキルだ。
いまの僕は、強引に思考のほとんどを潰してスキル『並列思考』を封印している状態だ。その心身の一致していない状態では、『感応』の発動条件を満たしていないようだった。
ただ、『感応』を使えないとはいえ、僕には《ディメンション・
パリンクロンがローウェン並の剣術を使うというのなら別だが、そういうわけでもない。
誰にも見つからないよう《ディメンション》を広げて、潜むように平原を進んでいく。その間も、薄らと広げた《ディメンション》が、戦い全体の状況を教えてくれる。
散らばっていた部隊が統合され、北も南も万を超えるほどの大軍となっていた。
僕たちが移動するのに合わせて、両軍の距離もじりじりと近づいていく。
隣のマリアは再三と「見過ぎないようにしてください。把握するのは数字だけで十分です」と注意してきた。僕はそれに従って数字だけを追いかける。
そして、ゲーム画面を見るかのように、万と万の兵は近づいていき――接触するのを確認する。
戦争が始まったのを、とても他人事のように見送った。
不思議と何の感情も湧いてこなかった。それは僕が『化け物』になっているせいか。それとも千年前の戦争の経験が記憶の底にあるせいか。それとも両方のせいかはわからない。
まず接触前の矢と魔法で、数え切れないほどの死人が出る――次元魔法の特性上、その死人を数えようと思えば数え切れてしまう。だから僕は、混戦具合とパリンクロンの位置だけに集中して、人の死を意識しないようにする。
予定通りに北と南の戦争は始まった。
その中で将のパリンクロンが兵を指揮しているのは間違いない。
あとはタイミングを計るだけだった。最も南軍の余裕がないときを狙って、パリンクロンへ襲撃をしかければ、そのときこそ僕たちの戦争が始まるだろう。
この世界も迷宮も、北の国も南の国も関係ない。僕たちだけの戦争だ。
いつでも飛び出せるように、僕たちは両軍に気づかれない物陰へ慎重に移動する。
もう次元魔法を使わずとも、視力で戦争が見られる距離だ。そこで身をかがめ、息を潜めて、様子を窺い続ける。
待っている間、多種多様な音が耳に入ってくる。
地鳴りのような兵たちの怒号から始まり、血の臭いに混ざって無数の悲鳴も届く。
恐ろしい勢いで人が死んでいくのが、音だけでもわかってしまう自分が嫌でしょうがなかった。
混戦に入ったため、もう矢と魔法の音は少ない。
代わりに、前線の兵の槍が肉を貫く音がたくさん聞こえてくる。取っ組み合いになった兵が、石で頭を割られる音も聞こえてくる。たまに熟練の騎士による魔法が戦場を通り過ぎる。密集していた兵たちが一斉に死んでいく。人が死に至る音が、何重にも重なって聞こえてくるのは不快の極みだった。
ああ、本当に気持ちが悪い。
僕は腰を浮かしかける。
だが、それはマリアによって止められる。
「もう少し待ちましょう、カナミさん。まだ戦いのピークじゃありません」
その冷静な言葉によって、僕は浮かしかけた腰を落とす。
僕は黙って、この戦いの音を把握し続ける。
苦しいのは人が死んでいるからだけじゃない。
およそ、人にはありえない感情が僕を蝕んでいた。
僕が見ているせいで人が死んでいるかのような、訳のわからない被害妄想が止まらないのだ。おそらく、この戦いを止められるだけの力があるかもしれないのに、何もしていないというのが原因だろう。神にでもなったつもりかと、自分を戒めたくなる。けれど、数万程度が相手なら、何とかなると思っている自分も確かにいるのだ。だから、奇妙な罪悪感が止まらない。ぐるぐると空回る思考も止まらない。
『並列思考』を抑えていても、無駄に高いステータスのせいで不快感は消えてくれない。
理性と感情が交錯し、絡み合う。
その内、自分が何者かもわからなくなってくる。
いや、元々わかるはずもない。僕は人間でも神でもないどころか、名前もわからない『誰か』なのだから……。
そして、その『誰か』は、誰を助けるべきかも、もうよくわからなくなってきている……。
ああ、本当に気分が悪い。
気持ちが悪い。気持ちが悪い。気持ちが悪い。
結局のところ、腰を浮かしたのは、考える間を置きたくなかったからだろう。
いまの僕にとって、何もせずに待機していることが一番耐えられない。
だから、早く。
早く早く早く、と。
耐え切れず、願ってしまう。
早くパリンクロンと戦わせてくれ――
そう心の中で叫んだときだった。
願いに応えるかのように、ぽつりと頬に冷たいものが落ちる。
更にぽつぽつぽつと、地面にいくつもの染みができていく。
僕は咄嗟に空を見た。
黒い曇り空から、雨が降り出そうとしていた。
「あ、雨……?」
急な天候の変化に驚く。
疑問を浮かべている間に、雨は勢いを強めていく。一瞬のうちに豪雨と化し、戦場全てを包み込んだ。
「……運が向いてますね。丁度良い雨です」
視界が悪くなるほどの大雨を見て、マリアは顔を明るくする。
僕たちは混戦への介入を狙っている。
だから、この大雨は、僕たちにとって追い風だった。もちろん、マリアの炎はこのくらいの雨で消されることはない。
突然の大雨によって、戦場の殺し合いは激化していく。
順調に条件が整っていくのが怖いくらいだ。
マリアの望んでいた混戦のピークが早まっているのがわかる。
もう待つ必要はない。むしろ、軍が撤退を指示する前に飛び込まなければいけないほどだ。
「
「ああ、行こう……」
マリアは立ち上がった。
昨日の夜に決めた作戦通り、マリアを僕は両腕で抱きかかえる。合わせて、魔法も構築し始める。
そして、血の飛び交う戦場へと、軍馬が走るよりも速く駆け出した。
兵を避ける必要はない。
あとはパリンクロンの首まで一直線に目指すだけだ。
走る途中、多くの兵たちとすれ違った。僕たちを視認した兵たちは、恐ろしいものを見たかのように驚きの声をあげていく。中には強風に見舞われたかのように腰を落とす兵さえいた。
人一人抱えて風のように走る僕を恐れたわけではない。僕とマリアの紡ぐ魔力が異常だと、一瞬の邂逅で理解したのだろう。まるで、高ランクのモンスターと鉢合わせしたかのような反応だった。
だが、仕方のないことかもしれない。僕のステータスの『筋力』と『速さ』は人間の限界を越え始め、魔力は『化け物』へと至りかけている。
パリンクロンへ近づくにつれ、兵の密度は急上昇していく。どこを見ても凶器を持った血濡れの兵ばかりだ。
その兵の中には、事前に僕たちの接近を気づくものもいた。将軍職についていそうなレベルの高い兵だ。不運にも僕たちの前へ立ち塞がることができた強い人には、すれ違い様に魔法で重症を負ってもらった。
一瞬でも立ち止まれば南の兵に囲まれてしまう以上、容赦などできない。僕は戦場に散る血を浴びながら、錐で穴をあけるかのように南軍の包囲網の突破をしていった。
そして、パリンクロンのいる乱戦地域の手前まで侵入を果たす。南にとっては最前線の領域であり、戦争の『中心』と言っても過言ではない。
足を止めることなく、《ディメンション》で最後の確認を行う。
北西の方角に二キロメートルほど先、軍馬に乗ったパリンクロンが多くの兵を率いていた。せわしなく指示を出しながら、兵へ陣形変更を指示している。
北との総力戦の上に、この急な大雨だ。複数の伝令が行き交っていた。
その中に、とある伝令が交じる。
東から少女を抱えた正体不明の男が自陣に入ってきているという報告だ。その伝令を聞いて、パリンクロンは戦時中だというのに笑った。
薄い笑みを貼り付けたまま、視線を東へと向けるパリンクロン。
その間も距離は詰まっていく。
兵たちは自陣の奥深くへと正体不明の男が切り込んでくるのを止められない。あと数百メートルほど手前のところで、僕は適当な大男を選んで跳び蹴りを入れた。
そのまま、大男を踏み台にして、僕は跳ぶ。
空から降る雨粒に打たれながら、僕たちは構築し終えていた魔法を宙で叫ぶ。
「――魔法《ディメンション・
「――《フレイム》! 《インパルス》!!」
僕は薄く引き延ばした《ディメンション》を収束させ、パリンクロンだけに集中させる。腕の中のマリアは魔法を同時に放ち、その二つを溶け合わせた。
数十人もの兵たちの頭を飛び越えながら、着地地点を見定める。
今回は奇襲攻撃より分断が優先だ。狙うはパリンクロンのすぐ隣。周囲には護衛の兵がたくさんついているが構いはしない。
その確認の最中、パリンクロンの目が完全に僕たちを捉えた。
視線が絡み合った。
互いに薄い笑みを浮かべているのがわかった。
パリンクロンは先日の奇襲を思い出したのか、全身に力をこめて身構える。しかし、僕が着地したのはパリンクロンの身体ではなく、数歩離れた大地だ。
着地と同時に用意されたマリアの炎が迸る。
その轟炎には、無属性の衝撃が加わっている。それは湖に投石してできた波紋のように周囲へ伝播した。
その炎は、燃やす炎ではなく吹き飛ばす炎だ。
護衛していたのは選りすぐりの兵だっただろうが、
マリアの渾身の魔法によって、パリンクロンを守っていた兵たちは十メートル以上吹き飛ばされる。
その魔法は、隕石が落ちたかと錯覚するかのような轟音をともなっていた。
音と炎に怯え、パリンクロンがまたがっていた軍馬が逃げだそうとする。パリンクロンは宥めることなく、軍馬から降りて、逃げ出すことを許した。
軍馬が走り去るのと同時に、周囲に舞い残る炎が膨らみ、躍る。
「――《フレイム・
膨らんだ炎は円を描くように、地面を奔った。
そして、その炎の円は、パリンクロンを含む僕たち三人を隔離するかのように壁を作った。数万の兵たちが蠢く戦場の中、観客席のない炎による『
その炎の勢いは荒々しく、壁は厚く、色も濃い。アルティが僕に使った魔法と同じ性質のものだ。当たり前だが、ただの炎ではない。
かつて、ティーダと戦ったときの僕と同じように、パリンクロンは逃げられなくなる。周囲も、この炎を突破してパリンクロンを助けることはできなくなった。
分断は成功だ。兵たちは完全に蚊帳の外となった。
一連の魔法は、一瞬の出来事だった。
だが、パリンクロンは全く動揺していない。この状況を求めていたのは僕たちだけでなく、パリンクロンも同じだったようだ。
見ようによっては、お互いの了承を得ての決闘のようにさえ感じる。
大地にしっかりと立つ彼は、悠然と僕たちを歓待した。
「――ようこそ、少年。一日ぶりだな」
薄く張り付いていた笑みが深くなり、パリンクロンは両手を広げた。
その余裕に負けぬよう、僕も余裕を持って笑った。
「ああ、一日ぶり。パリンクロン」
笑いながら、精一杯の敵意を飛ばした。
それをパリンクロンは涼しげに受け流しながら、周囲をぐるりと見回した。
隙間のない炎の壁。その炎が、ただの炎でないことは察したようだ。
そして、雨の降る中、パリンクロンは目を細めて懐かしむように語りだす。
「炎の壁に、大雨か……。そして、この三人。ははっ、ちょっと懐かしいな。聖誕祭の日も、こんな状況だった。あの日は俺だけが残った。なあ、少年。今日は誰が残ると思う?」
世間話をするかのように、僕たちの屈辱的な敗戦を思い出させる。
確かに、この状況は聖誕祭の終わりと似ている。
あの日――。アルティが消えたあと、僕とマリアはパリンクロンと戦い、そして負けた。
思い出すだけで胸が締め付けられる記憶だ。
僕は動揺を隠して、敵の問いを無視する。
こちらの要求だけを突きつける。
「パリンクロン、いますぐティーダの魔石を出せ」
最後通告であり宣戦布告だった。
これを行うのはマリアも了解済みだ。最初の数分だけは僕とパリンクロンの一対一で話をすると決めてある。
「……ん? なんだ、それだけでいいのか? あれだけのことを俺にされて、まだ殺すのを躊躇っているのか?」
パリンクロンはいやらしい顔で、僕の甘さを指摘する。
僕は続きを口に出す。
「もちろん、それだけじゃない。ディアを斬った分で腕一本、アルティとマリアを唆した分で両目を貰うつもりだ」
「……へえ。
その上乗せ分を、パリンクロンは悠々と受け入れた。
「おまえを殺さないのは、知っていることを全て話してもらうためだ。ハイリから、お前の中に使徒ってやつがいると聞いた。その使徒の知っていることを話してもらう」
これで用意していた言葉は吐き出しつくした。
同じ使徒であるレガシィとやらから、シスの情報が欲しいのは本音だ。これで僕の戦いが全て終わるわけではない。むしろ、いまの僕にとっては、使徒シスとの戦いの方が本番とも言える。
そのためにも、少しでもいいから情報が欲しかった。
ただ、もしパリンクロンが何も話さないつもりなら遠慮するつもりはない。
そのときは殺すしかなくなるだろう。
それを証明するべく、僕は水晶の剣の切っ先をパリンクロンに突きつける。
もう一息で詰まる距離だ。僕は臨戦態勢に入っている。
やろうと思えば、いますぐにでもパリンクロンをバラバラにできる。
パリンクロンもそれがわかっているのか、僅かに冷や汗を垂らしている。
研ぎ澄まされた《ディメンション・
一般人が銃口を突きつけられているほどの恐怖はあるだろう。いや、正しくは『化け物』のアギトを前にしている恐怖かもしれない。
「それは断る」
それでもパリンクロンは首を振った。
「なら強引にでも聞く。この状況、どこにも逃げられないぞ。おまえは魔石を得て強くなったのかもしれないけど、僕とマリアはもっと強くなった」
「ああ、確かに強くなったな。前は半分くらいのレベルだったのに、いまとなっちゃ俺と同じくらいだ。
「レベルは同じくらいでも、ステータスとスキルに差がある。……勝負になると思うなよ、パリンクロン」
【ステータス】
名前:パリンクロン・レガシィ HP456/512 MP390/392 クラス:
レベル22
筋力15.21 体力19.45 技量12.12 速さ18.22 賢さ10.11 魔力14.01 素質4.89
先天スキル:観察眼1.47
後天スキル:剣術1.89 神聖魔法1.23 精神魔法3.90
体術1.87 呪術2.55
【ステータス】
名前:相川渦波 HP369/370 MP520/920-400 クラス:探索者
レベル20
筋力11.55 体力13.12 技量17.11 速さ20.86 賢さ17.12 魔力46.44 素質7.00
先天スキル:剣術4.89 氷結魔法2.58+1.10
後天スキル:体術1.56 次元魔法5.25+0.10 感応3.56 並列思考1.48
編み物1.07 詐術1.34 魔法戦闘0.73 鍛冶0.69
???:???
???:???
パリンクロンのステータスは最後に確認してから、ほとんど変わっていない。
それに比べ、僕の方はステータスとスキル共に急成長している。いまの僕ならば、かつての獣じみたティーダの速度にもついていけるだろう。精神魔法をかけるために、黒い液体を飛び散らせられたとしても、その全てを避けられる自信がある。
鍔迫り合いになれば負けるかもしれないが、技量において大きく上回っている。
剣を振り合えば、一合で勝利する自信がある。
「勝負になると思うな、か。ははっ、確かに剣で戦えばそうかもしれないな。……しかし、そんなこと言われたのは初めてだ。これでも小さいころは『神童』なんて呼ばれてたんだぜ? あの頃はよかったなぁ。決闘で俺より強いやつなんて一人もいなかった。だというのに、最近はひどいぜ。昨日なんて、スノウのやつに殺されかけた」
接近戦は諦めているように見える。剣術の劣勢は、パリンクロン自身も痛感しているのだろう。だが、そのおどろおどろしい魔力は戦意で満ち溢れているままだ。
「昨日と違って今回は場所がいい。そう簡単に負ける気はないぜ?」
パリンクロンは地面を踏んで、ここも『
そして、ゆっくりとした動作で、パリンクロンは腰に下げた剣を抜いた。
僕は『注視』して、その剣の詳細を確認する。
以前のような張りぼての剣ではない。
流石に『アレイス家の宝剣ローウェン』と比べれば劣るが、大陸最高クラスの一品であるのは間違いなかった。
剣を構えるパリンクロンを見て、明確な戦意を感じ取る。
僕は別れの言葉のつもりで、戦いの合図を告げる。
「パリンクロン、おまえは人としてやってはいけないことをやった。僕はそれを絶対に許せない。だから、いまから僕はおまえと戦う。おまえが何も言わないつもりなら、おまえを殺して、それで全て終わりだ」
「ああ、当然だ。それでいい」
あっさりとパリンクロンは頷く。
――いまの別れの言葉の中には、僕の
できるものなら、パリンクロンには言い訳をして欲しかった。もっと別のことを言って欲しかった。しかし、にべもなく頷くだけだった。
おそらく、パリンクロンは僕の懇願に気づいていたのだろう。気づきながらも拒否した。なんとなくだが、それがわかった。
「…………」
「…………」
もう話すことはできない。
戦うしかない。戦うことでしか収まらない。
それが決定的となった瞬間だった。
「行くぜ、少年――」
そして、戦いは始まる。
これは待ちに待った因縁の敵との戦い――
だが、あんなにも恨んでいた敵を前にして、僕は出遅れてしまう。
先に動いたのはパリンクロンだった。
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