悪魔様との契約

夢幻成人

対価(前編)

心理学者の研究で、

「好きな人の心の鍵があるとして貴方がその鍵を手に入れるために支払っても良いと思う対価は?」

という質問に対して、男性は金銭的な解決に対して、女性は身体的犠牲をして解決するという回答が得られた。


この物語はその問いに対しての物語である。


星 ミチルは今年、二十歳になった平凡な大学生。

人生でこの人しかいないと言い切れるほど、

ミチルの心が常に躍動する男性に巡り合えた。


月 カケルはミチルと同じ大学生で

サークル テニス部に所属していた。


イケメンで運動神経も抜群、

テストも常に上位にいるという頭の良さも

合わせて、サークル以外の女性からも

常に引っ切り無しに連絡が来ていた。

彼にとっては毎晩日替わりで女と遊べるから苦痛にも感じていなかった。

ミチルはそんなカケルを追いかけまわす女性の一人だったが、

カケルからすれば、名前も知らない都合の良い女ですら無かった。


「どうしてカケルは私の物にならないの?」

「ミチルはカケルの為なら何だってするのに…」

「カケルを幸せにするためなら、本当になんだってできるんだよ」

「あぁ…周りの女どものなんか皆死んで、ミチル一人だけの物になればいいのに…」


ミチルは鏡に向かって、自分の顔見ながら自問自答していた。


「ホントウニ、ナンデモスルノカ?」

どこからともなく声が聞こえてきた。


「えっ?」

鏡を見てみるとさっきまで、

しかめっ面になっていたミチルの顔はニヤニヤとこちらに

視線を向けている。


「ホントウニ、ナンデモスルノカ?」

鏡の向こうのミチルが問いかける。


「ミチル、何でもするよ!!カケルのためなら何でも出来るだよ」

そう言い切るミチルに鏡の向こうのミチルはさらに質問してくる。


「デハ、オマエノ、ジュミョウノ、ハンブンヲ、ヨコセ」


「もし、半分あげたらあなたは何をしてくれるの」

ミチルは鏡の向こうの自分に対して、恐怖など無かった。


「オマエノ、ネガイ、ヲ、ナンデモ、カナエテヤル」

鏡の向こうのミチルは相変わらずニヤニヤしながら語りかける。


「じゃぁ、カケルをミチルだけの物にして!!」

何の迷いも無く即答するミチルに

向こうのミチルは


「コレデ、ケイヤクハ、セイリツダ」

「オマエノ、ジュミョウハ、ハンブンニナッタ」

「イマカラ、カケルハ、オマエダケノモノダ」

「デハ、サラバダ」

そう言うと鏡の向こうミチルの顔の半分が戻り始めた時


「待って!!」

ミチルが引き止めにかかった。


「ナンダ?」


「寿命が半分になった事でミチルがいつ死んじゃうか教えてほしいの!!」

ミチルが問いかけると鏡のミチルはしばらく沈黙した。


「…………イイダロウ」

「オマエハ・・・・・・・・ニ、シヌ」


「何時?」


「チョウド、ヨナカノ0ジダ」


「わかったわ、ありがとう」

ミチルが礼を言うと、鏡の中のミチルは元の顔に戻っていた。


翌日

玄関のドアを開けるとカケルが立っていた。


「おはようミチル、授業に遅れちゃうよ」

カケルがミチルに話しかけると

ミチルは昨日の出来事は本当だったんだ。

と実感を持ち、何の抵抗も無くカケルに抱きついた。


「おはよう、カケル」

「ねぇねぇ、カケル、キスしよう」


「うん」

あんなに遠くにいたカケルが

今ではミチルだけの物。


「今日は授業行かない」

「うん、ミチルが授業行かないなら、俺も行かないよ」

「ねぇカケル、家に入って一緒に寝よう」

「うん、ミチルが望むなら俺はミチルの為に喜んでなんでもするよ」

「本当、じゃぁ早く~ぅ」


こうして、ミチルはカケルを自分の物にして

大学を途中中退、カケルと結婚したのであった。


月 ミチルになってちょうど10回目の誕生日の前日


「あと少しで誕生日だね」


時刻は23時30分、後30分で30代になろうとしていたミチルは


「そうだよ、あと少しで誕生日だよ」

「ねぇカケル、誕生日プレゼントは買ってくれた?」


「もちろんだよ」

「前からミチルほしがってたのを見つけたんだ」


「ねぇねぇ、カケル早くほし~ぃ」

ミチルが誕生日プレゼントを催促すると・・・


「しょうがないなミチルは」

「じゃぁ、ちょっと早いけど誕生日おめでとう」

カケルはそう言って、ミチルに誕生日プレゼントを渡した。


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