逃亡

バブみ道日丿宮組

お題:暴かれたサーカス 制限時間:15分

逃亡

 大災害で家族を失った。

 それは人災とも呼ばれ、たくさんの人が死んだ。

 その中で生き残ってしまった僕らは、生きる手段を失った。

 そうして日々過ごしてると、僕たちはサーカスに拾われ、芸をすることになった。

 火の輪を通ったり、段差を飛び越えたり、刃物で半分にされたり。

 いろんなことをさせられた。

 月収は極端に安かった。詐欺と思われるくらいのお金しかもらえなかった。抗議はしてみたが、拾ってやった恩を仇で返すのかと睨みをきかせられた。

 他のサーカス団員は僕たちと違って、裕福そうだった。

 僕、幼馴染、姉は、いつも端っこの方で暴飲暴食を見てた。実に羨ましい光景だった。

 欲しいと言ってもくれないし、欲しくないものを咥えさせられたり、入れられたりした。

 そんな生活をしてれば、当然できるものはできる。

「わたし、脱走しようと思うの」

 妊娠した幼馴染は、夜にこそこそ声で僕らに提案する。

 彼女は僕たちよりもお金を貯めてた。

「どこにいくかは決めてるの?」

「警察に事情を話そうと思ってるの。仲良くなった刑事がいるの」

 団員にバレずによく繋がりを得たものだ。

「なら、もう出ていきましょう。どうせ酒のんで意識がないだろうし」

 テントから姉は顔を出して、周りを確認する。

「うん、大丈夫そう」

「なら、準備してっていっても、何も持ってくものはないかな」

 哀愁感でいっぱいだった。

「……僕たち、救われるの?」

 声が漏れた。自然と生まれた疑問。ここから出て生きていけるのかという願いのようなもの。

「大丈夫。わたしたちが一緒だよ。ずっとずっと一緒なんだから」

 抱きしめられた。暖かった。

 幼馴染も、姉も生きてるんだという熱を感じさせた。

「じゃぁ、いくわよ」

 手をひかれるままに、サーカスの敷地を出て、まっすぐに警察署へと向かう。

 復興された街なかを不格好で歩く僕らは、異端だ。

 いろんな人に視線を向けられた。

 きっと汚い子どもだと思われてことだろう。

「……っ」

 それも今日で終わりなんだと思うと、涙が自然と流れてきた。

「大丈夫だよ。大丈夫だから」

 握られた手が、心地よかった。

 警察署にたどり着くと、その刑事を呼び出してもらい、事情を話した。

 すると、すぐに部隊が編成されて、サーカスへと向けられた。

 その後は、刑事が両親代わりとなり、普通の生活をおくれるようになった。

 サーカス団員がどうなったかはしらないし、しりたくもない。

 自由が、ここにあるんだから……。

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逃亡 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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