ソングオブサルース

龍鳥

プロローグ

 アイラブユー、今だけは君を愛して欲しい言葉なんて人生で一度もない。


 僕が勤めていた会社は下請け企業というやつだ。企業の無理な納期に応え製品を作っている。その製品とは、鋳物である。

 鋳物とは、特殊な液体を混ぜることで時間経過によって固まる砂を使い、製品の原型を作る。次に、溶けた鉄を原型に流し込む作業工程だ。この業界では溶けた鉄のことを、湯と呼んでいる。これらの一連の作業の中で僕は、製品の原型を作る仕事をしていた。

 頭上から砂が出る機械を使うため砂埃が充満し体中が汚くなる。さらに湯は1,000℃を超える温度になるので冬でも室内の温度は40℃まで上がり続ける。一年中たきのように汗をかき続ければならない過酷な環境だ。



 「オマエ、ヨワイダロ。ニホンゴ、デ、雑魚ッテヤツ」



 特に嫌だったのが、外国から来た研修生が今日入ったばかりの彼に開口一番に言われことだ。僕はなにも悪い事してないのに。以来、僕は毎日毎日と言われ続けた。



 「ドケ、雑魚」


 「ナニミテンダヨ」


 「ヤメチマエ」



 それでもおかしい。日本語を覚えたての外国人が、簡単に単語を言えるわけがない。僕はしばらく、研修生を観察するため、休憩の昼休み時間に後をついていった。そしたら。



 上司が、罵倒を面白おかしく研修生に教えていたのだ。


 その人が日本語が不慣れな研修生に、僕だけに虐める言葉を教えるのは、納得と落胆の気持ちがあった。何せ僕は良く失敗をするし、そのせいで上司との口論があったからだ。 


 下請け企業である最悪な環境……職場での虐め……僕は我慢できずに辞めることにした。絶望に伏している帰り道に、僕は下を向いたまま歩くことしかできなかった。



 死にたい。


 なぜ僕ばかり。


 夢を叶える才能があればこんなことには。



そんな思考を巡らしている時に、ふと歌が聞こえた。



 「ら~ららら~らら~ら~」



 まるで教会にあるパイプオルガンを奏でてる圧倒的な美声。透き通る音色は人間の心の邪念をすぐにでも払いのける狂乱の宴。祭りでもあるのか?僕は歌っている声に釣られていくように、辿った。



 「あら?私が見えるの?」



 そこには、青い髪をした黒いワンピースを着た少女が立っていた。


 彼女を見てすぐにわかった。彼女は僕にとっての救いなるかもしれないと。

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ソングオブサルース 龍鳥 @RyuChou

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