荒レル世界ノ戦奇録

ゆずれもん

第1話 見覚えのない風景、冷たい水槽

 ボクは誰だ?ここはどこなんだ?

 慌てたボクは、定番の台詞を言ってしまう。


…そう、今のボクには過去の記憶がない。

 それなのに数式や組成式などは思い出せる。そういうところが余計にボクの恐怖を煽った。


 とにかく、ボクは周りの様子を探ることにした。

 ここはとにかく暗い。おそらく、地下シェルターかなんかにボクはいるのだろう。


 辺りを見渡すと、割れたガラスケースの破片や、培養液?的なゲル状の物がボクの辺りを散らばっている。

 そんな形跡を見るに、ボクはコールドスリープ?的なことをされていたのだろう。

 うぅ、体に纏わり付いたゲル状の物体の事に意識向けちゃった、ヌメヌメして気持ち悪い。


 それはともかく、ボクはカプセルの中に入った液体を鏡にして、忘れてしまったボク自身の顔を見ることにした。


 髪は白黒のハイライトでショートヘアー、色白で小さな顔、背丈は140cmくらいとかなりの低身長。

 極め付きに、目立つ赤と青のオッドアイ。

 ボク自信で言うのもなんだが、かなり異質な容姿…そして美少女だ。


…さて、これからどうするか…

 そう考えていると、抗えない睡魔に襲われ、ボクは倒れた。








…ボクは目を覚ます。先ほどとは違う景色だ。

 コンクリート製の壁に木製の家具、そしてボクはベッドの上に寝かされている。

 服も着させられているし、ボクは眠っている間に誰かの手によって別の場所へ運ばれたようだ。


 さて、なんのためにボクを運んだのか…と、考えていると誰かが来た。


「目覚めましたか、NoA様。私の名前はセバス、あなた様の執事です。」


 セバスと名乗る、タキシードに身を包んだ、60歳前後に見える男性が、ボクのいる部屋の扉を開け、そう言った。


「あなた様には、これから第十部隊の一等兵として戦場に出てもらう予定です。

 私は、そんなNoA様の身の回りの世話、そして、この世界の状況を教えるために配備さらました。」


 そう続けてセバスが言う。ちょっと待って、ボクが第十部隊の一等兵?そして戦場に出る?どうしてこうなった?説明は?


「慌てる気持ちはわかりますが、どうしてこうなったかの説明も致しますので、一度落ち着いて聞いてください。」


 セバスが、ボクの心情を読み取ってそう答えた。ボクはそれに首を縦に降って承諾のアイズを出し、話を聞くことにした。




…世界の現状がわかった。

 この世界には知恵を持つ種族が複数いて、種族ごとに団結して国を造り、統治しているらしい。

 しかし、他種属の間では仲が悪いことが多く、ボクが今いる人族は、周りの国々と臨戦態勢になっている。


…西の海からは人魚族マーメイドが矛先を向け、南の山岳地帯からは土人族ドワーフが大砲の弾を詰め戦う準備をし、北の山岳地方からは竜人族ドラゴノイドが目を輝かせ人族を監視し、東の森林からは獣人族ビーストが自らの爪を研いで指揮を高めている。


 事実上の四面楚歌。この国の支配者は馬鹿なのか?その四勢力が強力したら勝ち目ないじゃん。


…そんな人類が、この状況を打破しようととった行動が、古代の遺産の発掘。その中にボクがいたシェルター(?)があったらしく、ボクがここに運ばれた。


 どうやら、ボクみたいに、長い間眠っていたと推察される人は他にもいるらしく、その人達は軒並み、強かったり賢かったりして国の発展に繋がるので、ボクもその一例に従って第十部隊の一等兵にされたらしい。


 他にも、貨幣の価値とかこの国の歴史とかも聞いた。


 そうして、色々と聞いたところで、ボクはセバスに二つの事を頼む。


 一つ目はボク専用の武器の製作をしてもらうこと。

 二つ目は第十部隊の隊長との顔合わせだ。


 どちらの頼みも了承してもらい、隊長との顔合わせは三日後になった。


 ボクは隊長との会合日までゆっくりと待つことにした。

 

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