反撃される覚悟なくして、口撃はできない――いびり道とは
――いびりの道は、
聞いてください。最近、わたし凄いんです。
(口撃率=
じゃあ、作戦の成功率が上がったか……というと、それはまた別の話というかなんというか……ごにょごにょごにょ。
……実をいうと、
被撃率って何かって?言い返される確率です。悲劇率といってもいいものです。(※個人の偏見です)
作戦初期の頃こそ、一方的に口撃成功を決めてきた(?)わたしでしたが、遭遇回数を重ねるごとに、アレクサ嬢の態度に変化が出てきました。
ぶっちゃけいうと、慣れてきた様子がうかがえます。
”人見知りで、恥ずかしがり。殿下だけが心の頼り”というもっぱらの評判だったはずのアレクサ嬢が、口撃されても怯まない。というか、(殿下の後ろに)
「ごきげんよう、モールトン嬢。今日も変わらぬご様子で、ご忠告の甲斐もございませんわね」
「あら、ごきげんよう、ち……ランド様。今日もお一人でおいでなの?」
”ち”とか”ワ”とかよくとちってるのですが、なんなのでしょう。わたしの名前にかすってませんよ?
そして本当にご機嫌良さそう。にこにこ笑顔の女子力Max。くっまぶしい。
「ランド様は感心ねえ。いつでもお一人で行動なさってて……迷子にならずにえらいこと」
「迷子になどなる訳がございません。校内地図は肌身はなさず所持していますものっ」
学年一つ下だというだけなのに、子ども扱いって失礼な。『なってんじゃん、迷子』って今言ったの、殿下ですか?
――気のせいですか、そうですか。
「…………そうね、学園の、敷地は、こう、だい、ですものね。地図、でもないと、まよ――」
ん?ひゃっくりですか。つまってますけど。隣で殿下も咳きこんでます。あと、やっぱり誰だか男の人の声がしたような――
『鼻きかないのか、ワンコなのに』って空耳ですか。
「大丈夫ですか?ひゃっくりなら下を向いてお水をゆっくり飲むといいそうですよ」
「……ありがとう。いいえ、問題ないですわ。わたくしは、ただ、お連れがなくてお寂しくはないのかと」
む。痛いところをついてきました。わたしがぼっちだとの指摘ですね。
ふ。そんなことで怯むと思ったら大間違いです。わたしは、自らの判断で学園では友達を作らないのです。
作れないのではなく、作らない。この差はとても大きいのです。(※個人の見解です)
「ご心配にはおよびません。わたくし、寂しがりやではありませんもの。
淑女たるもの、独りで
「あらまあ、なんと勇ましい。わたくしには真似できませんわ……もし殿下がいてくださらなかったら、と思うだけでも――」
ちらりと横目使いも口惜しいですが、美しい。
その眼差しを受けて、殿下の顔がひくついたのはあれですか、浮気がばれるとあせりましたか、今更ですが。
殿下のそんな態度にムッとして思わず睨みつけてしまったわたし。それに気づいて更に目が泳ぐ殿下。
――届け、この怒り……!
と頬を膨らませ口を引き結んで念じていたわたしに、すっと指が差し伸ばされ――
ぷに、ぷにぷにぷに――
頬に、指が食い込んでいます。そして押されています、リズミカルに。ぷにぷにぷにと。
へっ?と押されたまま、どうにか指の方へ目を向けると輝くような笑顔のアレクサ嬢がそこにいました。
近いです。いつの間にか、すごく近くにアレクサ嬢が迫ってきていてなぜかうっとりしながらわたしの頬を押しているではありませんか。
「ふふふふふふ……」
コワい。なんですか、この圧迫感。まるで肉食獣にロックオンされたような――そ、そして指の力が強い――!?
え。可憐で華奢な令嬢はどこに?そしてなんか覆いかぶさるような存在感はどこからきているのですか?
「頬が、まんまる……泡立てたクリームみたい…♡……うまそう(ボソッ)……」
え、なに。アレクサ嬢の言葉の後に、また謎の男の声が……!?
理解不能な状況に震え上がったわたしは即座に前線からの撤退を決めました。俊敏なバックステップからのターン&ダッシュ。
「――き、今日はこの辺にして差し上げますわっ」
それは、もはや
惜しむらくはご機嫌よう、と付け加え損ねたことですか――
そんな余裕はありませんがねっ(泣)
〇今回の口撃率
被撃率 P 4+1(?)
結果 ●2-5(負け)
どうしましょう。わたしの成功率が上がりません――
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