第18話 竜を喰う者
「お前が……キラー」
キラーは蓮を見ると、にやけながらまじまじと見つめる。
「意外と陰気臭いねぇ、もう1人の王の顔は」
キラーは蓮の顔をなめるように見ると、ベッドに飛び込み、横寝になって蓮をまじまじと見つめる。
「……なんだよ」
「……いや……ちょっとね」
そう言うとキラーは舌なめずりをし、にやけ始める。
蓮は少し気分が悪くなった。
「……ちょっ」
するとキラーは蓮を押し倒し、首筋に噛み付く。
「いっ……!?」
「ちょっとお腹すいてるからさ、少しだけ貰うね、別に命は取らねえさ、お前は竜装鎧のまま、殺したいから」
蓮の首からたらりと血が流れ、それをキラーは舐める。
蓮は青ざめ、すぐにキラーを突き飛ばし、部屋の隅に逃げ、首の血を抑える。
「お前っいきなり……」
「気にするな、あいつの甘噛みみたいなもんだ」
「気持ち悪すぎるだろ!いきなり噛み付くとか!」
キラーは蓮の血を味わいながら言った。
「なかなかいけるね、何型?」
「…A型」
「そうか………懐かしい味だ……」
「は?懐かしい?何言ってんだ?」
「似てるんだよ……あの時のと……」
15年前、竜世界
西にある人が住まないようなはずれの砂漠地帯で、竜装鎧マシュンガの跡継ぎ、ヒルコ・マシュルスが生まれる。
竜装鎧マシュンガの一族は遊牧民であり、場所を転々として生活している。
そんな所に1人の子供が産まれた。
彼は元気に育ち、父親の真似で狩りを始めた。
最初は何も取れなかったが、段々と父親のやり方を盗み見て、1人で取れるようになっていった。
そしていつの間にか、竜装鎧も使える様になっていた。
しかし、ヒルコはある物が欠如していた。
ヒルコは動かなくなった兎を見ながらこう言った。
「………動かない」
彼は命の大切さを知らなかった。
小さな頃から、命を奪い続け、命という概念を分からずに生きていた。
動いてるものは動かなくして食べる。
それだけ、ただそれだけで彼は狩りをしていた。
そんな時が流れ、8歳の時である。
ヒルコは夜に目が覚め、隣のテントに小さな明かりが灯って居るのを見つけた。
そこは、親が寝ているテントだ。
何をしているのか、ただの好奇心で、ヒルコは寒い夜の砂漠の中をテントへ向かっていった。
すると、ひそひそとみんなの声が聞こえた。
「やはり……すべきか」
「でなければ、我々は忌み嫌われる……」
長老や、おじさんの声が聞こえ、何かザワザワと話している。
「……ヒルコを殺さねば」
ヒルコは言葉の意味を理解すると、怖かった。
逃げ出そうとする時、石につまづき、音で気づかれてしまった。
みんなの目線は冷たく、両親も子供を見るような目付きではなかった。
「ヒルコ、お前は良い子だ。だから、しんでくれ」
父親は、そう言うと、ヒルコの首を絞め始めた。
喉が潰され、声が出ない。
「許してくれ、我々は竜食いの一族と呼ばれ、忌み嫌われてきたんだ。竜装鎧を継ぐお前を殺してしまえば………私達はもう力を持たない……だから、ヒルコ」
その時、父親の両腕は綺麗に切れた。
そして、血が噴水の様に吹き出し、父親は悲鳴をあげた。
ヒルコは竜装していた。
その後は彼には何が起きたのかは分からない。
ただ、気がつくと、周りのみんなは、赤く染っていた。
そして、ヒルコはお腹が空いていた。
朝日が登り、ちょうど朝食になる時間だろう。
ヒルコは食べ物を探したが、干した肉だけでどう食べれば良いのかわからなかった。
すると、美味しそうな肉を見つけた。
どこかで見た事がある腕だったが、しょうがないとヒルコは、口にした。
「……美味しい」
今までに食べたことの無い味だった。
一瞬にして脳が溶け、快楽に包まれる。
まだまだお肉はたくさんあった。しばらくはこれで過ごそうと思った。
すると、昨夜の出来事が脳裏に浮かんだ。
そして思った。
「あれも楽しかったな」
その日から彼は狩りを1人で続けた。
男や女、老若男女問わなかった。
男は肉付きが良く、噛みごたえが。
女は柔らかく、とろけるような美味さがあった。
いつしか自分の事をキラーと名乗っていた。
たまに人を狩れない時は食堂の食べ物で済ませたが、あまり美味しいと感じなかった。
いつの間にか、指名手配にされ、5000万ジュランの賞金がかかっていた事はつい最近知った事だ。
そんな日々を過ごして6年程経ったある日。
彼は、世界の狭間を目の前にしていた。
「……なんだよ……これ」
彼は驚愕と同時に、少し好奇心があった。
そして狭間に手を触れると、光が彼を覆った。
あまりの眩しさに目を覆うと、そこはまるで異世界のようだった。
「……どこだよ……ここ」
山らしいが、麓の街はあかりに包まれていた。
というかまるで宝石の様に眩しい。
すると、草むらからがさがさと音がした。
「……誰だ?」
草むらから出てきたのは、女だった。
「もしかしてあなた
「は?」
ここから話す物語は、殺人鬼と、1人の女の、殺人劇である。
竜人保護管理局の記録
「あなたは、ヒルコ・マシュルスに会ったことがありまか?」
「はい、会ったことがあります」
「彼はあなたに対して何をしましたか?」
「私を殺しました」
「…………あの、もう一度言って貰えますか?」
「何度でも言います。彼は、私を殺しました」
「でもあなたは生きています」
「でも、私は殺されたんです。彼に」
To Be Continued
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